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デスゲームを楽しむために  作者: すずひら
session7 リュシノン王国にて
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092 オニキスとハウライト

GM「話が全然進みませんね」

ミオ「ケルドさん出したときはまさかこんな長丁場になるとは……」

GM「3話くらいでさくっと終わらせる予定でしたもんね」

ミオ「裏で振ったダイスのせいで設定が増えに増えたせいだよね……」

 「使徒様、ただ今戻りました。混乱はありませんし、緘口令もしきました。皆、使徒様にお会いできたことを光栄に思っていました」

 「あ、お疲れ様です。それじゃあちょっとこっちにきて座ってください。聞きたいことがありますから」

 「は、いえ。私は立ったままで……」

 「……僕らへの尊敬心があるのはいいんですけど、落ち着かないので、座ってください」

 「は、仰せのままに」


 オニキスとハウライトが談笑して待つこと十数分。薬泉院の奥にある実験室へと伯爵が戻ってきた。

 演技が苦手なのかハウライトは普段の口調のままである。しかし、伯爵にそれを不審がる様子はない。むしろ下手に接せられて恐縮しているようだった。

 

 女神キャルオリアの従える四使徒はそれぞれ東西南北を司る彼女の手足ともいえる存在である。実際に人間の前に姿を現すことも多々あり、逸話には事欠かない。その逸話のほとんどが人の味方に立ち様々な善行を行うものであることも相まって、使徒自体も信仰の対象になっているのだ。そんな使徒が目の前にいるのだから、伯爵のこの態度も頷けるというものだろう。もっとも現実にはオニキスとハウライトのことを使徒だと錯覚しているだけなのだが。


 ハウライトはメンタルジャックで女神キャルオリアの認識をミオへと置き換える際、周辺知識も埋め込んでいる。だから伯爵含め薬泉院の職員はオニキスやハウライトの名前を使徒のものとして認識しているわけである。むろん様々な齟齬が出ることは考えられるが、そこは好意的に曲解してくれるだろうとハウライトは踏んでいた。神学者でもない限り、自らの神に疑いを持つことはないだろう、と。

 この安易な考えが何をひき起こすかは、さておき。


  ※ ※ ※


 「……なるほど。それじゃあ伯爵は知らなかったわけだ」

 「は、はい。そもそも私はあまり表に出ませんので」

 「ふうん」


 伯爵は嘘はついていない。僕のメンタルラットとしての特性で相手が嘘をついているかどうかはわかる。


 話を整理すれば、ケルドさんに呪病を与えた人物は薬泉院に勤めている神官何人かを買収しているのみで、薬泉院全体が汚濁に染まっていたわけではなかった。その悪徳神官がケルドさんの対応をすればまぁ、こうなるんだろう。


 僕らの目の前にはその取引に関わったらしい悪徳神官が3人、縛られて転がっている。伯爵が僕の話を聞くなり手配して、すぐさま見つけ出したのだ。このジーラ伯爵と言う人物はそれなりに優秀なのかもしれなった。

 なお、ここにいる3人以外で関わっていたと思われる者たちの元へもすでに手の者を差し向けているとのこと。伯爵家は私兵を持つことを許されているから、それを使ったのだろう。


 僕はあまり人族は好きじゃないけど、それにしたって見ていて可哀想になるくらい悪徳神官たちは怯えている。……神への信仰を日々の糧として生きている神官にとって、神の使徒ごしゅじんさまのげぼくである僕たちが直接に訪れて罰を与えるっていうシチュエーションは最悪なものなのかも。

 

 「使徒様。彼らの不徳を御せなかったのは私の責任にございます。処罰はいかようにも。ですから、どうか、どうか!」


 そして、怯えてるのは伯爵も同じだった。まぁ、神の怒りを買ったと思ってればこんな反応になるのかな。別に「殺せ」とかそんなことを言う気もないし、ここまで怯えられるとちょっと嫌になる。


 「最初に言いましたけど、別に処罰する気はないです。伯爵がしたいというなら止めもしませんが。組織としてのけじめは必要でしょうしね」

 「はっ」

 「あとこれは僕の勝手な感想ですけど、伯爵自身が気に病むことはないんじゃないですか。これだけ大きな組織ですし、数人が悪さしたところで気が付きはしないでしょう。それこそメンタルラットでもない限り」

 

 霧の大森林で手下の魔物100体ちょっとを率いていたこともある。あのときはほとんど洗脳の操り人形状態だったけど、それでも制御には色々と苦労した。それが、意志ある部下なら統率はもっと難しいのだろうということはわかる。そういう点は僕が人間に勝てない部分でもあるのだろうと思う。

 ご主人様なら人間の100や1000、簡単に統率して見せるんだろうけど。


 「それで、ケルドさんに呪術をかけた人は王都の坂街って地区のデッガーって人でいいんですね?」

 「そうです。そいつが俺たちに金を積んで、ケルド翁の治療をしないように持ち掛けてきました」

 「うん、了解」


 質問に答えるぐるぐる巻きの悪徳神官は、真っ青な顔で懺悔でもするように声を絞り出した。

 見たところ、女神への信仰は本物だったのだろう、と思う。魔が差して取引に応じてしまい、それが発覚して今に至り、深い悔恨の念に囚われている。そんな心が読み取れる。

 どうしたものかなぁ。正直なところあまり興味もないのだけど、信仰心をすり替えたとはいえ、今は一応ご主人様を信仰してる人たちだしなんとかしたい気もする……うーん。


 「オニキスさんはどう思います……って、何やってるんですか?」

 

 さっきから全然話に参加しないオニキスさんが何をやっているのかと思えば、研究所の奥の方で何やら色々といじくりまわしていた。大丈夫なのかな、爆発とかしなきゃいいけど……。


 「うむ、いやな。伯爵よ、これは新しいポーションであるか?」

 「は、はい。しかし問題点があっていまだ完成はしておりません」

 「なるほど、液体自体に魔力を込めていた従来式ならばともかく、このポーションは使用者の体内魔力を活性化させるもの。その活性化のための術式を施す方法が問題なのであるな」

 「そ、その通りです。さすが使徒様、よくお分かりで」

 「ふむ、この試薬品にも一度は術式が付与された痕跡がある。しかし、定着には至らなかったようであるな」

 「はい、ポーションは作成後すぐに使うものではないので術式の定着は必須なのですが……」

 「ふむ、いやなに、わざわざ難しいことに挑戦しておるなぁと思って見ていたまでよ。発想の転換、コロンブスの卵というのだったか。そんなことをせずとも、容器の方に液体の術式を定着させるための術式を刻めばよいではないか。液体に定着させるよりはよほど楽だろうて」

 「そ、そんな方法が!」


 な、なんで……オニキスさんが知的な会話をしている……。頭が弱いヒト(グリフォン)じゃなかったの!? いやそりゃあ見た目は学者先生みたいだけど、え、え?


 「ああ、それとそこの縛られている3人」 


 その言葉に呆然と事態の推移を眺めていた3人が我に返る。神への不逞を働いた自分たちへの厳しい叱責を覚悟し、身を縮こませる。


 「我もまぁ、一応は神官を名乗っている身であるからな。神官らしくありがたい言葉でも贈ってやろう」


 そして、大きく息を吸ったオニキスさんは研究所が震えるような大声でこう言った。


 「甘えるな! 自らが行ったことの責任は取れ。仮にも悪事に手を染めるならば心まで悪人になれ。決して後で後悔するような行いをするではない。貴様らも神官の端くれであるならば、常に神が見ていると思って行動せよ」

 「使徒様……」

 「ふん、まぁ、我が(かみ)は貴様らの事など見てはおらぬがな。誰が汚い生き方をする人間をわざわざ見ようとするか。――しかし、貴様らは常に神を見ることができる。神体であろうと脳裏に浮かべる姿であってもである。そして常に神をそばに感じることができるであろうよ。我が神は実在するが、貴様らの心の中にも存在する」

 「「使徒様……」」

 「迷ったときは、困った時は、己の中の神に問え。さすれば自ずと答えは見える。貴様らが真に我が神を信仰しているのであれば、な」

 「「「使徒様……」」」

 「我が神は寛容である。過ちを犯した者も悔い改めればすべて赦すであろう。しかし、それは一度までである。2度目は我が神が赦しても、我が許さぬ。過去を反省しない2度目は我が神への紛うことなき侮辱である。然らば、我が神に恥じぬ生き方をせよ!」

 「「「「使徒様……!」」」」


 え、なんか悪徳神官3人だけじゃなくて、伯爵も号泣してるんですけど……。それに、この部屋の外にいただろう神官たちからも嗚咽の音が聞こえてくるんですけど……。なんか論理展開もめちゃくちゃだし、結局何を言いたいのかよくわからなかったんですけど……。それでなんでこんな……。

 なんですか、これ。おいしいところを全部持っていかれたような……。


 「(ふむ、ハウよ。お主は少し考え過ぎである。勢いに任せてそれっぽいことを言うだけでこれほど簡単に人の心は掌握できるものであるよ。それに今の我らは“使徒様”であるからな。擬似的な神の言葉ならばこやつらは何を言われても感動するであろう?)」


 うわぁ、ゲスい……。

 それにしても、僕も、まだまだだなぁ……。他人の心を操ることに関しては確実にジェードさんもオニキスさんも超えてると思っていたのに。

 まだまだ二人には敵いそうにないや……。

 もうちょっと、人間について知らなきゃなぁ……。


オニキスは頭が弱いかもですが、馬鹿なわけではないです。この世界にINTのステはありませんが、あったらきっと高いでしょう。オニキスは“勉強できないけど頭はいい”、の反対を行っていますね。勉強はできるけど、頭は弱い。

紋章学でグリフォンの図柄は知識の象徴とされているくらいですし。

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