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83話
レイラに起こされ、アディエルと共に目を開けた。
辺りはすっかり明るく、昼をとうに過ぎているのが分かる。
随分と寝入ってしまったらしく、互いに顔を見合わせて苦笑いを浮かべた。
自室へ戻るアディエルを見送ると、レイラが空気を入れ替えるように窓を開ける。
窓辺に近づき空を見上げれば、昨夜の雨が嘘のように、空は青く晴れ渡っていた。
なんだか、自分の気持ちの変わりようと重なって、思わず一人微笑む。
あれほど重かった心が、今は驚くほど軽やかだ。
春の匂いを運ぶ風を、胸いっぱいに吸い込むと、胸の奥が更に明るくなった気がした。
「お食事を済ませたら、旦那様が執務室に来るように、とのことです」
レイラの言葉に、ぎくりと肩が揺れる。
思わず彼女を見るが、レイラは安心させるように微笑み、静かに頷くだけだった。
――旦那様。
公爵様とは、まだ顔を合わせていない。
アディエルは、私に非はないと言ってくれた。
けれど、公爵様も同じ考えとは限らない。
なにより、私はまだ婚約者であり、公爵家に身を寄せている立場だ。
どんなお叱りも受けよう。
そう心に決め、ぎゅっと手を握りしめる。
けれど、緊張と不安のせいか、その後出された食事にはほとんど手を付けられなかったのだった。




