044 新たな住人
この洞窟のような場所に閉じ込められて数日。新しい住人がやってきた。全員男で拘束されてるっぽいってのはわかる。曖昧なのは目が見えてないからだ。
彼らは先客であるわたしに気づき、驚いたようだった。とりあえず緊張をほぐしてあげようか。
「はろー。ようこそー薄暗いじめじめした洞窟へ。たいしたおもてなしもできないけど、ゆっくりしていってね!」
「お、お嬢ちゃん、その姿は……」
先頭にいた男性はわたしの冗談を華麗にスルーしつつ質問してきた。これじゃわたし痛い子じゃないか。
あー、いまはリアルで痛い子なんだった。
「あ、ごめんね、こんなダルマみたいな姿で。ついさっき切り落とされたばっかりで生えてくるまで時間かかると思う。目もいまはちょっと見えてないんだよね。あと、首輪されてて動けない。にゃんにゃん」
まぁ断面図とかはゲーム的だし、そこまでグロくはないと思うけど。こればっかりは我慢してもらわなきゃね。わたしじゃどうにもできないし。
ギリッと歯をかみしめる音がした。
「グリードグリムの奴ら、なんてことを……絶対に許せん……」
「しかしマスター、今は……」
「ああ……」
うん? グリードグリムって聞いたことないな。
わたしは新しい住人達とお話をしてみることにした。情報交換って大事だよね。幸い今は見張りも巡回中なのか気配を感じないし。
男性たちは皆《月夜の黒猫》というギルドのメンバーだった。最初に声をかけてきた人がギルドマスターで《暗黒騎士》のカール。後ろにいるのがそれぞれ《盗賊》のギン君、《鍛冶師》のミスト君、《薬師》のレンハ君。彼らの話をまとめると、グリードグリムというギルドが私たちをさらった犯人みたい。しかも誘拐だけじゃなくて殺人もしてるらしい。あちゃー、完全に真っ黒な悪人だよ。そんなのに捕まったのか、わたし。あのチンピラたちがそのギルドメンバーってことなのかな。どうりでバッツ君に手をかける時も躊躇がなかったわけだ。
彼らは能力値が下がる拘束具を手にかけられている。封印されていたオニキスにかけられていた《神霊縛鎖》のようなもの。強度は全然違うと思うけど。STRの低い3人はともかく、《暗黒騎士》のカールは抵抗ロールで壊せそうだけど、そうすると別の場所に連れて行かれたサブマスターで《治癒術師》のメイリンという人たちの安全が保障できないという。人質だねー。そもそも彼らが捕まったのも、レンハ君が一人でいるところをつかまって、脅迫的に呼び出しを受けて、みんなでのこのこ行ったら不意打ちで全員捕まったらしいし。もうちょっと警戒心持とうよ。いや、わたしが言うなって話なんだけどさ。
あと、ここはダンジョンの中らしくてフレンドコールやメールができないらしい。そんな仕様があったのか。それじゃあ最初にわたしが逃げるチャンスあった時に弟君にメールしようとしても無駄だったわけだね。
「その、一つ聞いていいかな」
だいたいの情報交換(一方的)を終えたところでカールが尋ねてきた。
「うん、いいよー。幸い舌とか歯は引っこ抜かれてないし、喋る分には問題なし―。わたしが答えられることならなんでも答えちゃうよー。あ、身長と体重とスリーサイズは秘密ね」
体重は軽いんだけど、人に言うとだいたい心配されるから言わない。病院に連れてかれそうになったこともあった。わたし保険はいってないから病院いけないんだよぅ。
いままでの人生で病院行ったのだって如月夫妻を事故で亡くした時に入院したことが一度あるきりだし。
「あ、うむ。ミオ、ちゃんはどうしてこんなところに?」
ミオちゃんだって、キャー。カールは声的に結構なナイスミドルっぽいんだけど(顔は見えない)、そんな渋い声でミオちゃんなんて呼ばれたら濡れちゃう。カールさんて呼んだ方がいいかなぁ。でも最初のノリ的にいまさら戻すのもなぁ。
「あー、わたしは街歩いてたらさらわれて……」
わたしが自分の話をしようとしたとき。
「おい、お前ら、何を話してる!」
無粋な邪魔が入った。




