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選ばれなかった、私たち  作者: おはよう


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67話


最初のダンスが終わった後、ベリオン王国国王夫妻の挨拶や、ラシード王子の演説が続き、舞踏会は盛況のうちに幕を下ろした。


ラシード王子一行は三日間の滞在が予定されており、その間、毎夜舞踏会が開かれるのだという。



「アディエルは、家に戻らないの?」


見送る、と言った彼に、思わずそんな疑問が口をついた。


「うん」


アディエルは、少しだけ残念そうに微笑む。


「サハル王国の一団が帰国するまでは、何かと忙しくなるからね。このまま王宮に泊まることにしたんだ」


「そっか……」


そう呟いたものの、胸の奥に小さな寂しさが残り、思わずアディエルの手を握ってしまう。


私は最終日の舞踏会に参加する予定だが、明日の夜、アディエルはどうするのだろう。


――他の女性をエスコートする彼の姿が脳裏をよぎり、知らず眉を寄せていた。


なかなか動き出さない私に、アディエルはそっと頭を撫でる。


「フィオナ、帰りたくないの?」


「……うん」


子どもみたいだと思いながらも、素直に頷いた。


「じゃあ……一緒に、泊まる?」


歯切れの悪い提案に、勢いよく顔を上げる。


「いいの?」


嬉しさで声が弾んでしまった。

けれど、私とは反対に、アディエルの表情はどこか複雑だった。


その様子を見て、はっとする。

アディエルは仕事で王宮に泊まるのだ。

遊び半分の私がいては、邪魔になるに違いない。


そう気づいた途端、胸がきゅっと縮み、そっと手を離した。


「ごめん。お仕事の邪魔になっちゃうよね」


そう言って踵を返した瞬間、今度はアディエルが私の手を掴んだ。


「違う。違うんだ」


振り返ると、アディエルは迷うように視線を揺らしている。


私が余計なことを言ってしまったのかもしれない。

そう思うと、申し訳ない気持ちになった。


「困らせてごめんね。私、家で待ってるから……」


そう言って彼の手に触れると、アディエルは一度目を閉じ、両手で私の手を包み込んだ。


「一緒に過ごそう」


何かを決意したような真っ直ぐな眼差しに、視線をそらすことができない。


「でも……」


「フィオナが嫌じゃなければ。……僕は、フィオナと一緒に過ごしたい」


嫌なはずがなかった。

彼も同じ気持ちなのだと思うと、思わず頬が緩んでしまう。


「私も……アディエルと一緒にいたい」


そう告げると、アディエルは握った手に、そっと力を込めた。


一つ咳払いをしてから、指を絡めてくる。


「……行こうか」


いつもより低く響く声に、心臓が跳ねる。


ただ一緒に過ごせることが嬉しいだけのはずなのに、胸の奥から不思議な緊張が湧き上がってきた。


それでも、彼の手を離すことはできなくて。


私はアディエルに導かれるまま、二人並んで王宮の廊下を歩いていくのだった。



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