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デスゲームを楽しむために  作者: すずひら
session6 白の従者
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083 従者たち

GM「従者たちの話なのであなたは立ち入り禁止です」

ミオ「えー」

GM「ちなみに次回も弟さんの話なのであなたの出番はありません」

ミオ「えー」

 「おい、鼠」

 「は、はい。なんでしょうジェードさん」

 「少し真面目な話だ。マスターには気取られないようについてこい。オニキスも待ってる」

 「……わかりました」


 今はご主人様に拾われてから3日後の夜。ガイナス、ケリー、ビスチェ、キースという4人組の冒険者を王都に送り届けたのが昨日のこと。そのあとご主人様とジェードさん、オニキスさんは宿屋へと引きこもってしまいました。今日は1日中宿でごろごろしていたんだけど、いいのかな。


 ジェードさんはご主人様の最初のしもべで通算レベルが500を超えている規格外のスライムです。普段は人の姿を取っていて、そうと言われなければ僕もスライムとは分かりませんでした。強い魔物が持つ独特の雰囲気のようなものも、ジェードさんはスキル《擬態》によって隠してしまうのです。


 今、話に出たオニキスさんはご主人様の次の僕。《空を統べる者》であるハイグリフォンです。《空を統べる者》と言えば、神話に語られることもある文字通り雲の上の存在です。僕が知っている範囲でも太陽神オージーンの駆る車を曳いていたという逸話があります。そしてまたオニキスさんも人型を取っています。半精神生命体なので姿はかなり自由がきくそうです。能力は一部制限されるそうですが。


 そんなお二方を従えているご主人様は、やはり王の器なのだろうと思い、そんな方に仕えることができて僕はとても幸せ者なのです。


 しかし、ジェードさんとオニキスさんの大事な話とはいったい何なのでしょう。

 ……ハッ、まさか新人いじめのようなことがあるのでしょうか。僕は確かに能力も低いし、お二方の気に障ってしまったのかもしれません。ああ、どうしましょう。


 「落ち着け。取って食いやしないから」

 「は、はいっ」


 な、なんと、メンタルラットの僕が心を読まれてしまいました。

 さすがはジェードさんです!


 「そんなキラキラした目で見るなよ……。お前が顔に出やすいだけだって」

 「え、ええっ」

 

 そうなのでしょうか。自分ではよくわからないのですが……。

 と、すぐに王都のはずれの一軒家に着きました。少し血の臭いも漂う路地裏の奥です。人目にはつかないかもしれません。オニキスさんもそこで待っていました。


 「鼠。お前はマスターについて行くってことでいいんだよな?」

 「は、はい」

 「それは、自分の意志でか? できれば理由を聞かせてくれないか」

 

 ジェードさんが唐突に話を始めました。けれど僕は、その質問の答えを明確に持っていたので少しだけ安心しました。


 「はい。僕は、ご主人様に出会うまで、自分の王国を作りたいと思っていたんです。でもご主人様と出会って、真の王の姿を見た気がして、自分がどんなに小さな存在なのか思い知らされてしまって。だから今は自分が王になろうなどと大それたことは考えていません。その代わりに、ご主人様のこの先を見てみたい、この方について行きたいと心の底から思ったんです」


 僕はさながら就職面接で志望動機を語る学生のように滔々と熱い思いを語りました。

 5分ほど、喋り続けたでしょうか。オニキスさんが片手を上げて僕の言葉を遮りました。


 「わかった、もうよい。汝の想いはよく伝わった」

 「だな。……そのうえで、お前に一つ言っておかなきゃならないことがある、鼠」

 「な、なんでしょうか」


 僕の言葉ではお二人には認めてはもらえなかったのでしょうか。

 う……まぶたの裏が熱くなってきました。


 「泣くな。――いいか、お前は今この時も変化しつつある自分に気が付いているか?」

 「え?」


 変化しつつある自分……。どういうことでしょうか。

 しかし、ジェードさんもオニキスさんもとても真剣な目をしていて、これが冗談の類ではないことはわかります。だから僕は正直に答えました。


 「わ、わからないです」

 「……だろうな。これは自分で気づけるようなものじゃない」

 「我とジェードは、変化の前と後を知っておるから気づけたにすぎぬしな」

 「どういうことでしょう」

 「――簡潔に言うぞ。俺たちは、マスターによって強制的に変化させられている」

 「正確には、“常に影響を受けていて、その変化が我らに如実に表れている”と言った方がいいのかもしれぬな」

 「え、ええと」

 「すぐに理解できないのはしょうがない。分かりやすい例を挙げようか。鼠、お前はマスターに初めて会ったときの自分の口調を思い出せるか?」

 「口調、ですか」


 ご主人様と出会ったときのことは鮮明に思い出せます。あの時僕は無礼にもご主人様に向かって。


 ――な、なんなんだお前は

 ――質問に答えろっ

 ――どうして僕のメンタルジャックが効かないんだ


 あ、れ……?

 僕は、なんでそんな口調で喋っていたんでしょうか。


 「思い出したか。追加だ。そのあと《隷属の調べ》によってマスターに屈服したとき、お前は『ああ、偉大なる魔物の王よ。あなた様の前に跪けることを光栄に思います。そして、数々の非礼をお詫び致します』と言ったんだ」

 

 たし、かに。僕はそう言ってご主人様に跪きました。


 「お前だけじゃない。そのあと周囲の魔物に《隷属の調べ》を使ったときにも魔物達に明確な変化が訪れていた。低級の魔物も多かったが、マスターに隷属したとたんに知性を得ていた。獣系は一斉にマスターに向かって伏せたりな。恐らくは、知性がなきゃマスターの命令に従えないからって理由なんだろうが、マスターの《隷属の調べ》はレベルが上がるごとに対象に及ぼす影響力が強くなってる。名を付けて契約したわけでもない魔物にすら、知性を与えてしまうほどにな」

 「なかには人語を解するまでに成長した個体もいたのである。我らに挨拶して去って行ったよ。あそこでは比較的レベルの高い森林狼だったか、あやつとはいずれまた会うかもしれぬな」

 「……」

 「お前の変化の1段階目が《隷属の調べ》だったなら、2段階目はお前がマスターから名をもらった直後だ。《魂の隷属》、これがとてつもなく大きい」

 「隷属したものは、我が主と魂が通じ合う。もともと我らも経験済みではあったが、ガイナスとやらとの口論ののちは我が主がなにか吹っ切れたのか、我らに対する影響力がはるかに増大しているのである」

 「俺たちは少しずつ、マスターが望む“ジェード”と“オニキス”になりつつある。少しずつなのは、元から俺たちには俺たちの像があったからだ。マスターもそのイメージに引っ張られているのか、変化はそこまで大きくはない」

 「しかし、汝は違う。我らは外から見ていたから分かるが、汝は一瞬で“作り変えられた”。その人を模した姿も、本来ならば汝の取れる姿ではない。ジェードのように変形の可能なスライムでも、我のような半精神生命体でもないのであるからな。にもかかわらず汝は体の組成ごと作り変えられた」

 「変わったのは外見だけじゃない。中身もだ。少し前の自分の考えを思い出してみろ。“自分が知らないはずの知識”を自然に考えていなかったか?」


 ジェードさんとオニキスさんの濁流のような説明に僕は圧倒されながらも、お二人の言葉について考えました。

 僕にはメンタルラットとしての名前がありました。しかし、その僕と今のハウライトとしての僕はジェードさんのおっしゃる通り既に別人なのでしょう。

 知識についてもよく考えてみれば、僕が知らないことを色々と知っているのです。

 就職面接で志望動機を語る学生? そんな言葉はこの世界で生まれた魔物である僕が、使うはずがないのです。

 僕は、一体。


 「状況は理解できたか? すまなかったな、畳みかけるように話して。少しでも危機感を持ってもらいたかったんだ」

 「うむ。そして、状況を理解した上でもう1度問おう。汝は我が主についていくか?」


 ……僕は。


 「ついて、行きます」

 「自身がいつの間にか、何者でもない存在へと変わっていくのかもしれぬのに?」

 「それでも、僕は、ご主人様の――ミオ様の行く先を見たい。それに」

 「それに?」

 「僕は、僕です。ハウライトという名をご主人様に与えられた時から、僕はハウライトなんです。何者でもない存在なんかじゃありません。だいたい、人だって魔物だって、周囲から影響を受けることなく生きていけるわけないじゃないですか。僕はたまたまご主人様に強く感化されたって言うだけです」

 「くはは。言いよるなぁ、小童」

 「あ、す、すいません、生意気言って……」

 「よいよい。なぁ、ジェード。我らの憂慮はいらぬ世話だったようであるな」

 「……ああ。俺たちはお前を認めるよ、“ハウライト”」

 「うむ、よろしくである、ハウライト……我が主に倣ってハウと呼ぶことにするのである」

 「――は、はいっ! こちらこそよろしくお願いしますっ!」


 ああ、なんてやさしい方たちなんでしょうか、この二人は。少しうるっと来てしまいました。


 「そうそう、もう一つ教えておこう。俺たちがマスターから影響を受けやすいように、マスターも俺たちから影響を受けるようになったみたいだぜ」


 ジェードさんはそう言ってにやりと笑いました。悪そうな笑みです。


 「最近じゃ俺が望んでる通り随分と“行動的”になったしな。オニキスは“傲慢”だっけ?」

 「うむ。マスターにはもっとぐいぐいと周囲に気にせず突っ走って欲しいと常々思っているのである。まぁ、その結果がハウ、おぬしの捕獲だったのではあるが」

 「まぁ、何がいいたいかと言えば、俺たちがマスターに望んだ変化は緩やかでも実現されるってことだ。言いかえれば、俺たちがマスターを“調教”できる」

 「おいおい、ジェード、言葉が過ぎるぞ」

 

 そういうオニキスさんもかなりいやらしい顔をしています。

 ……なんでしょう、今のやり取りを見ていただけで二人にすごく親近感がわいたというか、近寄りがたさが消えたというか。

 そんなに二人ともご主人様に影響を与えられることがうれしいんでしょうか。


 ――僕は、ご主人様に望むとしたら何を望むのでしょう。

 やはり、王として立つご主人様が見たいのかな……。


というわけで、かなり危険なにおいのするスキル《隷属の調べ》と、称号すら与えられる状態変化《魂の隷属》についての簡単な説明回でした。ジェード君やオニキスも初めから見直すと随分と性格も変わってきているはずです。

ハウ君に人型を取らせるために悩んだ末の結果とかではないですよ。ええ、決して。


これにてsession6 白の従者 終了です。

次回は弟君の話、に見せかけた姉TUEEEですかね。

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