表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
選ばれなかった、私たち  作者: おはよう


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
43/137

40話


朝、マーシャの声で目を覚ました。


カーテンの隙間から差し込む朝日が眩しく、思わず目を細める。

そんな私の様子に、マーシャが心配そうに声を掛けてくる。


「あらあら、寝不足ですか?」


「少し寝付けなくて。でも、大丈夫です」


まさか、アディエルのことを考えて眠れなかったとは言えず、笑って誤魔化した。

けれどマーシャは「ふふふ」と意味ありげに笑っている。

……もしかしたら、顔に出てしまっているのかもしれない。


急に恥ずかしくなり、いつもより素早く身支度を整える。

面白そうに見守るマーシャの視線が少し痛いが、気づかないふりをした。


そんな慌ただしい支度が終わると、扉をノックする音が響く。


返事をすると、入ってきたのはアディエルだった。


「フィオナ、おはよう」


「おはよう、アディエル」


こうして朝の挨拶を交わすだけで、どこかくすぐったい。


「フィオナにも専属のメイドが必要だと思ってね。新しく雇ったんだ」


「え?」


思わず声が出る。

もしかしてマーシャに無理をさせていたのでは、と慌てて彼女を見るが、マーシャは穏やかに微笑み、首を振ってくれた。


それでも、私が公爵家に留まることになり、急遽手配させてしまったのではと思うと、申し訳なさが募る。


「そんな顔しないで」


アディエルは、私の考えを見透かしたように笑った。


「だって……申し訳ないもの」


眉を下げて俯くと、彼はそっと私の頭を撫でる。


「とにかく、新しいメイドを紹介させて」


そう言って、扉の外へ声を掛けた。

その声に応えるように、部屋へ入ってきた人物を見て――私は目を見開いた。


「……レイラ?」


そこに立っていたのは、伯爵家で仕えてくれていたメイド、レイラだった。


「おはようございます、フィオナ様」


その笑顔に、気づけば駆け寄っていた。


「どうして……レイラが、ここに?」


「言っただろう?“任せて”って」


振り向くと、アディエルが楽しそうに笑っている。

まるで悪戯が成功したような表情だった。


「積もる話もあるだろうし、僕たちは失礼するよ」


そう言い残し、アディエルはマーシャと共に部屋を後にした。




信じられない思いでレイラを見つめていると、彼女は静かに一礼する。


「公爵家にて、フィオナ様にお仕えさせていただきます。レイラでございます。……よろしくお願いいたします」


顔を上げた彼女は、とても嬉しそうに微笑んでいた。


「レイラ……どうして?」


問いかけると、レイラは穏やかに説明してくれる。


「小公爵様が伯爵家へ、フィオナ様とのご結婚についてお話に来られた際、公爵家で働かないかと声を掛けてくださったのです」


エルを託された話は聞いていたが、まさかその時に、そんな話までしていたとは思わなかった。


「でも……レイラは、それで良かったの?」


心配になって尋ねると、彼女は優しく微笑む。


「実は、フィオナ様が公爵家へ嫁がれると知った時、どんな仕事でも構わないから、公爵家に雇ってもらおうと思っていたんです」


その言葉に、さらに驚く。

長年伯爵家で積み上げてきたものを、迷いなく手放そうとする彼女の覚悟に、言葉を失った。


「私は、フィオナ様に末永くお仕えすると……そう、心に決めておりましたから」


胸がいっぱいになり、思わずレイラに抱きつく。

彼女も、そっと抱き返してくれた。


伯爵家では、多くのメイドがセレーナに仕えることを望んでいた。

だからレイラも、本当はセレーナ付きになりたかったのだろう――そう思い込んでいた。

けれど、今までの彼女の言動を思い返せば、いつも私の味方でいてくれたことに、ようやく気づく。

……自分自身が、偏った見方をしていたのだと、改めて思い知らされた。


「……受け入れて、いただけますか?」


「当たり前じゃない」


そっと身体を離し、彼女の顔を見る。


「ありがとう、レイラ」


そう伝えると、彼女の目には薄く涙が浮かんでいた。

――そして、それは私も同じだった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ