第二十三話 VS悪魔①
悪魔に利用され、操られていた冒険者が王都内で次々とその本性を見せ始める。王都は東西南北問わず、瞬く間に大混乱に陥った。
――王都西門付近
「おーおー来たねぇ」
『弓使いランキング二位』スルガと、彼の指揮下に入っている冒険者たちは目の前に立つ巨大な悪魔に目を向ける。
「がぁはははははははは!! 相も変わらず人は小さい、小さいなぁ!! だから俺は大きな魔物を作ったというのに、対抗して大きく成長してくれるかと思えば小さいまま!! どこまでいっても小さく収まるなぁ人間は!!」
高らかに、豪快に笑う悪魔。
そんな敵を見ながら、スルガは言う。
「小さいってのは、俺達人間がこれが最適解だと進化の結果辿り着いた結論だからだ。そんなことも分からないようじゃ悪魔もおさとが知れるってモンだなー」
「なぁにぃ……?」
「小さい俺達を馬鹿にするとか……体はデカいけど、器は小さいなーお前」
「……」
瞬間、悪魔の頭の中で何かが切れた音がした。
「……殺ぉす!!」
否、切れたではなくキレたのだ。
一体何を挑発しているんだこの馬鹿は、そう思わずにはいられないのは彼の指揮下に入っている冒険者たち。
実力はDランクからSランクまでおり、職業もバラバラ。間違いなくこの中の半数以上は死ぬだろう。
死ぬ覚悟はしている。だが無闇に死ぬ確率を上げるとはどういう了見か、彼らはそう思っていた。
「死ねヤァ!!」
悪魔は大きく腕を振り上げる。その腕はたちまち巨大化し、辺り一帯を粉砕しそうなほどだった。
巨大化、奴は肉体の大きさを変化させられるのか。恐らく、対象は自分にだけだろう。もし他の人間の大きさを自在に操れるなら最初からやってるはずだ。
敵は大きさを司る悪魔。対するスルガの手は、
「お前らー!!」
スルガの声を皮切りに、周辺の建物から無数の弓矢が飛び交い、悪魔の肉体に向かう。放ったのは全てAランク以上の冒険者。弓矢には全て相当の魔力が込められており、かなりの威力を秘めている。スルガは悪魔を挑発することでその怒りを買い、周囲へ矢の警戒を減少させたのだ。
――だが、
「効くかよンなもん!!」
悪魔は自身に放たれた全ての弓矢の大きさを縮小した。だがそれだけではない、弓矢に込められていた魔力もまた、減少する。
なるほど、弓矢や魔力みたいな無生物なら大小変化自在か。
スルガは分析を続ける。
「絶対照準:バニシングアロー」
そして、彼は弓を射た。弓使いのスルガの魔法、それは放った矢が確実に当たるというもの。これはどんな魔力干渉があっても防ぐことができず、これに狙われた者は確実に矢の攻撃を受ける。
「っ……!」
スルガの放った矢は悪魔の腹部に命中する。悪魔は矢を引き抜くと、まじまじと傷口を見る。
「当てるか……だがなぁ!」
悪魔は力む。すると傷口がたちどころに消えていく。
傷口の大きさも変えられるのか。確かに限界まで傷を小さくすれば、ダメージも無くせるな。
「しゃあねぇなぁ……。あんまりこれは使いたくねぇんだけど」
すぐにスルガは次の弓を番え、弦を引き、悪魔を狙う。
「同じ攻撃は食らわねぇよぉ!! 絶対当たるんなら、撃たせなきゃいいだけだぁそうだろ!!」
悪魔は両の手を巨大化させ、手を叩く。それによって生じる激しい爆音と爆風は、辺りを更地にした。
「ははははははは!! これで死んだろうが!! たかが人間が、俺の力に叶うわけねぇだろうが!!」
帯びたたしい土煙が舞う中、悪魔はゲラゲラと笑う。
「あ……?」
勝ちを、相手の全滅を確信した悪魔は次の瞬間間抜けな声を上げた。
「ったくよぉ、バカみてぇに広範囲で威力もヤベェ攻撃しやがって。ふざけてんじゃねぇぞ……」
悪魔の十数メートル先、そこには『重剣士ランキング二位』のバルトルトが、盾を前に出して構えていた。盾から放たれている魔力は巨大な防壁を形成し、後ろにいる全ての冒険者を守っている。
バルトルトの魔法は絶対防御、どんな攻撃であろうと盾であればそれを全て無力化できる。更にその範囲は彼の鍛錬によって直径五十メートルに及ぶ。
「ナイスだバルトルト」
「うるせぇ。さっさと決めろ」
その背後で、スルガは矢を番え弓を引いていた。
「さぁてと、やるぜ」
弓には洗練され、精錬された魔力が纏われる。矢は黒く輝き……彼が射ると、それは一閃を描いた。
さっきと同じで絶対に当たる矢か……! 回避も防御も無意味……だがなぁ、
「さっきのことを忘れたか!! 俺は傷を小さくできる!! てめぇ程度の矢の攻撃なんて意味ねぇんだよぉ!!」
「それはこれを食らってから言えよな」
――ドシュ。
黒い矢は、悪魔の腕に刺さる。
「はは!! 当たったのは腕!! これじゃあそもそも殺せねぇなぁ!」
「いいや、これで十分だ」
笑う悪魔に対し、スルガは短く答えた。そして、
「あぁ……。あ? がハァ…‥うぇあ……ああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!?? 何だ、何だこれはあぁぁぁぁぁぁ!? 矢が、矢が腕に当たっただけにも関わらず、これは何だアァァァァァ!?」
悶絶するような叫び声を上げる悪魔。肉体を蝕むような激しい痛みが続き、次第に強くなっていく。
「バカなぁ、バカなぁ……!! ふざけ、ふざけるなぁ!! 俺は上位悪魔だぞ!! こんなもので、こんなもので負けるワケがぁ!! 何だ……何をしたぁ……!!?」
「絶対照準:呪矢宗寿。食らった相手を絶命させるための矢だ。代償は寿命。ここにいる冒険者の寿命をそれぞれ五年ずつ使って、撃った。条件は寿命を消費する者が半径五十メートル以内にいないといけないこと。後相手の寿命を消費する際、俺の寿命が半分になること」
上位悪魔の強さはランキング一、二位の冒険者複数人分の強さを誇る。しかし、そんな事実はスルガの呪矢宗寿には関係ない。
相手が何であろうと、彼の魔法は悉く強者へと牙を向き、相手を刈り取るのだ。
「あああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……!!」
叫び声は断末魔へと変貌する。矢は体内を破壊し尽くしている。そして全てを破壊した後、絶命した。
「ふぅ……ナイスだ皆」
「死者は、何人だ?」
「さっきの悪魔の両手パッチンでバルトルトの背後にいなかった奴全員だから百人くらい?」
「……割に合わねぇなぁ」
バルトルトはそう吐き捨て、一瞬にして跡地となった光景を、少しだけ虚ろになった目で見渡す。
「多分、今の上位悪魔の中でも相当力だけに物言わせてた阿呆だろ。レヴィの話じゃ、上位悪魔はもう少し狡猾な奴がいるって聞いた。ソイツらがコイツのことを把握してないわけがない。だから多分……これは囮なんじゃないか?」
スルガとバルトルトは目を合わせる。そして彼らは王城がある王都の中心へと目を向けた。
ーーびゅん
「……あ」
すると、その方向から突如として放たれた光の斬撃がスルガの胴体から首を切断した。
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