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選ばれなかった、私たち  作者: おはよう


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56話



「それじゃあ、今日はこれで終わりにしましょうか」


公爵夫人はにこやかに微笑み、読んでいた本を閉じた。


朝食の後、私は夫人から公爵夫人としての手ほどきを受けていた。

公爵家ともなれば、関わる人の数は桁違いで、覚えるべきことは山のようにある。


特に、これまで社交界から逃げるように生きてきた私には、他の貴族夫人や令嬢たちの情報が圧倒的に不足していた。


だからこそ、長年社交界を取り仕切ってきた夫人の話は、どれもが貴重で、ありがたいものだった。


「本当に、社交界って面倒くさいでしょう?」


心底嫌そうな顔でそう言われ、思わず正直に頷いてしまう。


「……はい」


その返事が可笑しかったのか、夫人と顔を見合わせ、二人でくすくすと笑い合った。



お茶でもしましょうか、と話していると、控えめに扉がノックされる。


夫人が声をかけると、顔を覗かせたのはデンゼルだった。


「おや、もう終わられましたか」


「ええ。フィオナさんは優秀ですから」


そう褒められると照れくさいが、素直に嬉しくなる。


「ふむ……それでしたら、フィオナ様にひとつお使いをお願いしてもよろしいですかな?」


その言葉に、夫人がすぐさま反応した。


「あら。今からフィオナさんとお茶をしようと思っていたのに」


頬を膨らませる夫人に、デンゼルはちらりと意味深な視線を送る。


「実は若旦那様がお忘れ物をされましてな。……私は少々、手が離せない用事がありまして」


そう告げた途端、夫人の表情が一変する。


「あらあらあら!それは大変!フィオナさん、行ってきてあげて!」


どこか楽しそうな二人の笑顔に、何か企みの気配を感じるのは気のせいだろうか。


「若旦那様は昼食も取られていないと伺っております。差し入れもご一緒にお願いできると助かりますな」


「まあまあまあ!それなら昼食時に合わせて行ってあげないと!」


返事をする間も与えない二人の勢いに押され、私は半ば追い出される形で部屋を後にすることになった。


けれど、アディエルが困っているのなら、手助けしたい。


そう思い直し、いつの間にか手に持たされていた封筒を胸に抱き、まずは厨房へ向かったのたわった。



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