061 冒険者組合
GM「最近ネタがなくて……」
ミオ「知らないし。ここはお悩み相談室じゃないし」
GM「なにか質問とかあったら返答できるんですけどね」
ミオ「あったとしても前書きでやるんじゃない……」
「こんにちはー」
冒険者組合の扉を開けて入ってきたのは年端もいかない少女だった。組合の受付嬢――リーサはそんな少女を見て不思議に思った。
冒険者組合はさまざまな依頼を取り扱う。その中には薬草取りや掃除、子供の世話などの少女がこなせるだろう雑事も含まれる。だから、そういった仕事を受け日銭を稼ぐ貧民街の子供などは一定数いる。しかし少女の服装は随分と高級そうでとてもそういった子には見えない。依頼をこなす側ではなく依頼をする側という可能性もあるが、普通は契約のため大人が来るし、仮に少女が貴族ならばなおさら一人では来させないだろう。
リーサが見つめる中少女は受付カウンターまでやってきた。現在の時刻は昼過ぎ、組合内に人は少ない。カウンターにも待ち人はいなく、いまいる受付嬢もリーサひとりだけだった。
「すいません、冒険者組合に登録ってできますか?」
「あ、はい、登録ですね。少々お待ちください」
ベテランというほどではないものの、リーサもすでに5年近く組合で受付嬢をしている。疑問はあっても条件反射で対応を行った。
「ではこの書類に記入を……あ、字は書けますか?」
農民などは字が書けないどころか読めないことも珍しくはない。リーサは代筆の申し出を行ったが、少女は自分で書けるといって断った。リーサは、やはり貴族なのだろうか、それならばこの年で登録というのは随分とお転婆な少女だと思った。
「はい、ミオさんですね。たしかに受領しました。では、いくつか冒険者組合についての説明をさせていただきますね」
リーサは組合での依頼の受け方など、さまざまな注意事項をすらすらと暗唱していく。酒場に張り出されるような依頼の受け方とは若干異なるのだ。また、口頭で伝えられる内容を覚えきるのは若干厳しいが、少女がこの程度の情報も整理できないようでは依頼主とのトラブルを招く危険もある。これは一種の試験なようなもので、ここでちゃんと聞き取れていないようなそぶりを見せた場合は評価にも響いてくる。
「(一応聞き取れてるみたいだけど……)。ではミオさん、説明を理解したか確認したいのでランクについてとステータスプレートの有効期間の部分を説明していただけますか?」
「えーと、ランクは下からF、E、D、C、B、A、Sとそれ以上。ランクによって受けられる依頼や、組合からの優遇措置が変わる。最初はFから、一定以上依頼をこなして実力を認められると試験をうけてランクを上げられる。B以上は試験ではなく実際の功績のみで昇格。Fランクの主な依頼は雑用。Eランクからは魔物の討伐依頼がはいる。護衛依頼はDから。一般的にCでベテラン。B以上はそうそういない。と、こんなところですか?」
「え、ええ。よろしいようですね」
「あとはステータスプレートでしたっけ。ステータスプレートは組合が発行する金属製のプレート。ランクと名前が刻まれていて、細かい情報も内部に保存できる魔道具で、所有者の魔力をもとに生成するので偽装は不可能。そのため身分証代わりになる。ただし、身分証代わりとなる有効期間は一年間。その間更新をしなかった場合は登録抹消。ただし、初登録の場合はFランクで有効期間は1週間、Eランクで一月。Dから一年。合ってます?」
「あ、はい。大丈夫です」
少女はリーサの言った内容をすべて反復して見せた。そのことにリーサは少なくない驚きを覚える。見かけの幼さに反して相当優秀なようだ、もしかしたら今後とも長い付き合いになるかもしれないと顔をよく覚えておこうとした。そこで、リーサは改めて少女の容姿を見て、息をのんだ。組合の受付という多くの人と関わる仕事にあって、リーサはこれほど可愛らしい少女を見たことがなかった。いや、可愛いと評していいのかもわからなかった。一瞥して幼く見える外見ではあるが、少女らしい可愛さというよりは成熟した女性の美しさのようなものを持っているとも感じられた。
この世界でも花形の職業であるギルドの受付嬢をしているリーサは自分の容姿に自信も持っているが、それでもこんな複数の魅力が集約された美貌に勝てる気はしなかった。
「あ、こちらからも質問いいですか?」
「あ、もちろん、どうぞ」
と、少々意識の飛んでいたリーサは少女の声に我に返った。
あれほどすらすらと説明を繰り返して見せた少女にもわからない箇所があったのだとリーサは少しだけ安堵した。しかし、少女の質問はリーサをして想像だにしていない奇妙な内容だった。
「この世界で一般的に使用されている言語は日本語という名前ですか? いま書類に書いた字です」
「は、いえ、ニホンゴ、というのは聞いたことがないですね。一般的にリュシノン王国で使用される言語はリュシノン王国語ですよ」
「では、ランクの説明の際に用いたA~Zのアルファベットは何という言語だと認識していますか?」
「え、ええと、アレク帝国で用いられている帝国言語ですよね? 冒険者組合の発祥は帝国だったと記憶してますが……」
「なるほど。じゃあ、一日は24時間で、一週間は7日間で、1か月は30日、1年は12か月ですか?」
「は、はい。あ、灰猫の月は5日間ですが」
「……31も2月もなし、か。ちなみに今の月は?」
「黄辰の月ですけど……」
「来月は?」
「緑巳の月……」
「もしかして別の月の名前って子とか丑とかって入ってる?」
「白子の月と銀丑の月ですか?」
「月の名前は色と十二支かぁ。やっぱりこの世界なんか歪んでる」
「あ、あの……?」
「ああ、ありがとうございました。もう大丈夫です。今日は黄辰の月7日だから、とりあえず13日までにFランクの依頼を達成すればいいんですね?」
「そ、そうです」
突然の大量の質問が終わってリーサはほっと一息ついた。組合の制度について質問されることはあってもまさか常識を訊かれるとは思ってもみなかった。リーサは少しだけこの少女の事が心配になった。
「それじゃああとはステータスプレートの発行だけですか?」
「はい、そうですね。こちらに手をかざしてください」
そう言ってリーサは水晶球を差し出した。ステータスプレートを作成する魔道具である。対象者の魔力を測定し記録すると同時にレベルやステータスなどの内面的な情報を読み出すことができる。名を偽ることはできないため犯罪の抑制にもなる優れものだ。
ちなみに凄く高い。
少女が手を出すと水晶が一瞬だけ光った。リーサは水晶に大きな金属板を近づけ、水晶に記録された情報を読み出す。これでステータスプレートの完成である。
「ミオさん、えーと、レベル1、ですか。珍しいこともあるものですね」
だいたい、実年齢の半分のレベルがあれば一般的だといわれている。現在20歳のリーサはレベル12。事務仕事をこなすだけでもレベルは上がるのだ。ステータスプレートに年齢が記入されていないためリーサに少女の年齢はわからなかったが、低年齢だとしてもレベル1というのはそうそう見ない。やはり、少女は貴族の血筋で経験を積むようなことをしてこなかったのだろうとリーサはあたりを付けた。
「ではこれがミオさんのステータスプレートになります。紛失した際は再発行に料金がかかるのでなくさないようにお願いしますね」
そう言ってリーサは20センチ四方程度の金属板に手を触れる。すると金属板は淡く光り、2センチ×6センチ程度にまで縮む。普通はこの状態で、詳細なステータスを確認する時にはまた20センチの大きさに戻るという不思議な魔道具である。
「魔力って言うのはMPじゃないのかぁ……。特に変な感じもしなかったし、これはGMに心の中覗かれてるのと感覚が似てる……となると……。それに、魔道具。ゲームって言うにはあまりにも……」
少女はなにやらブツブツと言ってたいたが、リーサはステータスプレートを渡して次の来訪者にむけて気持ちを入れ替えた。組合のホールの扉の外に気配を感じたためである。
扉を開けて入ってきたのはやたらとイケメンな青年二人組だった。思わずリーサの心臓が動きを速める。冒険者組合の受付嬢といえば、冒険者たちのマドンナ的存在。リーサの先輩もつい先日Bランクのベテラン冒険者と結婚し、寿退職したばかりだ。
勿論リーサとてその先輩に倣いたいところである。
「あ、俺たちも登録お願いします」
久しぶりにちょっと長くなった気がする。それでも3500字しか書いてないんだけど……。
色々と伏線っぽいものがでてきてますが、まぁ基本気にしなくて大丈夫です。
冒険者組合とか、俺TUEEE度合いを表すには非常に使いやすい指標ですよね。この作品は姉TUEEEですが、パッと見強いのはジェード君とオニキスですからね。さて、そんなジェード君とオニキスの登録は無事済むのか。




