042 捜索
「くそ、みつかんねぇ」
ジェードはここ数日で何度目とも知れない悪態をつく。《試練の森》に分体を放っているのだが、いまだ彼の主人の発見には至っていない。定期的に減少する自身のHPのおかげで主が生存していることは分かる。しかし、それは同時に主人が攻撃を受けていることも示す。ジェードは不甲斐ない自分に煮えたぎるような怒りを覚え、それと同時に刻々と迫るタイムリミットに焦りを募らせていた。
そんなジェードの前に巨鳥が降り立つ。
「オニキス。マスターは見つかったか!?」
「残念だが、まだだ。上空からでは木々が邪魔で細かい捜索が不可能である。――すでに捜索をはじめて4日。方法を変えるか、捜索場所を変えるべきかも知れぬ」
「俺の分体も2体出すのがせいぜい。この広い森を探すには目と足が足りなすぎる」
「かといって、我は長期間封印されていたわけで昔の知り合いを訪ねようにも時間がない。お主も仲間のようなものはいないのであろう」
「ああ……」
オニキスが人型を取って座り込む。ジェードもその意図を察して地面に座る。闇雲に探してもらちが明かないのであれば、頭をひねって方法を考えるしかない。
それと並行してオニキスが呪文を唱えてジェードを治癒する。ここ数日ですっかり慣れたため、やりとりはスムーズだ。回復に慣れるほど頻繁にHPが減る、ということはそれだけ継続的にミオが攻撃されているということでもあるのだが。
意見を交わすこと数十分。しかし、良い案は双方ともに浮かばなかった。
「ダメだな……こんなときマスターがいれば……」
「そうである、我が主ならこんなときどうしたであろうか」
オニキスの言葉にジェードは少し考え込んだ。
「マスターなら……当てもなく森の中を歩き回るのはめんどくさいって拒否する」
「ん、いや、それだけではないであろう。もし仮にこの場に我が主がいて、姿が見えないのが我が主の弟君であったとするならば、我が主は必ずや助け出そうとするであろうよ」
「なら……他の人に頼む、かな。俺とかお前はもちろんだけど、知り合いの冒険者とか……ああ、そうか」
「ふむ。他のプレイヤーに協力してもらうというのはなかなかいい案ではないのか」
「ああ、俺は自分が魔物だからそんな発想無かったぜ。だがいまの俺らはマスターの眷属でどちらかといえば人族よりの存在だ。それに、俺の擬態とお前の人化で冒険者に接触しても問題はないか。弟さんにも既に会ってるしな」
「ならばさっそく行動に移ろう。まずはどうする?」
「俺たちに知り合いはいないからな……そうだ、マスターの弟さんはこのことを知っているのか?」
「弟君……以前顔を合わせはしたが、連絡先などは当然知らぬよ」
「もしかするとマスターがいなくなったことはまだ知らないかもしれないな。知ればきっと力になってくれるはずだ。とりあえず、街に行くぞ。聞き込みをすれば居場所がわかるだろう」
「弟君は名をタイチ、大手のギルドに所属しているのであったか。これだけ情報があれば確かに見つかるであろうな。――ところでジェード、他の人族に我らの正体は明かすか?」
「……マスターはどう思ってくれているかわからないけど、俺たちは本来彼らの敵の、魔物だ。勿論マスターに敵対しようなんて意思はないが、俺らのせいでマスターが他人から悪い感情を向けられるのは……嫌だ」
「心得た。友人のプレイヤーということで誤魔化すことにしよう。ほれ、ジェード、さっさと行くである」




