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第十一話 リヴVS狼人①

「さぁ!! いよいよ今年もやってきたぞこの時がぁ!!」

『うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!』


『魔奏遊』が行われる闘技場は最高に白熱していた。


「まずはルールの説明だぁ!! っと言っても毎年ルールは変わってないんだけどなぁ!」


 テンションの高い司会によって進行はつつがなく行われる。


「この『魔奏遊』はトーナメント形式だ! それぞれのテイマーが自慢の魔物や亜人を1対1で戦わせ、勝った方が次の戦いに進める至ってシンプルイズベストなルール!! 観客は魔物と亜人の血湧き肉躍る戦いを楽しんでくれぇい!!」

『うぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!』

「さぁそれじゃあまずは一回戦第一試合!! おぉっといきなり今大会の注目株だ!! テイマー、ジョン・タイル! 使役するのは狼人ライカンスロープのグレイズ! 対するは仮面を装着したテイマー、ナナシとぉ……おっとコイツは魔物なのか、亜人なのか!? こっちは仮面だけじゃなくローブを纏っていて姿が分からないぞぉ!? まぁいいだろう!! 【アンノウン】、リーヴだぁぁぁ!!」


 司会が言うように、ナナシと紹介されたテイマーは顔を覆面で隠しており、そのナナシが使役している対象も姿が分からない。


「さ、頑張ってね。リヴ」


 ナナシ――覆面を付けたレヴィは同じく覆面を付け、更にはローブまで着用しているリヴにそう声を掛けた。

 何故こうなったのか、それは数時間前に遡る。



「じゃあ今日はこれを付けてねリヴ」

「何すかこれ?」

 

 渡された仮面とローヴを見て、リヴは言う。


「結構カッコいいでしょ? 見て見て! 私も同じ仮面付けるんだよー!」


 リヴさんとお揃いかー。メチャクチャ嬉しいなぁおい。


「今日の大会、私もリヴも最初は姿がバレるのはマズいんだよねー。だからこれはその対策。リヴに関しては肉体が再生するのを見られるのもマズい。ローブはそのためね。ちなみに選手の登録名もバレないように私が『ナナシ』でリヴが『リーヴ』にしといたから!」

「うす!! 分っかりました!!」

「魔物の方が姿を隠すのはルールに抵触しないんですか?」


 その場にいたバサラはレヴィにそう問い掛けた。


「出場前に運営からチェックが入るからね。それを通過しさえすれば、試合中は姿を隠してても問題無いよ」

「なるほど」


 バサラは納得する。

 

「っしゃあ!! 特訓の成果を見せてやるぜ!!」

「そ、その意気です。頑張ってくださいリヴさん……!!」

「おぉ!! お前にも色々手伝ってもらったし、感謝してるぜ! あんがとな!」

「そ、そんな……私なんて……」


 ユカリはどこか照れたように顔を紅潮させた。


「ふん!!」

「ごはぁ……!?」


 すると突然バサラから飛び蹴りを食らったリヴは壁にめり込んだ。


「てめぇバサラ!! マジでソレ止めろって!?」

「ふん。お前の肉体を貫通させなかっただけ有難いと思え」

「どこまでごーまんなんだてめぇ!?」

「お、お兄ちゃん!! だから私は大丈夫って……!」

「いいや大丈夫じゃない。ユカリ、いくら同じレヴィさんにテイムされた者だからと言ってそこにいる馬鹿に心を許すな」

「あはは! 三人がこの二週間で仲良くなってくれたみたいで良かったよ!」

「ど、どこがっすか……」


 壁にめり込んだままのリヴは思わずレヴィにそうツッコミを入れた。



 とにもかくにも、そのような経緯を経てリヴとレヴィは姿を隠したまま『魔奏遊』に参加することになったのだ。


「おい」

「あぁ?」


 闘技場にリヴに、十メートルほど先にいるグレイズは声を掛けた。


「てめぇ、見た所雑魚だろ? ここは年に一度、強い魔物と亜人が集まる祭典だ。冷やかしに来たんなら死ぬぜ?」

「……ご忠告どうも。けど悪いなぁ。俺にも引けないモンがあんだよ」

「ははは! 威勢だけは一人前だなぁ!!」

 リヴとグレイズは互いに仮面と顔を見合わせる。そして、


「さぁそれでは一回戦第一試合……スタァァァァァァトオォォォウ!!」

 

 開戦の狼煙が上がる。


「行けグレイズ!!」

「っ!!」


 テイマーの声に従うように、狼人のグレイズは一切の迷い無くリヴに向かって走り出した。


「さぁリーヴ。特訓の成果を見せてね!」

「うす!!」


 来たぜ来たぜ来たぜ来たぜこの時がぁ!! レヴィさんにいいとこ見せるチャンス!! ここで良い所見せてレヴィさんを振り向かせてみせる!!

 

 そう意気込み、構えを取るリヴだが、


「ウルゥアァ!!!」

「ぐほぉあ!?」

 

 狼人の鋭利な爪が彼の肉体を抉り、そして吹き飛ばす。


「はははははは!! 俺はよぉ、強い奴に挑むのも好きだが、弱い奴をぼこぼこにするのはもっと好きなんだ。自分の強さを実感できるからなぁ……!」


 そう言ってグレイズは下卑た視線を倒れるリヴへと向ける。だが、


「いってぇなぁ……!!」

「っ!?」


 地面を勢いよく転がるリヴは立ち上がり、態勢を立て直した。


「今の攻撃、間違いなく致命傷だったはず……!? 一体どうなってやがる……!!」


 狼人のグレイズは驚愕に満ちた表情で、何ともない様子で地面に立つリヴを見る。


「おい何をやってるグレイズ!! さっさと殺せぇ!!」

「……っ」


 テイマーであるジョンは不機嫌さを隠すこと無く、グレイスを急かした。

 

 ンなこと俺だって分かってるよ……!!


 ジョンとグレイズの間に交わされているのは『奴隷契約』。儀式でジョンに敗北したグレイズは彼に無理やり服従されている。

 そこに信頼関係は皆無。まさしく『一般的なテイマーと魔物の関係』だ。


 心臓だだ……次は心臓を貫いてやる……!!


 グレイズは確実に殺すために次に狙う部位を選択した。そんな中、リヴもまた攻撃の手を思案している。


 クソ……やっぱコイツも俺よりスピードが速ぇ。


 リヴは特訓の最中バサラとのやり取りを思い出す。


『何回か一方的な蹂躙(手合わせ)して分かったが、お前の力は魔力の無い人間並みの力しかない。攻撃速度も、威力も魔物や亜人に及ばないだろう』

『はぁ!? だったらどうすりゃいいんだよ!!』

『……どうもしない、『ただ攻撃しろ』。お前にはそれができるだろ』


「ウォォォォォォォ!!!」

「っ!!」


 グレイズが再びリヴとの距離を詰めてきた。リヴはソレに対し距離を離そうとはせずに、その場でグレイズを待つ。


「これで終わりだ!!」


 ぐしゃり。


 歪で不快な音を立て、グレイズはリヴの心臓を貫く。

 ――だが、


「へへ、捕まえたぜ……!!」

「なっ……!?」


 リヴは自身を貫いた腕を掴み、笑う。


「あ、有り得ねぇ……!? お、お前なんで生きて……!!」

「ごちゃごちゃうるせぇなぁ!! オラァァァァ!!」


 そう言ってリヴは自ら後ろへ下がりグレイズの腕を体から抜く。そして、


 ゴキィ……。


「ガ、アアァァァァァァァァァァ!!!???」


 グレイズの腕に自分の体を巻き付け、関節技を行い、腕の骨を折った。


『お前は死なない。どれだけ攻撃されても回復する。だから相手がお前を攻撃しても構うな。むしろそれを利用して攻撃に移れ』


 へんっ!! バサラ(アイツ)の言うことはシャクだが、間違いねぇ。せいぜい利用させてもらうぜ。この俺の体をよぉ。


「て、てめぇ……」

「はっ! 関節技ソレは効くみてぇだなぁ!」

「何を……何をやっているグレイズ!! 殺されたいのかぁ!!」


 右腕をプランプランさせるグレイズに対し、ジョンは容赦の無い言葉を浴びせる。


「全く、予想外の事態に陥ってもまともな指示をしないなんて終わってるなー。相手のテイマー」


 ポツリと、レヴィはそう呟いた。


「殺せ、殺せぇ!!」

「ウ、ウオォォォォォォォォ!!」


『奴隷契約』によってテイムされた魔物および亜人はテイマーの言うことに絶対服従である。テイマーが相手を殺せと言えば殺し、自殺しろと言えば自殺する。


 グレイズに選択の余地は無かった。


「ははっ! 動きが単純だぜぇおい!!」


 キーン。


「ウゥ……!?」


 リヴは勢いよくグレイズの股間を蹴り上げる。体の重心が消え去ったような感覚を味わい、グレイズはその場に倒れ伏した。


「一回戦第一試合!! 勝者、【アンノウン】のリーヴ!!!」


 ピクリとも動かないグレイズを戦闘不能と判断した司会は、声高らかにそう宣言した。

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