第十二話 リヴVS人狼②
「おいおいマジかよアイツ!! グレイズを倒しちまったぞ!!」
「マジで姿分かんねぇし!! 一体何者だよ!?」
「一試合目からいきなり大番狂わせ……どうなっちまうんだ!?」
観客席からはどよめきが起こる。
「へへ!」
そんな声を背に、リヴはレヴィに向けピースをした。それに対し、レヴィもまたピースで返す。
「ふ、ふざけるな!!」
が、そこで悪態をついたのはグレイズのテイマー、ジョンだった。
「おいグレイズ!! 貴様何をやってる!! この俺に恥をかかせやがって!!」
激しい怒号を上げ、ジョンは未だ倒れているグレイズに蹴りを入れる。
「……何の真似だおい」
だが、それに異を唱えるかのようにリヴはジョンの前に立った。
「俺はよぉ、今日会ったばっかのコイツにひでぇこと言われたし、殺されかけた。それにコイツは野郎だ。だから本当ならどうでもいいんだけどよぉ……」
言いながら、リヴは思い出す。ラクトにテイムされ、酷使されていた頃を。
あの頃、リヴは自分に対する扱いに対して、『こういうもの』なのだと思っていた。そして同時に『幸せ』に感じていた。
だが今は違う。あの頃を『不幸』だったと思うようになり、もう二度とああいう風にはなりたくないと感じるようになった。
だからだろう、自分と似たように扱われているグレイズを見て、リヴは自然と体が動いていた。
「おい貴様!! ナナシとか言ったか? シツケがなっていないんじゃないか!! テイマーである俺にこんな態度を……!!」
ジョンはリヴでは無く、彼を従えているレヴィに言う。
「え、私に言ってるの?」
「っ……!?」
一瞬にしてジョンとの距離を詰めるレヴィ。ジョンはレヴィの仮面越しからでも伝わる無邪気な眼光を目にする。それはジョンの威勢を削ぎ落し、彼を失禁させた。
「ひ、ひぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!」
ジョンは叫び、そしてその場で気絶した。圧倒的な強者の圧倒的な存在感を至近距離で受けられるほど、彼は強くはなかった。
「あれ?」
その時、ある事が起こる。
倒れていたグレイズの首についていた紋章が消えたのだ。テイマー優位の『奴隷契約』はテイマーが契約解除の意思を示さなければ契約が解除されない。
ジョンはレヴィの圧を前に廃人となり、グレイズとの契約を無意識に放棄したのだ。
「おっとおっとぉ。困るぜアンタら。試合が終わってこんな問題事は」
すると先程までテンションの高かった司会が少し慌てた様子で駆け寄ってきた。
「あーごめんごめん。もう解決したから大丈夫!」
「は、はぁ。ならいいけど……おーい、ソイツら連れてってけー!」
司会の男は運営の男たちに声を掛けると、その男たちは迅速な対応でジョンとグレイズを数人掛かりで運んでその場から立ち去った。
何はともあれこうして一回戦第一試合は幕を下ろした。
◇
控室までの通路をリヴとレヴィは歩く。
「ねぇリヴ」
「何すか?」
「さっきみたいな行動、もうしないでね?」
「うぇ……?」
それは珍しく、レヴィからの禁止命令だった。
「リヴはさ。これからの大会……いや、これからもっと色んな人や亜人、魔物と戦うけど、自分と同じような境遇のヒトがいたら、その度に同情するの?」
「……」
そうか、俺ぁアイツに同情したのか。
でもまぁ、確かにレヴィさんの言う通りだな。アイツは運が悪くて、俺は運が良かった。それだけの話だ。ンなもんいちいち気にしてたらキリがねぇ。
――けど、何だ。何か、変な感じだ。
「ちゃんと言うこと守り続けられたら。何でも一つ、言う事聞いてあげる!」
「ちゃんと聞きまーす!!」
リヴの違和感は消し飛んだ。
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