097 帰宅
GM「そろそろ100話も見えてきましたね」
ミオ「遠いところまで来たね」
GM「なにか企画でもありますか?」
ミオ「うーん」
日が落ちたころ。
わたしとジェード君はワイバーンのケイネスに王都の近くまで乗せてもらって、帰ってきた。王都までこなかったのは、ケイネスたちの姿を見られたら多分王都が厳戒態勢になっちゃうから。魔物が攻め入ってきたと勘違いされたら大変だよね。
宿屋の自室へ入るとオニキスがくつろいでいた。
「やっほー、オニキス」
「む、我が主よ。予定より早いであるな」
「うん。明日帰るって言ってたけど、帰りは優秀なタクシーが手に入ったからね。ワイバーンのケイネスが乗せてくれたの」
「むぅ。我が主を乗せて飛ぶのは我の楽しみの一つであるよ。そうそう他の者に譲りたくはないのである」
「あはは、ごめんごめん」
「しかしなるほど。それでジェードがぐったりしているのであるな」
「んー、まだ高いところ怖いみたい。そういえば、ジェード君て気絶とかしても人型のままだよね」
「うむ。我は半精神生命体であるからして、今はこの人族の姿で存在が固定されておる。よって、我は意識がないときでもこの体なのである。同様に、ジェードも“擬態”によって組織レベルから体を変質させて固定しているのであるよ。スキルによって見せかけだけ変化させているわけではないのである」
「なるほどねー。オニキスは元の体の方がいいとかって思う?」
「確かに元の姿の方が能力に制限はないし、解放感はあるが、我はこの姿の方がよいであるよ」
「そうなの?」
「グリフォンの体では我が主のそばに居続けることは難しいであるからな。姿がどうの、などという問題は我が主のそばにいられることに比べれば些細なことであるよ」
「あはは。嬉しいこと言ってくれるね」
わたしはいまだにうなされているジェード君をベッドに寝かせる。ふう、結構疲れた。ジェード君はそんなに体が大きいわけじゃないけど、わたしの筋力が低すぎるんだよね。今回はさすがに弓を装備してSTRを底上げしておいた。
WC世界の一般人の平均的なステータスは20から30くらい。200もあればオリンピック級らしいから、装備するだけでSTRが150上がる弓矢は結構重宝する。まあ、弓を手に持ったままジェード君も担がなきゃで結構大変ではあったんだけど。
「あれ、ハウ君はまだ戻ってないの?」
「一度戻っては来たのであるがな。メンタルジャックによらない洗脳の練習をするといって出て行ったであるよ。今日の日中も幾度か人助けのついでに練習をしていたそうである」
「ふうん。充実してそうだね。この数日、オニキスはなにしてたの?」
「薬泉院で薬の開発を手伝ったり、今日は孤児院とやらに遊びに行ってみたのである」
「へぇ、孤児院かぁ。こっちの世界にもあるんだね」
「この世界は我が主のいた世界よりも生きることが難しいであるからな。親を早くに亡くし、身寄りもない者というのも相当数いるのであるよ」
「大変だね」
「まぁ、我が今日訪れたところでは、人族よりもむしろ亜人族の子供が多かったのであるがな」
「亜人族っていうと、森人族、獣人族、小人族とかだっけ」
「うむ。リュシノン王国ではあまり権利が認められていない者たちである。自身がハーフであり、親を迫害によってなくした者などが多かったのである」
奴隷とか、亜人差別とか、気にはなるけどどうしようもないこと。
そういうものだと割り切るしかないんだとは思うけど。
人生、楽しいことだけ考えて生きていけたらきっと幸せだよね。
「そういえばオニキス。ワイバーンてどのくらい強い魔物なの?」
「ふむ。そうさな、我の視点ではとるに足らない雑魚ではあるが、我が主の聞きたいことはそういうことではないのであろうな」
「うん。“空を統べる者”から見たらそれはね」
「一般的に言えば、かなり強い魔物ではある。腐っても亜竜種であるからな。体は高い防御力を誇り、牙と爪もなかなかに鋭い」
「ふむふむ」
「風魔法も操れるはずであるし、なにより人族では攻撃を届かせる手段が少ないわけであるからな。我も含め、上空をとれる魔物は手ごわいであるよ。例えば、“黒の旋風”であれば運が良ければ一体くらいは倒せるやもしれぬ、といった程度であろうか。逃げに徹され、奇襲を繰り返されればどうしようもないであろうな」
「なるほどね。それじゃあさ、今日仲良くなったケイネスはちょっと他の個体より大きかったし、強そうだったんだよね。そういうのって強さとかも変わるの?」
「ふむ、群れのボスであろうか。恐らくそ奴は魔素を多く取り込んだのであろうな。もちろん通常よりも強化された個体のはずであるよ」
「魔素?」
「魔素を知らぬか。魔素とは、あらゆるものの中に存在している力の事であるよ。我らは食事によって、食材の魔素を取り込み栄養とし、植物などは大気中や地中からの魔素を取り込み成長するのであるよ」
「元の世界にはなかったかも、魔素。もしかして魔法の元になったりとかもしてる?」
「そうであるな。魔法を発動する時は自身の中の魔素や大気中の魔素を用いるであるよ」
「魔素かぁ。ちょっと調べてみたいかも」
「ふむ。例えば我が主とジェードが行っていた、“ノスフェ渓谷”、あそこもかなり魔素の濃い地であったはずであるな」
「濃いとか薄いとかあるんだ」
「うむ。魔素は太陽の光を避ける傾向にある。であるからして、魔素が濃いところは必然的にダンジョン化するのであるよ。遺跡であったり、森であったり、渓谷であったりと、太陽光を通さない場所にダンジョンが生まれるのである」
「……あー、もしかして日光が嫌いって、“始まりの街”の周辺の魔物が弱いのって魔素が薄いせい……?」
「ふむ、そうであるな。“始まりの東”“日出づる地”と呼ばれるあのあたりは特に魔素が薄いことで有名であるよ」
プレイヤーに合わせて周りの魔物がレベル1ばっかりだったんじゃなくて、レベルが低いところにプレイヤーが落とされただけだったのかー。そういえば確かに森の奥深くのダンジョンにはオニキスがいた“久遠の彼方”もあったし、街の地下には“始まりにして終わりの地”なんてのもあったもんなぁ。
始まりの街、って名前からしてゲームの開始地点に思えるけど、大陸の東端ってだけで特にそんなこともなかったんだね。やっぱこの世界、ゲームの世界じゃないや。ダイスやステータスとかのシステムで、ゲームっぽく見せてるだけの現実……。
「まぁだからなんだって話ではあるけどね」
「うむ?」
「いやいや、なんでもないよ。そうだ、今日一緒に寝ない、オニキス?」
「む、う、うむ。是非にといいたいところではあるが、寝るというのはその、そういう?」
「うん?」
「ああいや、なんでもないである。気にしなくてよいのである。我が主の安眠は我が保証しよう」
「ジェード君のスライム布団もいいんだけど、オニキスの羽毛布団も捨てがたいんだよね。あ、ハウ君のもこもこ感もあれはあれで」
「……楽しそうであるな、我が主」
「えへへ。うん。最近ようやくこの世界を楽しむ余裕が出てきたって言うか、慣れたって言うか。オニキスたちのおかげだよ」
「それはなにより。では、我はサイズを抑えてグリフォンへと戻るであるよ。快適な睡眠を、我が主に」
「うん、ありがとー」
明日は、ケルドさんのところに行かなくちゃ。
おやすみなさい。
ミオ帰宅→ケルド訪問までを書こうと思ってたはずなのに、気づけば帰宅して雑談して終わってた。どうしてこうなった。
次回こそケルドさんのところへ。




