第二十五話 VS悪魔③
「遂に上位悪魔たちが王都に襲撃に来たか」
バサラは一瞬にして激しく破壊される王都を見ながら言う。
「うぇー、どこもヤバそうじゃねぇか」
リヴは舌を出しながら気だるそうにしていた。
「ったくよぉ、こんなんじゃあ戦いが終わったら王都無くなってんじゃねぇのかぁ?」
既に周囲に散乱している死体を見ながらリヴは他人事のような感想を抱く。
「お、お兄ちゃん。これからどうするの?」
「一先ずレヴィさんとの合流を目的にする。あの人の近くは世界で一番安全な場所だ」
「っしゃぁ! レヴィさんに会える!!」
それを聞いたリヴはガッツポーズを取った。
――やはり疑問だな。本来であれば悪魔の襲撃に際し、最も留意すべきことは【アンデッド】であるリヴを奪われないようにすることだ。
だが、レヴィさんはそれをせず、コイツを強くし悪魔と戦わせようとしている。最初からレヴィさんやその他のSランク冒険者の護衛下にコイツを置いた方が遥かに懸命な選択だろう。
今もこうして俺たちと行動を共にしているが、ここで強力な悪魔が襲ってくればコイツが奪われる可能性すらある。
バサラはレヴィの真意が分からなかった。
『グォォォォォォォォォォ!!!』
「ん? 何だ今の声」
リヴたちの耳に、激しい雄叫びが聞こえる。その直後、
「ハハハ、いたぞ!!」
突如として現れた悪魔が、下卑た笑い声を上げながらリヴを指差した。するとそれに反応するように十数体の悪魔が一斉にリヴに向かい走る。
「おいおいおいおい!! 大人気だなぁ俺!」
「呑気なこと言ってる場合か!! 仕方ない……」
バサラは構えた。
「お前は先に行け、ユカリ……そのバカを頼んだ」
「う、うん。バ、バサラさんこっちです!」
「お、おう! っと、おいバサラ!!」
「何だ?」
リヴに背を向けたバサラは言う。
「俺はお前のこと気に食わねぇけどよぉ。死ぬんじゃねぇぞ。目覚めがわりぃからなぁ」
「……」
りヴとユカリはレヴィの元へ向かって走り出した。
「ふん、当然だ。俺は死なない」
奴らは下位悪魔、恐らく上位悪魔の指示で王都内でリヴの捜索を行っていたのだろう。
「逃がすかヨォ!!」
そんな下位悪魔たちは逃げるリヴたちを追跡しようとする。
――しかし、
「お前たちこそ、俺から逃げられると思っているのか?」
「あぁ……? っがほぉ!?」
バサラが放った拳は、下位悪魔の一体の顔面に命中。食らった悪魔は数百メートル先へと吹っ飛ばされた。
鬼人族。その特徴は角が生えていること、そして圧倒的な身体能力を持ち合わせているということだ。
「ちょうどいい。最近ユカリが俺に冷たいんだ。ストレスの捌け口になってもらうぞ」
指をボキボキと鳴らし、バサラは冷徹な目で下位悪魔たちを見据えた。その威圧と凄みに、敵は一瞬にして冷や汗を流す。
「ヒ、怯むんじゃねぇ!! 敵は一人だぞ!! 俺ラ悪魔がやられるワケねぇだろが!!」
「お、オォ!! 当たり前だゼ!!」
「殺殺殺!!」
全く、哀れだな……。
そう思いながら、バサラは一瞬にして悪魔との距離を詰め、その顔面に膝蹴りを入れる。
「ぐぅほ!?」
「ふん!!」
それだけでは終わらない。
近くにいた他の悪魔たちを殴り、蹴り、突き刺した。敵の肉体を破損させ、悲鳴を上げる前に屠り、次の獲物へ。
それを幾度も繰り返す。
ドス、バキ、ボキャ、ぐしゃぐしゃぐしゃ。
圧倒的な暴力、暴虐。返り血を浴びながら、敵が司る力を披露する前に残虐の限りを尽くすバサラ。
傍から見れば、どちらが悪魔なのか分かったものでは無かった。
肉を突き、抉る感触を味わいながら、バサラは昔を思い出す。
十年ほど前、バサラは鬼の里にいた。
それは文字通り鬼人族が暮らす集落であり、年々減少している鬼人族は皆ここで生活していた。バサラとユカリは父と母と共にそこで穏やかに暮らしていた。
そんな時である。
里にSランクの魔物数体が襲来してきた。いくら鬼人族が類稀なる身体能力を有していても、流石にSランクの魔物相手は厳しい。
里は魔物によって蹂躙された。
バサラとユカリは、そこで父と母を失った。
それだけではない、多くの同胞が惨たらしい死体へと変貌を遂げる様を、何度も目撃した。
一体何なんだ、どうなっている。
バサラはユカリを抱えて走りながら、事態が現実では無いと必死に思い込もうとした。
そんな時、彼はあるものを目にする。
それは鬼人族の一人が、冒険者から金銭を受け取っているという光景だった。次いで、ある会話が聞こえて来た。
『情報提供感謝する。これは約束の金だ』
『はは、毎度あり』
『それにしても自分の仲間を売るとはな。心が痛まないのか?』
『あぁ? ねぇよ痛みなんて。こんな古びた慣習にいつまでも浸って勝手に潰れてこうとしてる種族なんて、同族でも御免だぜ。俺はさっさとここから出て、何にも縛られない新たな生活を始めるのさ』
当時のバサラは彼らが何を言っているのか、分からなかった。
だが、体は動いた。
その鬼人族と、Sランクの魔物を里にけしかけた冒険者を殴殺し、初めて人を殺した感触に涙し、叫んだ。
『アァァァァァァァ!!』
するとテイマーを失い、契約が破棄され暴走状態となった魔物がバサラを食おうと突進してきた。
激しい怒りと憎しみを募らせたバサラは、感情の赴くままに肉体を行使し、Sランクの魔物も殺した。
鬼人族の身体能力には個体によって差異があるが、バサラの身体能力は歴代鬼人族の中でもトップクラスだったのだ。
『お、お兄……ちゃん』
プルプルと指を震わせ、自分が行ったことに折り合いも整理もつけられない兄をに対し、妹のユカリは恐る恐る彼を呼ぶことしかできなかった。
『やぁやぁ!』
その時、彼女が現れた。
『誰だ? アンタ』
『私はレヴィ・ディザスト。ねぇねぇ、君達私と一緒に来ない? どうせ行く所無いんでしょ?』
そうして、バサラとユカリはテイマーであるレヴィと契約した。
「懐かしいな……」
思い出を掘り起こしながら、バサラは呟く。彼の下には大量の悪魔の死骸が積まれている。
「バカな……あり得ナイ……! こんなの、ビストロ様になんとお伝えすれば……」
唯一生き残った一体の悪魔、最後方にいた下位悪魔の親玉的存在である彼は、自身を除き同胞が全て殺害されたことが受け入れられず、その場で立ち尽くす。
「安心しろ」
「ッ!?」
目の前に立つバサラに、悪魔は体を硬直させる。
「お伝えする必要は無い。というか、俺がさせない。お前は、今ここで死ぬ」
「……う、ウォォォォォォォォォォォ!!!」
悪魔でありながら敵はそこにいる鬼に対し最大級の警戒心と恐怖心を抱き、錯乱した。
何の技術も感じさせない野蛮な所作でバサラを殺そうとする。
「……」
そんな敵の攻撃が届く前に、バサラは目にも止まらぬ速度で拳を繰り出し、敵を殺した。
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