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選ばれなかった、私たち  作者: おはよう


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91話


暫く、ローズマリー様と共に談笑していると、一人の紳士が静かに近付いてきた。


「あら、お父様」


ローズマリー様がそう呼んだその紳士は、ローズマリー様のお父上、フォンテーヌ伯爵様だった。


「フォンテーヌ伯爵様、ソラリス伯爵家のフィオナでございます」


ドレスの裾を摘み、丁寧に一礼すると、伯爵様は穏やかに微笑んだ。


「フィオナ嬢。ローズと仲良くしてくれているようで、感謝しているよ」


「いえ、こちらこそ。ローズマリー様とご友人になれて、とても嬉しく思っております」



挨拶を終えると、フォンテーヌ伯爵様は娘にそっと目配せをした。


——そろそろ、帰る頃合いなのだろう。


そういえば、随分と時間が経っている。

けれど、アディエルはまだ戻ってきていなかった。


会場内に視線を巡らせるが、その姿は見当たらない。


「ローズマリー様、私……アディエルを探してくるね」


「でも……」


ローズマリー様は、心配そうに眉を下げた。

——きっと、以前のレオリオとの騒動を思い出しているのだろう。


「大丈夫。ローズマリー様は、もうお帰りになる時間でしょう?」


安心させるように微笑むと、ローズマリー様は迷いながらも頷いた。



互いに手を振り、また会う約束を交わしてから、私は人混みの中へと足を踏み出した。


しかし、どこを探してもアディエルの姿は見つからない。


ロベリア王子と一緒かとも思ったが、王子は別の貴族たちに囲まれている。


——会場内にいないのなら。


そう考え、私は静かな廊下へと出た。

辺りを見回しても、やはりアディエルはいない。


黙って帰るとは思えない。

ならば、途中で具合でも悪くなったのだろうか……。


急に不安が胸に押し寄せ、歩調が自然と速くなる。



しばらく進んだ先で、少しだけ扉の開いた部屋が目に入った。


確かここは、休憩用として用意されている部屋だったはず。


近付くと、微かに聞こえる声。


無作法だと思いながらも、私は足を止め、そっと中を覗いた。


そこにいたのは——




アディエルと、セレーナの姿だった。



どうして、という疑問が浮かぶ。


けれど、その場から離れることができない。


中へ入ることも、声を掛けることもできず、ただ視線を向けるだけ。



そのとき、不意にセレーナの手が、アディエルの頬に触れた。


ゆっくりと近付いていく、セレーナの顔。


——そして、一瞬。


セレーナと、目が合う。


次の瞬間、私は弾かれたように踵を返し、来た道を駆け出していた。



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