第二十話 最強テイマーレヴィの戦い
現れた二体の悪魔。
一体は重力を司り、周辺の重力を増減させる事が出来る。
もう一体は血を司り、相手の血を自在に操る事が出来る。
どちらも酷く強力で、凶悪な力を持つ。そんな存在を同時に相手取るなど、至難の業だ。
――しかし、
「な、何故だ!?」
「ど、どうなってる!! 何で……!!」
レヴィには及ばなかった。
彼女の頭上の重力を上げ、圧し潰そうとしても、彼女は全く潰れる様子が無く、それどころか通常の重力の中にいるように悪魔達に向かい歩く。
彼女の中の血液を操作し、血液を逆流させても、血液を鋭い槍のような形状に変形させ肉体を貫かせても、たちどころに回復し何とも無い様子である。
「俺の重力操作が効かないだと!! あり得ん!!」
「お、俺の血液操作もだ!! 何故だ! 何故!!」
「お、お前本気でやってるのか!?」
「当たり前だ!! 最初は力を抜いてたが今は本気の本気で奴を殺すために……!!」
「ねぇ」
「「っ!?」」
二体の悪魔に話し掛けるレヴィ。先ほどと同じ口調と声音だが、今の悪魔達のとってソレが逆に彼らの恐怖心を煽る。
「もう終わり?」
悪魔たちの目の前まで到達したレヴィは、問う。
「「……」」
お、終わりだと……!! な、何を言っているんだこの女……!!
あ、あり得ない!! 何だコイツ、ば、化け物……!!
「じゃ、お終いね!」
ニッコリと笑い、レヴィは悪魔達の腹部を貫く、そして更に腕を振り上げ、腹部から彼らの上半身を真っ二つに斬り裂いた。
「「……」」
何が起こったのか分からない悪魔達、彼らは目をぱちくりとした後、絶命する。
「……」
あまりにも圧倒的、あまりにも絶対的なレヴィの姿に、リヴは顎が外れそうな程口を開く。
え、えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!? レヴィさんバカつえぇじゃねぇか!? いや周りの反応で何となく察してたけどこんなにつぇのかよ!?
つーか攻撃食らってもすぐに回復してたし、レヴィさんも俺と同じで【アンデッド】なんじゃ……。
「リヴー! 終わったよー!」
一仕事終えたような感覚で、レヴィが手を振りながら戻って来た。
「レ、レヴィさん強いっすねぇ……」
「でしょでしょ? やっぱり最強って呼ばれるだけあるよね!」
親指を立て、サムズアップをするレヴィにリヴは乾いた笑いを浮かべることしかできなかった。
「ていうかこれじゃあデート出来ないね」
「え……あ、あぁぁぁぁぁぁぁ!!??」
当然である。
王都に悪魔の襲来、そしてこの惨状。デートなどしている場合も暇も無くなった。
リヴは激しい悔しさの中、頭を抱えるのであった。
◇
下位悪魔の襲撃があった後、その日の内に強力な冒険者たちを集めた会合が開かれた。
冒険者の職業には主に戦士、魔法使い、テイマーの三種類があり、その中で更に細分化される。
戦士であれば剣士、槍主、弓使い、拳闘士、重剣士に、魔法使いであれば付与術師、魔術師、魔導士、僧侶、聖女というように分けられる。
これらには『剣士ランキング〇位』というようにそれぞれランキングがあり、上位の者は皆Sランクパーティーや個人でSランクである。
今回の会合に集められたのはそれぞれのランキングで二位以上の猛者たちだ。
「悪魔の襲撃で死者は二百人越え、商店街は壊滅。これも全部【アンデッド】の存在を悪魔にアピールしたからだ。今回の責任、どう取らせるつもりだよレヴィ」
そう漏らすのは重剣士ランキング二位のバルトルト。素行は荒いが確かな倫理観と正義感を兼ね備えた防御型の戦士だ。
「覚悟の上だよ」
「てめぇの覚悟の話はしてねぇ!! 俺が言ってんのは、てめぇの軽率な行動のせいで死んでった奴らの話だ!!」
「その人たちには本当に申し訳ないと思ってる。悪魔に操られている人間が確実にいるこの王都でリヴの存在をアピールする。これしか悪魔を呼び出す方法が無かった。それに、私一人じゃ多分上位悪魔に勝てない。だから無理やり皆を巻き込んだ」
「悪びれるつもりはねぇみたいだなぁ!!!」
ダン、と机を強く打ち付けてバルトルトはレヴィに掴み掛かろうとする。
「やめろバルトルト」
「離せやマルス!!」
自分を制止するマルスを、バルトルトは睨み付けた。
「起きてしまったことは、仕方が無い。などというつもりはない。レヴィのしたことがあまりにも強引で、人道に反していることは言うまでもない。だが、この王都に……いや、この世界に宣い、人に憑依し、常に一般人に危害が及ぶ可能性のある状況を放置し続けていた俺達の行動が正しかったとも言えない」
「だからってなぁ!!」
「レヴィの責任追及は後回しだ。今は、この事態の収束……ひいてはこの世界から悪魔を掃討することに目を向けてくれないか」
「……っ!!」
真剣な瞳を向けるマルスに対し、ギリギリと歯を食いしばるバルトルト。やがて彼は「くそがぁ!!」と言って椅子に座り直す。
「レヴィ。今回の件、いずれ責任を取ってもらうぞ」
「言われなくても、そうするつもりだよ」
マルスの言葉に対し、レヴィはそう返した。
「……話を戻すぞ。レヴィの話では今回の襲撃を行ったのは下位悪魔。本当の敵はこれからくる。俺達がこれからしなければならないのはまず、王都に防衛体制を引くことだ。今王都にいないランキング上位の冒険者やパーティーはどうなってる?」
「『剣士ランキング一位』のソードは隣国に招集かかってしばらく帰ってこれません。『槍手ランキング二位』のワンガがリーダーのパーティー【ミルグラボ】は黒龍討伐のクエストで帰還は一週間後。それ以外なら今日明日で全員王都に呼べます」
ギルドの役員がマルスにそう説明する。
「ねー上位悪魔ってどんくらい強いのー?」
口を開いたのは拳闘士ランキング一位、スぺが机の上に顎を乗せながら言う。
「上位悪魔一体でランキング一位の人最低五、六人かな」
「数はー?」
「十体!」
『……』
スぺの質問に答えるレヴィ、その回答にその場の全員は無言になった。
「……ともかく、これから王都を防衛するためにどこに誰を配置するかを検討する。いいな?」
マルスの言葉により、議題は本筋に戻る。
だが、レヴィの言葉は全員の頭に確かに残っていた。
そしてその中には様々な者がいる。
――悪魔の強さに恐怖する者。
――戦いの血が騒ぐ者。
――如何に生き残るかを考える者。
……そして、
「……」
悪魔を駒の一つとしてしか考えず、目的を果たそうとする者だ。
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