030 反省と再びの出会い
GM「あなたはジェード君にはたっぷりと“なでなで”をし、オニキスにはたっぷりと“お勉強”をさせてあげました。二人の反応に満足したあなたは気持ち悪さも薄れてツヤツヤとしています」
ミオ「……間違ってはいないから反論できない」
ジェード「なでなでこわいBGMもこわい」
オニキス「か、体で勉強したのである。そんな悪魔的な羽の使い道があるとは……ああ、そこはおし……(バタッ)」
ジェード「しっかりしろオニキス傷は浅いぞっ」
すっかりおとなしくなったジェード君とオニキスを横目にわたしはため息をついた。
正直言い過ぎ、やりすぎた感はある。でも、脳をぐちゃぐちゃにかき回されるような筆舌に尽くしがたい苦痛は2度と味わいたくない。さっきは吐き気とか言って誤魔化したけど、あのまま続けば発狂してたんじゃないかと思う。他の魔物使いの人もこんな苦労してるのかな。
「ほら、二人とも、帰るよー」
ジェード君、オニキスとはいくつか約束をさせた。
まず喧嘩をしないこと。喧嘩されたらさっきの脳みそぐるぐる状態がまた来るかと思うとこれは禁止せざるを得ない。どうしてもするときはわたしに許可を取る事。
次は互いを名前で呼ぶこと。わたしがつけた名前なのに使われないのは寂しいし、名前で呼んでいるうちに友情でも芽生えればなーと思っている。
その次、基本人型でいること。聞くところによると、人型の間は使えるスキルも制限され、ステータスにも若干マイナス補正が入るらしい。なら人型でいる間は喧嘩とかしにくいだろうという目論見。決して二人がルックスのいいイケメンだからとかそういう理由ではない。イケメンだからではない。
最後に、他人を侮らないこと。二人とも元が魔物だからか自分以外の人を軽く見る傾向にあるっぽい。人は見かけじゃないし、この世界ならなおさら。幼女が魔王並に強くてもおかしくないんだから。
思考が流れてくるからね。悪感情がいっぱい来るのは勘弁なのよ。
さて、もう日も暮れたころ、ぐったりした二人を引きずって街へ入ると、いつかみたチンピラに囲まれた。
うわーめんどくさい。
「おうおう嬢ちゃんこないだはよくもやってくれたな。今日こそ金を置いていってもらうぜ」
いや、わたしはなにもやってないけども……。てか街中で人目もあるのに絡んでくるとは。
「なんだ貴様らは。我が主人に無礼な振る舞いをするでない」
ぐったり状態から一瞬で復帰したオニキスがチンピラの言動をとがめる。よしよし、反省の成果が出てる。反省前ならここで問答無用でぶっとばしてた気がするし。
「てめぇこそなんだ、嬢ちゃんの彼氏か。ははっ、嬢ちゃんにお似合いの初心者護衛じゃねえか」
「なに……」
あーオニキスの服装、わたしがあげた木綿の服だからなぁ。見た目は完全に初心者か。強そうな武器とかもない無手だし。
「落ち着けオニキス。こんな奴ら構っても無駄だ。いくぞ」
ジェード君がそう言って囲みを抜けようとする。が、前回同様ブロックされて進めない。
「マスター、こいつらやってしまっても?」
「痛い目見せてもよいであるか?」
その台詞は早いよー。二人ともまだまだ忍耐が足りないというか、なんというか。まぁ、他人を侮るなといってもこのチンピラじゃ無理だよねぇ。最初に手を出さなかっただけ褒められるかー。
「あー、いいよ。けがはさせないようにね」
って言っても街中だからHPダメージは判定されないんだけど。問題はHPにダメージが与えられそうな行動をとると衛兵が飛んでくることかな。
「では。オニキス、ここは俺に譲れ」
「……了承した」
ジェード君の髪の毛が一本地面に落ちる。それはとても小さいスライムの塊になって分裂し、男たちの元へと進んでいく。この小ささでは注視しても見つけるのは難しいと思う。わたしはまぁ《狩人の目・レベル80》があるから見えるけど。
そして、ミニスライムが男たちの足元まで這いよった直後、男たちが突然笑い声をあげる。服の中でジェード君の分身がくすぐっているんだろう。
スキル《分体》《分裂》《体積変化》《形質変化》の合わせ技かー。ジェード君てやっぱり器用だよね。ダイスロールもなにげに全部成功させてるんだろうし。
男たちは涙を流しながら笑い転げているから囲みも何もあったもんじゃない。そんな姿を尻目にわたしたちはその場をあとにした。あとには道行く人から奇異の視線を向けられる、笑い転げるガラの悪い男達だけが残った。
なぜかチンピラ再登場。わかりやすすぎる伏線。




