032 強さの秘密
GM「だらだらするのが大好きなあなたは今日も今日とて一日中ベッドに転がりのんべんだらりと過ごすのでした」
ミオ「うん」
GM「(皮肉が通じない……!)」
《宿屋の一室でほのぼのくつろぎながらあなたはふと、思い出した疑問を傍らのスライムへと問いかけました。物知りな彼ならば何か知っているかもしれません》
「そういえばジェード君、こないだわたしの弟に聞いたんだけどね、弟君はレベル40超えてるのにスキルレベルは一番高いのでも20くらいなんだってさ。でもわたしのスキルレベル200超えてたりとかするのって、なんでかな」
わたしの唐突な質問にジェード君は少し悩んでから口を開いた。
「それについては俺も考察したことがあります。いくら高経験値のラピッドラビットを倒しまくったにしても、俺もレベルアップの速さが尋常じゃなかったですからね。特に、高レベルになってからも低レベル時と同じ程度の速さでレベルアップするのは異常でした」
確かに。ジェード君は進化して一回レベルがリセットされてるけど、それがなければレベル248。オニキスより高いもんなぁ。レベル40前後のトッププレイヤーに比べても高すぎる。魔物だということを考慮しても高い。
だってよく考えたら弟君たちが戦っている魔物って、彼らのレベルより下の魔物なんだもんね。
「それで一度マスターたちの言うヘルプ、ですか。あれを調べ直したところ、どうやら経験値補正というものがあるようです。自分より高いレベルの敵を倒すと多く経験値が入る、逆に低レベルの敵を倒すとあまり経験値が手に入らないという現象ですね」
ふむふむ、ゲーム的だ。自分に見合う敵、もしくは格上を倒して強くなれってことか。
「そこで気づいたんですが、マスターはいまもレベル1です。そして、敵を倒すときはいつもマスターが攻撃の起点として弓を射っていました。実際に止めを刺したのが俺だとしても、俺は判定上はあくまでもただの矢。システム的には魔物を倒しているのはマスターなのではないでしょうか。ですから、マスターのレベル1に準じた補正がかかって大量の経験値を得ているのではないかと。例えば《久遠の彼方》に出てくる敵はレベル50程度でした。あの頃の終盤の俺のレベルはその2倍以上あったので普通は経験値を得ることができませんが、倒しているのはレベル1のマスターなので実際に大量の経験値を得ていたと推測できます」
おお、なるほどー。論理的な考察だ。ジェード君やっぱり頭いいね。尊敬しちゃうよ。
「いえ、自分などまだまだです。俺はマスターに頭の回転や知恵比べで勝てる気はしませんよ」
んーそれはあまりにもわたしのことを過大評価していないかなー。簿記くらいはできるけど、わたしそんなに頭良くないよ。学校行ってないから周りと比較したことはないけど。
「あ、けどそれだとジェード君のレベルが上がったことは納得できるけど、スキルレベルが上がったことの謎は分からないよね。スキルにも経験値ってあるのかな」
スキルレベルというのは熟練度を示す値だったはず。実際一回も使ったことのないスキルはずっとレベル1だったから、わたしは単純に使った回数でレベルアップすると思ってたんだけど。それだと前線の弟君達よりもスキルレベルが高い理由が説明できないんだよね。
「それについての情報はなかったんですよね。実感として多く使ったスキルのレベルが上がることは分かるんですが、俺が戦闘時も日常時も常に使い続けている《吸収》のスキルでさえいまだレベルは100程度です。マスターのように戦闘時にしか使っていない弓スキルがレベル200を超えているというのは解せませんね」
「……武器のレベルがスキルレベルに補正をかけているのではないか?」
あ、オニキス起きたんだ。
椅子に座ったまま寝てたオニキスは理知的な風貌で、眠気の為か物憂げな表情だからすごく絵になる。中身はまぁ、あれだけど。
オニキスの顔見てるとすごく眼鏡をかけさせたくなってくる。この世界にも眼鏡があることは実は確認済みなんだよね。
「オニキス。いやしかし、マスターの持つ弓《久遠の閃き》は武器レベル53だ。それにしたって一か月の間《久遠の彼方》に通っていた時に上がったものだ。それまでマスターは武器レベル10の《木の弓》というボロ装備を使っていらした。その間にレベル補正がかかるとは考えにくい」
ボロ装備って。まぁ確かに初期装備だけどさ……。
「矢はジェードだったのであろう。ならば高レベルのお前を使ったことで我が主のスキルが上昇したのでは」
「……たしかに装備のレベルとの差で補正はかかるだろうが、矢である俺が関わっているとは考えにくい。もしも補正の判定に俺が関わっているならば今度は経験値が大量に入る謎が再度浮上する」
「ふむ……」
うんうん、仲好さそうでなによりなにより。議論するとなんか相手と仲良くなるよね。まー内容によっちゃひどい喧嘩に発展したりもするけど……。
「あ、そっか。レベル補正かかるなら、弓で自分よりもレベル高い敵倒した時に上がりやすいんじゃない?」
「っ、なるほど、それは盲点でした。確かに弓は射るためのもので対象が必要ですからね。スキルレベルの上昇に標的のレベルが関係しているというならば納得できますね。同様に《魔物の主の心得》の上昇が早いのも、俺やオニキスが高レベルだからと考えればつじつまが合います。流石マスター、その慧眼に感服するばかりです」
そ、そこまで考えての発言じゃなかったんだけど……ま、いいか。
しかし、なるほど、レベルが低いせいで熟練度にはボーナス貰ってるのか。イメージ的には高レベルの人のほうが熟練度すぐにあがりそうだけど、そんなこともないのかなぁ。ゲームやらないから一般的にどうなのかよくわからない。弱い人の救済措置ってことなのかも。
まー、スキルレベル高くて困ることはないだろうしあまり気にしなくていいか。
というわけでミオさんがチートになってる理由。正確には純粋なレベル差だけでなく、周りのプレイヤーとの差も補正値に入ってきます。つまり、これから先周りのプレイヤーのレベルが上がるごとにさらにチートじみてくるということ……!
伊達にレベル1のオワタ式で過ごしているわけじゃないんだ……!




