幕間
大広間へ辿り着くと、すでに人の数はかなり減っていた。
手元の時計を確認すれば、フィオナと離れてからだいぶ時間が経っている。
予想外に多くの時間をセレーナに奪われていたことに気づき、思わず眉を寄せた。
フィオナと別れた場所へ視線を走らせるが、そこに彼女の姿はない。
焦りに駆られ、歩く足取りが次第に速くなる。
会場の隅から隅まで探し回るが、フィオナの姿はどこにも見当たらなかった。
脳裏に蘇る、レオリオに抱き締められていたフィオナの姿。
気づかぬうちに、手を強く握り締めていた。
先日、謝罪に訪れたブレイシア侯爵は、レオリオの行いを咎め、しばらく謹慎させると言っていたが――
あの日の彼の様子を思い返せば、勝手に抜け出してきてもおかしくはない。
そんな不安を抱えたままテラスの扉を開くが、そこにもフィオナの姿はなかった。
背中を、冷たいものが伝う。
もしかして、誰かに攫われたのか。
それとも、どこかで怪我でもしたのか。
考えるより先に、気づけば走り出していた。
フィオナと離れるべきではなかった。
フォンテーヌ伯爵令嬢と一緒だからと、勝手に安心してしまった。
なにより――
今日のフィオナの様子に、自分を受け入れてくれているように感じて、浮かれていた。
つい昨日まで、彼女の気持ちが分からず、慎重になっていたというのに。
自分の浅はかさに、怒りが込み上げる。
フィオナの姿を求めて王宮内を走り回っていると、ふいに、ある場所が脳裏に浮かんだ。
以前、フィオナがひとりぼっちで泣き崩れていた、王宮の庭の片隅。
あの日の光景を思い出し、胸の奥が切なさに締め付けられる。
――なぜか、そこにいる気がした。
踵を返し、再び走り出す。
どうか、フィオナがいますように。
どうか、フィオナが泣いていませんように。
そう祈りながら庭先へ出る。
ドクドクと、早鐘のように打つ心臓の音が、耳の奥で響いていた。
走る足を止め、ゆっくりと歩き出す。
だが、いっそう暗く感じる庭の片隅に、フィオナの姿はなかった。
「フィオナ……」
名を呟いた途端、力が一気に抜ける。
こんな場所で呆然と立ち尽くしている場合ではないというのに。
それでも――
理由の分からない、猛烈な喪失感が胸を占め、身体を動かすことができなかった。




