041 監禁と拷問
ちょっと表現が痛いと思います。
このゲーム世界でも殴られれば痛い。斬られるともっと痛い。潰されたり砕かれたりすれば死にそうなほど痛い。そんなことを知った。あと、血はいくら流れても出血多量にはならないらしい。貧血って言う状態異常にはなるけど。というか明らかにわたしの体重以上の血液が流れたんだけどどっから出てきたんだろうね。
いまのわたしのステータスには数多くの状態異常が並んでいるだろう。貧血に始まり、さっき目をやられたので盲目。薬を使われて毒と麻痺にもなってる。あとは火傷。それに不眠、空腹、衰弱、疲労のバッドステータス。ここ数日飲まず食わず寝ずだからしょうがない。ああ、拘束もあった。首をなにかのアイテムで拘束されてるから逃げられない。なんで首かって。そりゃ手足無いから。これも部位欠損ていう状態異常の一種みたいだね。時間がたてば治るみたいだけど、別に嬉しくはない。どうせ回復した後でさっきよりひどい目にあうんだから。
まぁ、こんな目にあったのも自業自得というかわたしの注意不足。ポーションを買いにいく道の路地裏。そこで襲われた。麻痺の香:中級というアイテムで不意打ちされて状態異常抵抗ロールに失敗。殴られて気絶。目が覚めたらどこだかわからない洞窟的な場所で拘束されていた。
わたしを襲ったのは以前に2度ほど会ったチンピラたちだった。どうもあの一件以降、街で笑いものになってしまったようで、その逆恨みじゃないかなと思っている。
そういえば、わたしを助けようとして彼らにやられてしまったバッツ君は大丈夫だろうか。彼は冒険者志望だけあって鍛えてはいるらしいけど、結構血を流してたからなぁ……死んでしまっているかもしれない。もしわたしが生きてここを出られたらガッツさんと奥さんに謝りに行こう。
――さて、目が覚めた時点でわたしの残りHPは1だった。
最初はうっぷん晴らしにただの殴る蹴る。それも顔を狙わないで腕や足、お腹ばかり狙ってきた。もっとも、これでも十分辛くて何度か吐いたけど。
わたしのHPは1しかなくて、殴る蹴るでも十分死んだと思ったけれど、ジェード君のスキルが発動していたみたいで助かった。HPは1のまま変動しない。まぁ痛いことには変わりない。
おかしくなってきたのはしばらくして、チンピラたちがわたしが死なないことに気づいてからだった。
行為はだんだんとエスカレートしていき、両手両足をハンマーで砕かれてお腹を大剣に貫かれたままでも生きているわたしを見たところでその目に恐怖が宿った。それから男たちは休憩すらほとんどなしにわたしを痛めつけ続けた。「化け物め、化け物め」と叫びながら。
わたしからしたら、狂ったように攻撃してくる男たちの方がよっぽど化け物に見えた。
まぁ、のちに考えたところでは、いつ死ぬかもわからないデスゲームに囚われてそんな状況の中で“死なないプレイヤー”に出会ったならばチートだなんだと叫びたくなる気持ちは分かる。でもだからといって執拗に痛めつけることを看過はできないよね。実際、死なないだけで、死にそうなくらい痛いんだから。
最初の日の夜、1度だけ逃げられるチャンスはあった。男たちがわたしを痛めつけることに疲れ果てて眠った後。わたしは自分を拘束している鎖を破壊しようとした。オニキスがやったように。
結果は失敗。弓を装備していないわたしのSTRは初期値の10で、拘束具を破壊するには至らなかったのだ。そして音で目覚めてしまった男たちはまた散々わたしを痛めつけた後、以後は見張り番を立てるようになってしまって、それきりいままでチャンスはない。あー、拘束解く前に弟君にメール送っとくんだった、と思っても後の祭り。
腕は時間で回復する傍から切り落とされるからメニュー画面開くこともできやしない。
そうそう、自慢じゃないけど最近は目が見えなくても自分が何されているか分かるようになってきた。ずっと盲目状態だったから空間把握能力とか上がってるのかな。いまもどんな刃物で切り付けてきてるのか正確にわかる。斧はすごく痛いんだよね……。エストックとかで敏感な部分貫かれる鋭い痛みよりはましだけど。心臓貫かれる痛みを知りつつ生存してる人ってあまりいないんじゃないかな。貴重な体験してるなぁ。できれば一生したくない経験だけど。
あー、ジェード君とオニキス心配してるかなぁ。してるんだよなぁ。この前分かったように向こうの感情はこっちに流れ込んでくる。多分同様にこっちの感情も向こうに流れ込むだろうからなるべく耐えてはいるんだけど。
しょーじき、茶化してないともう無理。
性犯罪はシステム的に不可能だから、それだけが唯一の救いだった。このうえさらにあっちの“暴力”まで受けてたら流石に壊れてたと思う。……まぁもう半分くらい壊れてるかもだけど。
ただまぁ、こういう痛みはちょっと懐かしくもあった。小さい頃は毎日のように殴られてたし、仕事で失敗した時の院長先生の折檻は今受けていることの縮小版だった。あのころ辛くなかったことが今は辛いって言うのは、番号だったあのころと違って、今のわたしが人間である証明のような気がして少しだけ嬉しい。
助かる見込みもないし、耐えられる見通しもない。それでも、ジェード君とオニキスから伝わってくるわたしを「助けたい」という強い気持ちを感じる限り、わたしはまだ諦められない。
きっとそれが、まがりなりにも彼らの主であるわたしの役目。
囚われのお姫様の仕事は、王子様を待つことだけ。なんてね。
この話ではバッドエンドにはならないです。曲がりなりにもタグに「姉TUEEE」「ほのぼの」入ってますしね……。ダイスももう振り終わってますし。
この話が終わったら本格的な姉の伝説が始まる(はず)なのでそれまではひ弱(語弊有)な姉におつきあいください。




