076 冒険者の生活
GM「あなたはとある村で一つの依頼を受けます」
ミオ「まぁ、冒険者になったらそういうことに無関心じゃいられないよね」
GM「竜を一撃で葬ったあなたならその程度の些事は簡単に片づけることができるでしょう」
ミオ「いやぁ、力だけじゃどうにもならないことだって結構あるもんだよ」
「んー、やっぱ外の空気はいいねぇ」
やっとメルフィス火山を抜けて、山のふもとに出た。いやぁ、火山内は暑くて空気も淀んでたから、外が気持ちいい。
わたしは大きく伸びをして胸いっぱいに息を吸い込んだ。と、そこにガイナスさんが声をかけてくる。
「それでミオさん、このあとはどうするんだい?」
「んー、歩いて帰るつもりだったけど」
来るときはオニキスに乗ってひとっとびだった。ジェード君は嫌がったけど、あのときのわたしは魔法の事で頭がいっぱいで、主人命令で無理矢理オニキスに乗せたんだっけ。あとでなんかお詫びしておこう。
そんなこんなで来るときは数時間の道のりも歩いて帰るとなれば4,5日は見ないといけない。
「そうか。俺たちはこの近隣の村に馬を預けてあるんだが……」
「おー馬ね。いいねいいね。わたし馬って乗ったことないんだよね」
「幸い、ではないが、サリーとクックがいないから2頭馬が空く。ジェードさんとオニキスさんに乗ってもらえばいいんじゃないか」
「わたしはどっちかの膝の上かな?」
「俺が」「我が」
「どうどう。まー、それじゃあその村に向かおうか。案内よろしくー」
馬かー。乗馬スキルとかないけどなぁ。ジェード君かオニキスの膝の上ならまぁ、大丈夫か。ってか彼らは馬に乗れるのかな。オニキスとか馬におびえられそうな気がするんだけど……。
ガイナスさんの案内に従って歩くこと3時間。日も暮れてきたころにその村に辿り着いた。近隣の村、で徒歩3時間。やっぱり地球とは感覚違うんだなぁ。地球というか日本の都市部の人口密度が高すぎただけかな。
「そんな化け物が出たのか……」
「おねげぇします。わしらではどうすることもできませんだ。噂に名高いBランク冒険者の“黒の旋風”様を御頼りすることしか……」
「馬を預かってもらった恩もあるし、応えたいのは山々なのだが……」
「そこをどうにか、おねげぇしますだ。隣村は壊滅して、避難者をうちの村でも受け入れてるんでさ。ここも襲われればわしらにはもう逃げる場所がねぇんですだ」
「むぅ……」
ん、なんか話してるな。ガイナスさんと、あれは村長さんかな。
「どうしたのん?」
「ああ、ミオさん。いやなに、最近この村の近くに化け物みたいに強い魔物が現れたという話でな。隣の村が襲われて壊滅したらしいんだ。そこで、この村の人たちが討伐依頼を持ちかけてきたんだが」
「あ、あの、こちらの嬢ちゃんはだれなんで?」
「嬢ちゃんじゃなくてミオさんとでも呼んでくれ。こう見えて俺より遥かに強いぞ。今は黒の旋風の一時的なリーダーみたいなものだ」
「あ、ミオですー。よろしくー」
「は、はぁ」
「それで、ガイナスさん。なんで受けないの? パッと受けてパッと解決しちゃえばいいじゃない」
「しかし、その魔物の縄張りが《霧の大森林》なんだ」
「なにそれ」
「ちょうどここからはメルフィス火山の反対側に位置する大森林だ。難度自体は火山より低いとはいえ、厄介な特性があるんだ。その名の通り、霧が深い森で道に迷いやすい。優秀なレンジャーかスカウトがいないと生きて帰ってこれない」
「ふーん」
「俺たちのパーティーじゃキースがそういった技能をもってるから、入ること自体はできるんだが、肝心のキースがあれじゃあな」
キース君はまだ気絶してるんだったか。うーん、どうしよっかなぁ。
ああ、そういえば懸念事項が一つあったんだっけか。
「ごろーじん、ごろーじん。そんなに困ってるの?」
「あ、ああ。すぐに襲われることはねぇかもしれねぇが隣村がやられたんだ、じきにここへも来るでさぁ。そうなったらおしめぇだ」
「その考えは村人みんなの共通の考えなのかな?」
「ああ。このちいせぇ村じゃあ魔物の脅威は皆よくわかってる。村を襲う魔物は稀だが、出れば村を捨てる覚悟だって皆持ってるだろうさ。だが、今回はまだなんとかできるかもしれねぇんだ。頼む、嬢ちゃん、いや、ミオさんはお強いんだろう。子供に頼むのは心苦しいが、どうかわしらを救ってくだせぇ」
「いいよ。んー、2つ条件出させて。まず、その魔物の討伐は明日以降。で、明日一日宿を借りさせて」
「そ、そんなことでいいんだか?」
「まぁ、困ってる人は助けたいしね」
「あ、ありがとうごぜぇますだ。ただ、この村には宿屋はないのでわしの家の客間を使ってもらっても……?」
「あー、要は野宿がしたくないだけだから。ベッドあればいいよ」
「わ、わかりましただ。――おい、皆、大丈夫だ、助かるぞ!」
村長(暫定)の言葉に不安げな顔で見ていた何人かの村人が歓声を上げる。結構切羽詰った問題だったのか。
というかまだ助かると決まったわけでもないと思うんだけど。それだけわたし――じゃなくて、Bランク冒険者の《黒の旋風》が信頼されているってことか。
「ミオさん、なんだか奇妙な条件だったが、引き受けてしまってよかったのか?」
「ああうん、いいのいいの。あと、明日は一日お休みにするから、気絶してるキース君叩き起こして、ビスチェちゃんと一緒にリハビリね。あー、リハビリじゃわからないかな。体慣らさせておいてってこと。目覚めていきなり森の中探索は辛いでしょ」
「分かった。キースも今日中には起きるだろう。明後日の討伐は俺たちも行くってことでいいんだな?」
「うん。対外的にはわたしよりも《黒の旋風》が解決した方がいいと思うしね」
わたしはガイナスさんと別れて、ジェード君とオニキスとともに村長さんの家へとお邪魔する。
さて、実はわたしはまだ見ぬ強敵の討伐が控える明後日よりも、明日の方が怖かったりしてるんだけど……。
さて、ミオさんは何を恐れているのか。勘のいい人ならわかりますね。ええ、ちょっとエ○い描写になるかも。期待せずにお待ちください。
これにてsession5 ファスザールと黒の旋風 終幕です。黒の旋風のみなとはもうしばらく一緒に行動しますが、間章を挟んで新章に突入します。
次は間章、舞台は忘れられた王都。ジェード君の分体のヒスイの話に戻ります。




