045 身代わり
やばっ、話に夢中で気配ちゃんと確認してなかった。うー、だってしばらくぶりの人との会話なんだもん。仕方ないよね。
見張りの男は躊躇なく、レンハ君を蹴り飛ばした。彼らはいま人質とられて防具とかも全部武装解除してるし、拘束具でステータスが下がってVITも落ちてるだろうからダメージ大きそう。
「おい、なにをするっ」
カールがレンハ君を守るように立ち上がった。仲間の危機に身を挺してかばうのはカッコいいんだけど、この状況じゃ逆効果だよー、カール。
「うるせえっ」
見張りの男はカールも蹴り飛ばし、今度は執拗に蹴りつけ始めた。靴装備の裏側って硬いからストンプ攻撃って痛いんだよね。
てか、HP大丈夫かな。人質いて抵抗できないからすごく危険な気がするんだけど。
わたしはカールの気配がする位置へと意識をフォーカスしてみた。目が見えないけどステータスは見れるのか、どうか。
結果、見れることが判明した。視界は真っ暗だけど、ステータスは見えてる。
この世界の他人に見えるステータスは数値無しのHPバー、状態異常アイコンだけ。パーティーやギルドに所属している仲間だとまた違って、例えばジェード君やオニキスの場合は加えて詳細な数値でHPMP、他各種ステータスやレベル、スキルが見えたりする。ちなみに魔物の場合は他プレイヤーと同じだけど、魔物はそれに加えて名前とレベルが見れる。《ラピッドラビット・レベル1》みたいにね。
って、やばいやばい、カールのHPがもう4割切って黄色くなってる。このままじゃ死んじゃうけど……止めてって言って攻撃を止めるような人たちじゃないことはこの数日で思い知ってるし。
んー、仕方なし。ジェード君、ごめんね。
「おーい、見張りさーん、こっちこっちー。聞こえてないのかなー無能な見張りさん-。老後で耳も遠いのー?」
お、意識がこっち向いて攻撃が止まったぞ。よしよし。
「目が見えないからよくわかんないけどー、小娘一人殺せないような腰抜けの見張りさんがまた来たのかなー」
「……てめぇ、舐めた口きいてんじゃねぇぞ」
「あららーわたしが怖くなったからあっちの人たちに攻撃してたんじゃないのー。いっつもはわたしに攻撃するのにさー。まぁわたし死なないから意味ないんだけど」
う、いい蹴りがお腹に入った。吐きそう。まぁ今わたし手足無いから狙うとしたらそこか顔面だよね……。顔じゃないだけよかったのかな。口が無事だからまだ挑発できるし。
「あれー全然痛くないけど手加減してくれるのかなー。わーやさしー」
あう、痛い痛い。これ絶対内臓痛めてるって、骨折れてるって。ゲーム内じゃなかったら死んでるって。
あー、でもなんか段々痛みに慣れてきたなー。人間の体って凄いね。いまじゃこうやって色々考える余裕あるもんね。最初の頃なんて頭の中真っ白になるくらい痛みの事しか考えられなかったのに。
見張りの男は一通りわたしを痛めつけた後、唾をわたしの顔に吐き捨てて巡回に戻っていった。うえー、汚い。
「み、ミオさん、大丈夫かい……?」
「あー、うん、ありがと。ちょっと口の中切れてるけど喋れるよ。あと、ごめん、誰か布とか持ってないかな。流石に唾は汚いから拭って欲しいんだけど」
手がないとこういうとき非常に不便。
「あ、ああ。レンハ、頼めるか」
「は、はい」
あー、お風呂入りたいなー。もうやだよこんな生活。
「……すまないな、ミオさん。わたしたちのせいで。――ありがとう」
「んーん、気にしないで。困った時はお互い様だよ」
それにしても、呼び名がミオちゃんからミオさんに変わってない?
なんで?




