062 初依頼
GM「あなたは世界の謎を垣間見ました。聡明なあなたはそこから言い知れない宇宙的恐怖を感じ取ることでしょう」
ミオ「これクトゥルフじゃないから」
GM「SANチェックしたかったんです……」
ミオ「我慢しなさい。あと、わたし多分SAN値一桁だから勘弁しておいて」
ジェード君の《擬態》は便利だなぁ。これあれば完全犯罪もできるね。
わたしは組合に登録を済ませているジェード君とオニキスを見ながらそんなことを思っていた。
組合に登録するにあたって、ステータスプレートという存在が懸念だった。わたしの若干異常なスキルレベル、ジェード君とオニキスの種族とレベル、これはバレたら絶対面倒になる。そこで、まずはわたしだけが登録を行って、“実験”したのだ。
結果は成功。ジェード君のスキル《擬態》《同化》の合わせ技はわたしのステータスを偽装して、スキルレベルをおかしくない範囲にとどめることに(たぶん)成功した。受付の人からレベルについてしか突っ込まれなかったから大丈夫だろうとの判断。これならば、ジェード君とオニキスの偽装もうまくいくだろう。
けど、身分証が偽物というのは、考えさせられるものがあるなぁ。現実でのわたしの身分証も偽物だったし。そういう星の元に生まれてるのかなぁ。
「あ、マスター。終わりました」
「無事登録は済んだのである」
「あ、おっけー。それじゃ、初依頼いってみよーか。依頼受けないと身分証明能力なくなるらしいから」
「はい。すでに依頼を受けたんですか?」
「いやー、待ってる間そこの依頼板みてたんだけど、よさそうなのがあったからこれにしようかなって」
「なるほど。薬草の採取依頼ですか。切り傷に効く薬草ですね。生えている場所もすぐ近くだ」
「うん、だからさくっといってみようかなって」
「我は我が主のためなら草むしりでもなんでもする所存である」
というわけで3人でぷちぷち草むしり。薬草の知識はなくても冒険者組合のホールで資料の閲覧はできる。けど、ジェード君が知っていたのでそういった細かい過程もスルー。しかも分体を使って周囲の警戒もお手の物。なんて便利なんだジェード君。
一家に一体ジェード君。わたしのだからあげないけどね?
「ふむ、しかしこの草というものはなかなかに面白いものであるな」
「草が?」
「うむ。我は空を往く者。こういった地上のものについては疎いのである。草というものも、休憩のときの寝床くらいにしか思っていなかったゆえ」
「草ねぇ」
薬草、というかこの世界の動植物は現実世界と微妙に似てて、微妙に違う。
いまとっている薬草、ヨグの葉は、現実世界のヨモギに酷似している。けれども、大きさとかが違っている。ヨグの葉は2センチほどしかない小さなものなのだ。なるほど、この小ささなら傷薬を作るのにも相当量が必要になるし定期的に採取の依頼が出るのも納得。
……ん?
ちょっとフレンドコール。
「もしもし、タイチ。今大丈夫?」
『ああ、大丈夫だよ。どうしたんだ、姉さん?』
「ちょっと聞きたいことがあるんだけど、タイチとか周りのプレイヤーって怪我した時どうする?」
『怪我した時ってHP減った時だよな。回復魔法かけてもらうかポーション使うかな。時間経過の回復なんて微々たるもんだし。HP減った状態放置って怖いしな』
「薬草とか、使わないよね?」
『うーん、薬草なんてアイテム見たことないな。でも効果低そうだしどっちにしろ使わないかな。飲むんだったら苦そうだし』
「そっかー。ありがとね」
『うん? まぁ、納得したならいいや。旅行、落ち着いたらまた連絡ちょうだいな。会いに行くからさ』
「はいはいー。それじゃねー」
うーん、やっぱり知らなかった。わたしも知らなかったもん。
プレイヤーの知らないHP回復アイテム。
これ、ほんとに回復アイテム?
わたしが使っても効果があるのか、どうか。アイテムストレージには収納できるし、説明も出る。でも、HPをいくつ回復とは書いてない。
もやもやとしたものを抱えながらわたしたちは帰途についた。
初のFランク依頼は無事に終わった。でも、すっきりしない。
依頼の報告に行った組合でも、またひとつ嫌なものを確認しちゃった。
……明日、一つだけ検証してみよう。
ミオさんは頭が悪いわけでも勘が鈍いわけでもないです。となるとまぁ色々と気づいちゃいますよね。まぁ、優秀な探索者ほど真相に近づくので死にやすいんですがね。




