026 オニキス青年
GM「あなたは豪快な方法でダンジョンから脱出しました。最下層から崩壊したダンジョンには二度と立ち入ることができないでしょう。あなたは1か月の思い出を振り返り感傷的な気分を」
ミオ「ダイナミック脱出!」
オニキス「スタイリッシュであろう。我はあのようなところに縛られて良い存在ではないのである」
GM「」
「うわぁ、すごいねぇ。これは気持ちいいー! あ、ほらほら見てジェード君、始まりの街があんな小さいよ」
オニキスはわたし達を背にのせると風魔法を発動し、遺跡の天井を地上までぶち破った。そして数百年動かしてなかったとは思えない優雅な動きで翼をはためかせ、大空へと舞い上がる。
わたしたちはいま、大空をゆったりと飛んでいる。
低空飛行に入った飛行機から地上を見下ろした感じに近いかな、この情景は。でも、鳥の背に乗って空を飛ぶというのは言葉に例えようもない素晴らしさがある。うん、これは文句なしに気持ちいい。あー際限なくテンション上がる。
「あれ、オニキス。全然向かい風とか寒さとか感じないけど、なんかしてる?」
『うむ、我が主よ。我は風魔法を使えるのでな。これくらいは余裕であるよ』
おー、なんという高性能。
大空の遊覧飛行を十分に満喫した私たちはジェード君が高所恐怖症だという弱点と、オニキスの背中の乗り心地はごつごつしてるかと思いきや実は柔らかくてグッドということを発見しつつ地上へと降り立った。
『しかし不思議なものである。我がいままでどう暴れてもびくともしなかった忌々しい鎖が、ああも簡単に引きちぎれるとは』
「数百年もあのままだったんでしょ? 古くなってたんじゃない?」
『いや、そういうレベルの古代遺物ではないのであるが……』
まぁわからないことを気にしても仕方ないよね。この問題は置いておこう。
しかし、新たに重大な問題を発見してしまう。
「あ、やば……ジェード君はいいとしても、オニキスはさすがにそのおっきな体で街には入れないよね」
立ち上がって翼を広げたら象二頭分くらいありそうだし。そして今までの寝床はついさっき崩落したっぽい。森で野宿かなぁ。私たちだけ宿屋に帰るってのもなんか悪いし。せっかく隷属させたんだしね。
『ふむ……先ほど空から見たあの街であるか』
「入れるとは思うけど、大騒ぎになっちゃうよね。宿でも寝れないだろうし」
あの街の人たちの魔物を見る目はちょっと嫌い。
『ああ、なるほど。いや、そこは心配いらぬよ我が主。我は既に半精神生命体であるのでな。姿にはかなり自由がきく。とりあえず人間のようになればよいのかな?』
そういうとオニキスはしゅるしゅると縮んでいく。輪郭も鳥のものから人のようなシルエットになり、数秒後にそこに立っていたのは茶髪黒眼で長身痩せ型の理知的そうな、大きな翼の生えた全裸の青年だった。全裸の青年だった。
「あ、す、すごいイケメンだね……?」
といいつつわたしの視線は腰より下に向いている。我が弟のものを見たことはあれども、あれは一体何年前のことやら。あれは、大人になるとこうなるのか……。はっ、ジェード君、なにをするんだ!
オニキスの下半身を凝視していたわたしにジェード君が飛びかかり、目隠しのように顔を覆われた。くっ、何も見えないじゃないか。君の体は半透明のはずなのに。……体色を濃くすることを覚えたのか。猪口才な!
「ああ、済まぬ、我が主よ。見苦しい姿を見せてしまったな。なにせ封印状態で装備品などもってはおらなんだ。もし何か服装備を持っていたら貸してくれるか」
あー、わたしの装備は久遠シリーズに変えたからもともとの初期装備の【木綿の服】があったかな。
わたしは目隠しをされたままメニュー画面を開き、アイテムトレード画面を呼び出す。うー、ジェード君、見えないと操作し辛いよー。片目だけでもいいから……、だめですか、厳しいなー。
そうしてオニキスが木綿の服を装備したところでようやくジェード君はわたしから離れた。もう。
オニキスは背中からかなり大きな翼が生えているんだけど、木綿の服はちゃんと装備できたみたいだ。サイズも自動調整されてるしこういうところはゲーム万歳。
「しかし便利な体だねー。精神生命体だっけ?」
「うむ、その通り。この世界の上位存在はだいたい半精神生命体であるよ。肉体に縛られないから寿命の概念も薄い。我が仇敵たる竜族などがその代表であるな」
「ふーん、なるほどね。……ん、ジェード君どうかした? なんか光ってるよ?」
おや、ジェード君の様子が…?
18禁? いやいや、ミオが見てたのは腰の下、大腿筋とか見てたんですよきっと。オニキスのSTR6200だから多分すごいんですよ。ええ。




