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デスゲームを楽しむために  作者: すずひら
間章 束の間の王都とミオの後悔
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077 ヒスイの一日

ミオ「PCの更新プログラム許すまじ」

GM「半分くらい書いてたのが消えたんですよね。ご愁傷様です」

ミオ「だいたいあれって何を更新してるのとか、何の意味があるのかとかよくわからない」

GM「まぁまぁPCにあたるのはそこらへんで」


 「こんにちは、ハンナ」

 「あ、ヒスイさん、こんにちはっ。こないだのお菓子どうでした?」

 「ああ、おいしかったよ。また頼めるかい?」

 「はいっ。次に厨房を貸してもらえるのは明日なので……」

 「わかった」


 ジェードの分体、ヒスイは宿屋の娘ハンナにそう声をかけてから宿を出る。このハンナという娘は宿屋で働いている犬人族の奴隷である。ミオに気にかけてといわれていたジェードであったが、実際に交流を持っていたのはヒスイの方だった。

 彼女は奴隷身分ではあるが、宿屋の主人の待遇は良く、週に何度か厨房を貸してもらって趣味のお菓子作りに勤しんでいるのだという。ヒスイは世間話の中でそのことを知り、今では材料を提供しお菓子を作ってもらうまでになっていた。勿論つくられたお菓子の3割は王女ルーアの胃の中へと消えていく。ハンナも自分が作ったお菓子が王女の口に入っていると知ったら卒倒しかねないだろう。


 そして、残りの7割をいまからヒスイは処理しに行くところだった。ヒスイはスライムだからお菓子を食べるのは食事ではなく趣味のようなものだし、なにより味覚もそれほど発達はしていない。そんな自分が食べてしまうにはもったいないと考えたヒスイはもっと有効な利用法を考え付いていた。


 「せっかく作ってくれたのに俺が食べないというのは少しばかり失礼な気もするんだがな」


 そう独りごちてヒスイは足を路地裏へと向ける。

 少しばかり歩いた王都のはずれにその建物はあった。


 「あ、ヒスイ兄だ!」

 「ヒスイ兄ちゃん!」

 「ヒスイさん、いつもありがとうございます」

 「こんにちは、ルイラさん。お前らも抱き付くんじゃない。歩けないだろ」

 

 ヒスイに群がる子供たちと頭を下げる中年の女性。

 ヒスイがやってきたのは孤児院だった。ここへ来るようになって半月は既に経過している。

 この場所の選定には若干、先日の“事件”が関わっていた。ある日突然ヒスイの頭に流れ込んできた他人の記憶。それは、本体であるジェードから流れてきた主人ミオの記憶だった。

 魔物であるヒスイの目から見ても凄惨な人生。その始まりはひとつの孤児院だった。そここそが彼女の悲劇の始まりだった。

 その記憶を見てから、ヒスイは感傷のようなものに突き動かされてこの孤児院へと訪れていた。数日に一度こうしてお菓子を持って来たり、遊び相手になったり。


 「代償行為とでも言うのだっけか。つまるところは俺の自己満足なだけだが……」

 「ん、ヒスイ兄、なんか言ったか?」

 「いいや、なにも。ほら、今日はハンナさんの手作りお菓子を持ってきたぞ」

 「わーい」


 ヒスイからお菓子を受け取り、歓声とともに孤児院の中へと駆けていく少年たち。ヒスイは彼らが、院の中にいる女の子たちや年下の子たちにお菓子をあげるのだと知っている。ここにはミオがいた孤児院のような闇はなく、子供たちは人間として真っ当な成長をしていた。

 その光景に目を細めるヒスイを見て、孤児院の院長である中年の女性、ルイラはくすりと笑みをこぼす。


 「本当に、ヒスイさんは見た目の年に似合わない仕草を見せますね」

 「う、まぁ、自分が精神的に老けてるとは思いますよ」

 「そうですね。ヒスイさんはもっと自分に素直になった方がいいかもしれませんね。――恋でもすれば、変わるのかしら」

 「こ、恋ですか」

 「ええ、恋をすると人は変わるものよ。わたしなんかは全部が実らなくていまもこうして一人だけど」


 ヒスイは、ルイラが聡明な女性であることを認めている。また、同時に人格者で教育者でもある。それはここの子供たちを見ても分かるだろう。その彼女の言葉を無碍にすることはできなかったが、だからといって“恋”というのはヒスイにはいささかハードルが高かった。


 「(そりゃあ魔物だって恋をして番いをつくる種族もいるが、俺はスライムで、単一生殖で殖える種族だからなぁ……)」

 「そうですねぇ。ヒスイさんは大人びていますから、同年代の女の子よりも包容力のある年上の女性なんかどうでしょうか。わたしはいつでもお相手しますよ?」

 「またまた冗談を」

 「ふふ。どうかしらね」 


 そう微笑んで、ルイラは孤児院の中へと入っていく。食べ方が悪い子供たちを注意しに行ったのだろう。


 「……恋、ね」


 ヒスイの脳裏には一人の小柄な女性が浮かびそうになったが、彼は無意識のうちにその姿を掻き消した。その姿を思い浮かべてしまえば何かが壊れてしまいそうな気がしてしまったから。


 「ヒスイ兄ー。こっちこっち、早く―」

 「ああ、今行くよ」


というわけで王都のジェード君もといヒスイでした。

王女様はさらに影が薄く……ヒスイも色々と活動しているので仕方ない……。


しばらく更新に間が空いた気がしてましたが、5日経ってましたか。原因は前書きにもある更新プログラムによるデータ消失→モチベ低下の他に、とあるお城を育成するネトゲにはまったことですね……。


次回はミオさんのあんなシーンが……!?

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