表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
デスゲームを楽しむために  作者: すずひら
session7 リュシノン王国にて
98/143

098 新装備

GM「ついに新装備のお披露目です」

ミオ「期待していいんだよね?」

GM「古代竜の装備など持っている人はいませんからね。オーダーメイドでは純粋にこの世界で最高水準の装備ですよ」

ミオ「わくわく」

 「来てくれたか、ミオさん」

 「うん。お久しぶりー」


 ケルドさんに装備の依頼をしてから一か月。ついに装備が完成したということで、私たちはケルドさんの工房へと呼ばれていた。


 「装備を渡す前に、まず礼を言わせてくれ。あんたらのおかげでまたこうして槌を握れた。それどころか、竜種の、それも古代竜の素材なんかを扱わせてもらった。これは感謝してもしきれねぇ。本当に、ありがとうな」

 「いえいえ」

 「そしてジェードさん、あんたの協力がなけりゃあ一月じゃとてもここまでのものは仕上がらなかった。飛竜ワイバーンの素材の使い方といい、提案してもらった素材の活かし方といい、随分とためになった。あんたがスライムだってのには驚いたが、な」


 ジェード君はこの一月、かなりの時間をケルドさんと一緒に装備づくりに費やしていたからなぁ。相当仲良くもなったみたいだし。

 なんでも、もともとはジェード君のスキル《錬成》で素材の材質を少し変えて加工しやすくしたりとかの補助的な手伝いをしていたらしいんだけど、途中でスキル《吸収》が《吸収EX》に変化してからは本格的に鍛冶も手伝っていたみたい。

 《吸収EX》はいままで物理的なものしか吸収できなかったのが、概念的なものも吸収できるようになったんだって。鍛冶の経験を吸収していくことで、最終的にはケルドさんのお弟子さんと同じくらいの腕前にはなったらしい。


 「まぁ、前置きはここまでだ。もったいぶらずにさっさと見せよう。こいつが【久遠の閃き】を改造した【久遠の獄炎弓】。素材は全て獄炎竜のものに取り換えてある。耐久性は抜群、ステータスの補正も高く、弓を射ったときに炎の追加効果もある。さらに言えば、ジェードさんの提案してくれた“置換工法”のおかげで、元の“飛行大特効”の効果も残ったままだ」

 「おー」


 わたしは見た目はあまり変わっていない弓を受け取る。形状は和弓に似てて、大きさはそれほどだけど、わたしが持つとかなり大きく見える。注視すると、弓のステータス画面が現れる。


 【久遠の獄炎弓】:神話級  補正:STR+500、獄炎竜の加護

 勇者ニヌルが用いた【久遠の閃き】をベースに獄炎竜ファスザールの各種素材を用いて作成された神弓。使用時には炎を纏い、装備者に獄炎竜の加護を与える。耐久性は抜群で矢を用いず弓で殴っても実用的な逸品。


 “閃き”は使い込んでレベル100になってもSTR補正が150だったのに、この弓は素で500ある。すごい。というか、使用時に炎を纏うって、手が熱かったりしないのかな。


 「置換工法ってのは何?」

 「ああ、ジェードさんの考え付いた画期的な技術だよ。普通装備品は一から十まで職人が作るか、ダンジョンからのドロップ品か、ってもんだ。ピンキリではあるがダンジョンからのドロップ品の中には俺には手のだせねぇレアリティのもんがある。ミオさんの【久遠の閃き】は古代級。鍛冶の神を信じるドワーフとしちゃ悔しい限りだが、そのクラスになれば俺には修理する程度しか手が出せん。改造なんてしちゃダメにしちまう」

 「そうなんだ」

 「ああ。だがこの置換工法は、その細かい修理を何度も何度も重ねることで、元の装備と新しい装備をそっくり入れ替えちまうのさ。これなら修理しか手が出せない俺にでも実質的な改造が可能だ。その結果がその弓だぜ」

 「えーと、よくわかんないや」

 「すまんな。俺は学はないもんでな。分かりやすい説明なんぞこれ以上は無理だ」

 「マスター、俺がもとにしたのはマスターの記憶にあった“テセウスの船”の逸話です」

 「……ああ、なるほど」

 「うむ? どういうことであるか?」


 向こうにいる時に何かで読んだことがある。思考実験の一種だったかな。


 「えーとね、オニキス。こんな話。テセウスさんの船があったんだけど故障しました。壊れた部分を新しい材料で直すよね」

 「うむ」

 「そのとき、テセウスさんの船は修理されたけどまだテセウスさんの船だよね」

 「当然であろう」

 「そんな修理を何度も繰り返して、最後には船全体が新しい材料に変わってしまいました。さて、このときテセウスさんの船はまだテセウスさんの船と言えるでしょうか、っていう問題」

 「ふむ……ふむ?」

 「ああ、深く考えない方がいいよ。こんがらがるから」


 すでに隣でハウ君が頭から煙を出している。こういうのは深く考えちゃダメなんだよね。

 けどそっか、そうやって材料を全部換えちゃえば技量的には修理しかできないケルドさんも、実質的にすべて手直しできるってことか。システム的に考えれば、要求値の低いダイスロールを繰り返すことで実際には不可能なことを為せるのかな。ジェード君が矢になるのと同じ、システムの穴をついた裏技だね。これは確かにこの世界の人たちじゃ考え付かないだろうなあ。


 「まぁそんなわけで預かっていた装備のほとんどは改良を加えておいた。こいつらだ」


 首飾り:【久遠の獄炎玉】  補正:LUC+50、完全炎耐性

 【久遠の嘆き】をベースに獄炎竜ファスザールの目玉をあしらった首飾り。目玉は水晶化しており、美術的価値も高い。装備者は炎に耐性を得、熱に強くなると言われる。


 腕輪:【久遠の獄炎爪】  補正:DEX+150、竜爪化

 【久遠の響き】をベースに獄炎竜ファスザールの爪を腕輪化したもの。そのままでも硬く防御に適するが、魔力を込めれば竜爪として巨大化し攻撃にも使えるだろう。竜爪の大きさは込める魔力による。


 指輪:【久遠の獄炎石】  補正:全能力+10、獄炎竜化

 【久遠の導き】をベースに獄炎竜ファスザールの竜石をあしらった指輪。竜石にこめた魔力を解放すれば一時的に自身が獄炎竜となることができる。発動には多大な魔力を要し、副作用もあるがその効果は絶大。


 靴:【久遠の獄炎靴】  補正:AGI+300、炎熱操作

 【久遠の嘶き】をベースに獄炎竜ファスザールの骨と皮を用いて作られた靴。見た目は厳ついが履き心地は快適。魔力を消費して瞬間的に爆発力を得ることができる。


 うーん……。能力はともかく結構見た目は厳しいものがあるというか……。どこの大魔王だよって感じ……。


 「これは素晴らしいものであるな。ケルド殿、よくやってくれた」

 「凄いですよ、カッコいいです! きっとご主人様に似合います!」

 「だろう。腕輪と靴のデザインは俺も手伝ったんだ」

 「俺としてはもう少し指輪のデザインを尖らせたかったんだがな。まぁデザインは専門外なんでこんなもんだ」

 「いやいや、十分素晴らしいものであるよ。ファスザールはいけ好かない奴ではあったが、装備になってしまうと可愛いものであるな」

 「わわ、この弓手に持っただけで火が出ましたよ!」

 「ほぼ全部の装備は魔法装備化したからな。結構大変なんだぜ?」

 「ワイバーンの素材を触媒にしてるんだ。亜竜のモノはよくなじむと思ってな」

 「ああ、あの方法は画期的だった。魔道具専門のシンディにも教えてやりたいぜ」


 なんかすごい盛り上がってる……。わ、わたしの感性が変なのかな。うん、多分きっとそうだよね。現実むこうでも全然オシャレとかファッションとか分からなかったし。


 「うん、ありがとうケルドさん。大事に使うよ」

というわけで新装備でした。そしてまた時間が飛びましたね。あとがきの最後に作中の時間経過を簡略にまとめたものを張っておきます。


装備の見た目は獄炎竜の素材を使ってるだけあって結構禍々しい感じです。男共の中二心的なものをくすぐるんでしょうね。それを装備することになるミオさんは一体どうなることやら。


これにてsession7 リュシノン王国にて 終了です。session8はまた旅に出ましょう。


以下、作中時間の経過表。参考までに。


WC世界の月日

30日×12か月+5日

1  白子の月 ←ミオたちプレイヤーWCへ、宿でごろごろ40日

2  銀丑〃 ←続ごろごろタイム、ジェードと遭遇、ラピッドラビット狩り

3  赤寅 ←オニキスと遭遇、久遠の彼方攻略

4  橙卯 ←オニキスと契約、グリードグリムにミオ囚われる、始まりにして終わりの地攻略

5  黄辰 ←攻略終、リュシノン王国冒険者ギルドへ、一週間でE昇格、ガイナス達との出会い

6  緑巳 ←Eランク冒険者として過ごす、ヒスイは孤児院へ通ったり

7  青午 ←月の中ほどで鍛冶師ケルドと出会う、薬泉院洗脳、ワイバーン討伐など

8  藍未 ←中旬、装備完成、←イマココ

9  紫申

10  茶酉

11  金戌

12  黒亥

余り 灰猫




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ