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デスゲームを楽しむために  作者: すずひら
session7 リュシノン王国にて
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095 ハウライトの休日

GM「そろそろあなたの事も忘れられていそうですね」

ミオ「そ、そんなことない……よね?」

 

 王都華街、賭博場からの帰り道。

 伯爵を連れて、ケルドさんの呪病を治してきたところだ。本当は伯爵じゃなくて下っ端の神官で事足りたんだけど、ケルドさんに謝罪するために自分が行くと言い張った。実際は、“使徒様”と行動をともにできることなんてそうないから、だと思うけど。


 ケルドさんは、普通はお目にかかれない人(伯爵は何だかんだでこの国でも十指に入る権力者だそう)に会ってもまったく物怖じしてなかった。周りに控えてた人たちは戦々恐々としてたみたいだけど。種族が違うとやっぱりそういう感じ方も違うのかな。


 呪病が治らなかった件に関しては、呪術師デッガーの事も含めて全て正直に話した。ジェードさんに、今後の事を考えるなら誠実な対応をしておけと言われたし。


 ケルドさんも誰から恨みを買っていたかは心当たりがなかったようで、情報に関しては進展なし。そして、呪病が治ったことで腕が動くようになり、勘を取り戻すと言ってお礼もそこそこに鍛冶場の方へと飛んで行った。あそこまで夢中になれるものから一年も遠ざけられていたわけだから、たまった鬱憤も相当だと思う。まぁ、ご主人様の装備を作るまでには鍛冶の腕を取り戻してほしいところ。


 それで、今日やることも早々に片付いてしまった僕は暇を持て余している。

 伯爵がいれば雑談でもして時間をつぶせたかもしれないけど、彼は既に薬泉院へと帰ってしまった。オニキスさんが開発を手伝ったというポーションを形にしなければならないらしい。


 「どうしようかなぁ」


 少し前ならメンタルジャックの特訓に忙しかった。けど、今はこの数日で使いまくって大分慣れたし、焦ってやることでもない。


 ……そうだ、もっと人の心を知ろうとしてたんだっけ。僕はスキルの多彩さではジェードさんに敵わないし、ステータスではオニキスさんに敵わない。だからせめて得意分野の精神に関しては一番になりたかった。


 お二人はご主人様とともに人の社会に混じって暮らしていたせいか、僕よりも人族の心理に長けているところがある。まずはそこから、追いついて行かないと。


 そんなことを考えながらでも僕の耳は優秀に働いた。くぐもった悲鳴と抑えられた怒号。発生源はこの先の路地だ。

 なんとなくそこへ足を運んでみると、4人の男と、彼らに押さえつけられた少女の姿。


 ふっと、突然僕の心の奥底から嫌な感情が湧き上がってきた。違う。これは僕の感情じゃなくてご主人様の感情だ。最近はご主人様のスキル《魔物の王の悟り》の効果でこうして僕のものではない知識や思考や感情が芽生えることがある。これはこれでご主人様を近くに感じられて嬉しいのだけど、湧いてきた感情が問題だ。ご主人様は昔こういった場面に遭遇したことでもあるのだろうか。とにかく、ご主人様のためならば見過ごすわけにはいかない。

 一応、“そういうプレイ”の可能性もあるので声をかけておく。

 僕だって人間社会について学んでいるのだ。人間という生き物は子供を作るだけなのに実に様々な趣向を凝らす。僕には理解がしがたいけれど。


 「おじさんたち、なにしてるんですか?」


 僕は特段気配を消しているということもなかったのだけど(そういうのはジェードさんの仕事だ)、男たちは随分びっくりしたようだった。周囲に見張りくらい立てればいいのに。


 「なんだ、ガキか。脅かすなよ」

 「ガキはすっこんでろ。見世物じゃねぇぞ」

 「た、たすけっ」

 「てめぇも黙ってろ」


 そう言って男の一人が少女の頬を殴る。血が飛び散る。

 なおも声をあげようとした少女に今度は男が首を絞め始めた。少女の顔色が変わり、口をぱくぱくと開閉させ始める。


 「社会のゴミで決定でしたか。汚物は消毒だー……は悪役の台詞でしたっけ。ご主人様の記憶って結構穴だらけだから断片的なものしかなかったりするんですよね」

 「な、なんだこいつ。ひいっ」

 「うわぁ、やめろ、やめてくれぇ」

 「た、たす、たすっ」

 「くるな、くるなっこっちにくるなっ」


 男たちははたから見てると面白い具合におびえ始める。メンタルジャックによって、状態異常“恐怖”を植え付けたのだ。彼らは今、自分が最も恐れるモノに追い掛け回されている幻覚でも見ているのだろう。


 人の心か……そうだ、こいつらを実験台にして、いろいろな刺激を与えてみよう。スキル《メンタルリード》でその時の感情を詳しく調べていけば人族の心理に近づけるかもしれないな。


 よーし、今日のやることは決まったぞ。

 女の子も咳き込んではいるけど大丈夫みたいだし、さっさと男たちを拉致して帰ろう。


 僕は泡を吹いて気を失った男たちを4人まとめて担ぎ上げ……ようとして、失敗した。

 そういえば、元の2メートルはあるメンタルラットの姿ならいざ知らず、鼠人族の子供のこの姿だと抱えられない。筋力的には男たちを放り投げられる程度にはあるんだけど。

 それによく考えたら昼間の町中で大の男4人を人目につかず運ぶのも無理そうだ。


 ……仕方ない。

 男たちはあとで衛兵の詰所に連絡するとして、この少女に恩でも売っておこう。


 「あ、あの、ありがとうございました……」

 

 少女は呼吸も落ち着いたのかこちらに駆け寄って、お礼を言ってきた。さりげなく、僕の服の袖を掴んでいる。なんというか、ちょろそうな相手だ。

 よく見れば少女の頭上には犬人族の特徴である垂れ耳。なるほど、このせいでターゲットになっていたわけか。

 リュシノン王国じゃ人族以外の地位は低いからなぁ。見た目的にはそのうち僕も襲われそうだ。ま、返り討ちにすると思うけど。


 僕は少女の相手をしながら、明日帰ってくるはずのご主人様に思いを馳せる。

 ああ、ご主人様、早く会いたいです……。


ちょっと余裕できたから、連続で更新できるといいな……。

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