055 自己紹介
「あああ、しまった、せっかく隠してたのに忘れてた!」
あー、うん。ジェード君のその台詞でなんか色々と分かった気がする。二人は二人なりに魔物であることを自覚して対処しようとしてくれてたんだね。で、助けに来てからはゴミ掃除に夢中で元に戻ってた感じかな。
「とりあえず、二人とも正座!」
「「は、はいっ」」
正座と言ってもスライムのジェード君は平べったくなるだけだし、オニキスは翼をたたんで小さくなるだけなんだけども。
「いろいろ事情とか、考えてくれてたこととかは分かるけど、騙してたことは良くない。謝りなさい」
「「はい……」」
嘘はよくない。わたしは他人を騙すのがすごく嫌い。わたしの眷属なら方便であっても嘘はついてほしくない。
ジェード君とオニキスは姿を偽っていたことを素直に謝り、改めて自己紹介。その上でわたしが改めて説明。わたしは狩人の他の職が魔物使いで、二人はわたしと契約した魔物であることとか、人型にもなれることとか。
一通り説明して、質問があるか場を代表してカイトくんに尋ねてみる。
「えと、なにか質問ある?」
「あ、うん、いや、いろいろ聞きたいことはあるんだけど、そもそも魔物って喋れるの、とか」
「基本的に低級の魔物に自我はありません。俺のようなスライムが自我を持ち会話ができるようになるには魔物使いとの契約が必要です。オニキスのような上位存在は別ですが……」
カイト君の質問に答えたのはジェード君。わたしは答えられないしね。
それから、いくつかグリフィンナイツの人たちから質問が出て、ジェード君が答えて行った。
「なんか、納得はできないけど、理解は……した気がする。うん」
「俺まだ頭混乱してるや」
最後に質問をしたのは、我が弟タイチだった。
「姉さん。俺はジェードさんとオニキスさんの人となりはそれなりに理解してるつもりだ。でも、失礼を承知で一つだけ質問させてくれ。姉さんは、安全なのか?」
「あー、まぁわたしはレベル1だし、今ジェード君やオニキスに襲われたら一瞬で死んじゃうだろうけど」
「れ、レベル1!?」
「うん、あれ、言ってなかったっけ。わたしはレベル上げてないからまだレベル1だよー。ステータスも全部10で初期値だし」
別にわざわざ言うことでもないかと思って言ってなかったけかな。
なんかみんなざわざわしてるけど、レベル1ってそんなに珍しいものなのかな?
「あ、それでね。確かに一回ジェード君に殺されかけたことはあるんだけど……」
わたしのこの言葉に一番敏感に反応したのは弟君ではなかった。オニキスだった。
というか君たち人の話中断しすぎじゃない?
「ジェード、貴様、我が主を殺しかけたとはどういうことであるか!」
「あ、いや、その、黒歴史というか、思い出したくない過去というか、若気の至りというか……」
ああ、オニキスが怒りのあまりジェード君と戦いを始めてしまった。前にも見たけどこの光景って怪獣大戦みたいだよなぁ。うわ、攻撃の余波で隅で丸まってたこのダンジョンのラスボスが吹っ飛んだ。一撃でご臨終……。
あれ、そういえば今回は喧嘩してるけど、別に気持ち悪くならないなぁ。頭の中にいろいろ流れ込んできてはいるけど。慣れちゃったのかな。この一週間はもっとひどかったからなぁ。痛みに慣れるみたいに、精神の方も強くなってるのかも。はてさていいことなのか、悪いことなのか。
まーでも、わたしが喧嘩好きじゃないのには変わりないんだよ?
「ふーたーりーとーも?」
にっこり微笑んで話しかけると二人はびくっとして戦いを止め、先ほどよりも小さくなって正座した。
「まぁ、今はこんな感じかなぁ。うん、心配してくれてありがとね、タイチ。わたしはだいじょーぶ」
心配してくれる弟君には申し訳ないんだけども、そんなことよりいまはゆっくりと休みたいよ。そろそろ限界ー。
これにてsession3PKギルド《グリードグリム》終了です。
次回は間章を挟んで旅立ち篇です。




