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デスゲームを楽しむために  作者: すずひら
session7 リュシノン王国にて
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087 鍛冶師ケルド

GM「あなたは部屋に出た巨大な蜘蛛に生理的な恐怖を感じました」

ミオ「はいはい、1d10のSANチェックしますよ……」

GM「それにしてもこんなに大きな蜘蛛、どこから入ってきたんでしょうか」

ミオ「足広げたら拳大くらいあったもんなぁ」

 

 ドン、と目の前の大男は机に手を置いてこちらを睨みつけてきました。

 ううう……、この人絶対僕よりレベル高いです。威圧感がすごいですもん。

 

 「それで、どういうことだ」


 今、僕らはリュシノン王国の華街にある賭博場へとやってきています。

 ここへとやってきたのは、賭け事で遊ぶためではなく、この男の人を探しに来たのでした。名前をケルドというこの方は、この賭博場の元締めでもあります。

 大男、と評しましたが、実のところ背はジェードさんとあまり変わりません。オニキスさんと比べると小さくも見えます。しかし、彼が小人族ドワーフであることを鑑みればそれだけの身長で大男と評するにふさわしいのです。


 彼を探しに来た理由は、彼の『伝説級の鍛冶師』という噂でした。最も、それは単なるうわさではなく事実であるという裏付けはジェードさんが既にとっています。


 武器などのアイテムの等級は通常、特級、唯一級、古代級、伝説級、神話級、幻想級と上がっていきます。彼が伝説級というのは、このうちの『伝説級』の武具を彼が鍛造したという逸話によります。普通は、とても腕のいい職人が会心の出来で作ったものが稀に唯一級を生み出すことがある、といった程度です。伝説級がいかにすごいかわかろうというものです。


 ちなみに、僕のご主人様は幻想級の装備を3つも所持していますが、本来一つだって人の身には余るものです。その性能は神を殺すことさえできると言われる幻想級の装備。そもそも実在を疑うレベルですが、そんなものを当然のように所持しているご主人様はやっぱりすごいです!


 さて、鍛冶師ケルド。実際に彼は王国所属のSランクパーティーのリーダー『ジェームス』という男に伝説級の剣を打っています。その剣の材料は閃竜と呼ばれた成竜。成竜を加工できる腕を持つ職人は限られていて、その中でも素材の性能を十二分に引き出すことができたのはこのケルドさんくらいのものです。彼は実質この国の鍛冶師の中でトップクラスの腕を持つといえるでしょう。

 しかし、その剣を打った直後に病気にかかり、今は鍛冶職を半ば引退して賭博場の元締めに落ち着いているようです。その“病気”というのがまた厄介なんですが。

 とまぁ、全部ジェードさんの受け売りなんですけどね。

 

 「ええ、説明させてください。まずは自己紹介からしましょう。俺の名はジェード。こっちがオニキスとハウライト。そしてこちらが俺たちのマスター、ミオ」

 「ども、よろしく」

 「マスター、ねえ」

 「ええ。命を捧げるに値するマスターですよ。それで、俺たちは先日一匹の竜を討伐しました。俺たちと言ってもほとんどマスター一人で片づけられてしまいましたがね」

 「……」


 うわぁ、疑ってます、ケルドさん。僕は種族特性で他人の心がだいたい読めるんですが、そんな能力がなくともわかるくらい『信じられない』というオーラを出してます。まぁ、僕もいまだにご主人様が単独で古代竜を討伐したことには驚きを隠せませんしね。

 しかしケルドさんは一応話は最後まで聞いてくれるようです。


 「そこで、この竜の素材を使って武器を作っていただきたいのです。調べた中では、竜素材の加工の腕が最も優れているのはあなたです、ケルドさん」

 「なるほどな。話は理解したし、実際に素材が目の前にある以上、今の話の全てが嘘というわけでもないのだろう。しかし、肝心なことを言っていないぞ」


 睨み付けるケルドさんの顔が一層怖くなりました。ううう、この人ほんとに“病人”なんでしょうか。


 「そこまで調べたなら当然知っているだろう。俺はもう鍛冶師じゃない。見ろ、この痩せ細った腕を。こんなざまじゃ槌を振るえやしない」


 丸太のように太い腕に見えるのは気のせいなんでしょうか。小人族の男性はずんぐりむっくりな体型に筋肉質な体、という特徴はありますが、ケルドさんの体はその平均を普通に超えていると思うんですが。全盛の彼はどんな姿だったんでしょう……。


 「それに、なにより、こいつは古代竜の素材じゃねぇか。古代竜なんてのは存在自体が神話みてえなもんだ。俺なんかに加工できるとは思えねぇ。成竜と古代竜にゃあ大人と子供以上の差がある。ありゃあ別のイキモノだ。てめぇらがどうやってこの素材を手に入れたかは知らんが、古代竜の素材を加工したなんて話は古今東西聞いたこともねぇ」

 「ええ、ですから俺は、その伝説の最初の一人にあなたの名を刻んではどうかと持ち掛けているんですよ」

 「……」

 「古代竜の素材の稀少性はあなたも十分に理解している。だからこうして俺たちの話を聞くことにした。ならば当然理解できるでしょう、この素材を加工できるのが鍛冶師としてどれほどの幸運なのか」

 「――ああ、てめぇみたいな若造に言われなくてもわかってらぁ! 竜はこの世界の頂点の一つ、力の象徴だ。そいつを加工するってのは俺たち職人にとってのひとつの到達点だ」

 「それを聞いて安心しましたよ」

 「なに?」

 「いえ、ここまで話を聞いてやる気なしじゃ困るのでね」


 んー、ジェードさんノリノリだなぁ。本来言わなくてもいいことまで言ってるし、交渉が手段って言うより目的になってるような。そしてオニキスさんは飽きたのか寝てますし。……まぁ、ご主人様に撫でてもらうと睡魔の攻撃力が倍増するのはさっきから僕も身をもって体感してるんですけど。すっごく気持ちいいんですよね……。


 

あけましておめでとうございます。


正月はずっと小説読んでた気がする……。

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