表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
選ばれなかった、私たち  作者: おはよう


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
29/137

27話


アディエルに支えられながらエントランスホールへ向かうと、そこにはレオリオとセレーナの姿があった。


心配そうな表情のセレーナに、寄り添うように立つレオリオ。

その光景を目にした瞬間、胸を強く掴まれたように苦しくなる。


私に気付いたセレーナが、声を上げて駆け寄ってきた。


「フィオナ!」


そのまま手を取られ、強く握られる。


「突然いなくなって……どれだけ家族が心配したと思ってるの!」


訴えるようなその声に、私は彼女の顔をまともに見ることができなかった。


そこへ、アディエルが一歩前に出る。


「フィオナが怪我をしたから、僕がここへ連れてきたんだ。……伯爵には、すでに連絡を入れているけど?」


その言葉に、セレーナとレオリオが顔を見合わせ、気まずそうに視線を逸らす。


その様子に、彼らは昨夜共に過ごし、二人で伯爵家へ帰ったら私の不在に気付き――事情も聞かずに、ここまで押しかけてきたのだろう。


せっかく逃げてきたのに。

何故、そんな二人と対峙しなくてはいけないのだろう。


アディエルの言葉に、レオリオが苦笑いを浮かべた。


「そうだったんだ。……伯爵も知っているなら、安心だね」


そう言うと、セレーナの背に手を回し、帰ろう、と促す。

その仕草に、レオリオが早くこの場を離れたがっているのが伝わってきて、胸の奥がざわついた。


しかし、セレーナはその手を振りほどき、今度は私の手を引く。


「もう! 本当に心配したんだから。ほら、帰ろう?」


――無理だ。

セレーナとレオリオと、三人で帰るなんて。

どうして、せめて放っておいてくれないのだろう。


「……私は、帰らない」


そう告げると、セレーナは驚いた顔をした。


そんな私たちのやり取りに痺れを切らしたのか、レオリオが私の手を掴み、強く引いた。


「っ……!」


捻った足に激痛が走り、思わず顔を歪める。

けれど、レオリオは気付かない。


「ほら、帰ろう。セレーナの妹だからって、よくしてくれてるアディエルに迷惑だろう?」


――セレーナの妹だから。


その一言が、胸の奥を鋭く抉った。

その言葉が、レオリオの本音だったと気付いて。


私は、“セレーナの妹”だったから彼と一緒に居られたのか。

レオリオがセレーナによく思われたいが為だけに居る存在。


(……吐きそう)


思わず口元を押さえ、視界が暗くなる。

足の痛みすら、もう感じなかった。



――バシッ。


乾いた音が響き、はっと顔を上げる。

アディエルが、乱暴にレオリオの手を叩き落としていた。

そのまま、私を庇うように一歩前へ出る。


「先触れもなく押しかけてくる方が、よほど迷惑だと思うが?」


低く、冷たい声。

いつもと違う雰囲気に驚くが、背を向けた彼の表情は分からなかった。


それでも――その背中は、とても心強い。


「でも……」


セレーナが口を開きかけたが、アディエルはそれを遮るように、そっと私の肩を抱いた。


「滞在は伯爵の許可を得ている。……悪いが、もう帰ってくれないか。フィオナの怪我の手当をしたい」


きっぱりと告げられ、セレーナは納得していないように視線を送るが、渋々頷いた。


レオリオと踵を返す二人が、自然に腕を組む。

見たくないのに、その姿から目が離せなかった。


――と、突然、視界が暗くなる。


「え?」


驚いて声を上げると、アディエルの手が、私の視界を覆っていることに気付いた。


「嫌なものは、見なくていい」


優しい声。

すぐ近くに感じる体温と、ふわりと香る彼の匂い。

まるで抱きしめられているような体勢に、恥ずかしさよりも安堵が勝った。


この腕の中にいれば、私を傷つけるすべてから守られる気がして――


私は、そっと目を閉じる。

もう少し、このままでいたい。


力を抜いて身を預けると、アディエルが一瞬驚いたように震えたあと、優しく抱きしめてくれた。



痛みも、悲しみも。

すべてを包み込むように。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ