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座敷童のいち子  作者: 有知春秋
【東北編•平泉に流れふ涙】
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24/105

序章 東北の座敷童

 

 場所は岩手県平泉、中尊寺。天候は曇り。

 標高一三○メートル、東西に長い丘陵に本堂•金色堂•讃衡蔵など有する関山。そこに、月見坂と呼ばれる参道がある。

 けして手入れが行き届いてるとは言えない坂道の両脇には、樹齢三○○年を数える老杉が幾本もある。

 参拝者に視覚から試練を与える坂道、しかし、老杉の間を通る風は嗅覚と聴覚から癒しを与える。

 そんな中尊寺月見坂を登って行く二つの影。

 後ろ姿で表情の確認は出来ないが、後ろ姿でもわかるのは性別。二人とも女だ。

 左側を歩く少女は、身長一三○センチの小柄な体型にレースとフリルで仕上がった黒ドレス、セミロングの黒髪を綺麗に切り揃え、服装に合わせた傘を持つ風貌はゴシックロリータと言った方がわかりやすいと思う。

「んだばぁ、松田はよぐやってらよぉ——————」

 黒ドレスの少女は南部訛りが濃く、続けて喋ってはいるが聞き取れない。

 その南部訛りの少女の右隣には、身長一七○センチのモデルを思わす体型にセーラー服を着た黒髪が腰まであるポニーテールの少女。左手には白一色の和傘。膝上一○センチのスカートから伸びた両足には無駄な贅肉はなく、かといって筋肉質でもないナチュラルな色香がある。

「松田からは跡取りが出向いた事で梅田が改心した。と連絡を受けたが……。東大寺に行った東北の者の話では、座敷童管理省の大臣アーサー•横山•ペンドラコとその参謀井上杏奈なる者の功績が大きいと言っていた」

 硬い口調の少女。色香があり老杉の中にも関わらず高貴な薔薇の香りが漂う。

「いづもどおりでねが?」

「そうだな。お膿救出が念願だった吉法師に東大寺のオロチが蘇る情報を与え、松田に梅田の改心を任せるつもりが……座敷童管理省のアーサー•横山•ペンドラコ、その参謀井上杏奈が解決してしまった」

「んだなっす。そだばよがったべなぁ。安泰だぁ安泰だぁ」

「いや。梅田の跡取りが座敷童管理省に頭が上がらなくなり、梅田が地に落ちた事には変わりない。災害で家を失った座敷童に割り当てるはずの予算が梅田から流れなくなった事を意味する」

「……そらぁダメだべ!」

 南部訛りの少女は足を止め、高身長の少女を見上げる。

「ダメだぁダメだぁダメだぁ、そらぁダメだぁ」

 左右に首を振ったその表情は、気の強い負けず嫌いな少女を思わす。

 膝を曲げ、ゴスロリ少女に視線を合わせたセーラー服の少女は切れ長な目の大和撫子。一つ、大和撫子という言葉に訂正を加えるなら『お淑やか』は似合わない凄腕の剣客を思わせる。

「いや。ダメだと固執するのは良くない。アーサー•横山•ペンドラコ、井上杏奈の二人を竹田として見定め、梅田との約定を現在の座敷童管理省としてどう見ているかを……」

「会いサいぐっ!」

「いや。北海道に行く途中だった龍馬に、座敷童管理省の分署が完成した際、二人に『挨拶』に行くと伝えてある」

「……待でね! 今いぐ!」

「いや。今日がその完成の日だ」


 子供をあやすように語るポニーテールの少女、気が強く無鉄砲なゴスロリ少女、この二人とアーサーと杏奈の二人が出会った時、東北地方と座敷童管理省の縄張り争いが始まる。


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