021 初めてのボス戦
GM「あなたはついに初めてのボス戦に挑みます。持ち物の確認は済ませましたか。装備の点検は良いですか。ダイスの女神さまへのお祈りは済ませましたか。準備ができたならば扉を開けるといいでしょう。あなたは真の」
ミオ「イザユケー」
GM「」
重厚なつくりの扉を開いて中に入る。
遺跡のボスは曲がった嘴を持つおっきな鳥だった。鷲か鷹っぽい? 下半身は獣っぽいけど、何て呼べばいいんだろう。鳥さんでいいのかな。《空を統べる者・レベル220》って視界には表示されてる。いや、空を統べる者なのになんで地下の遺跡にいるんだろう?
このボスの部屋も大して天井高くないし飛べないんじゃ。……ってよく見たら鎖でつながれてるのか。しかも名前の横の状態異常の欄に《封印》てアイコンある。あの鎖が封印なのかな。
それにしても、この鳥さんもしかしてずっと一人でここに閉じ込められてたのかな。だったらちょっと可哀想。ゲームの中で主人公たちを待ち受けているこういう相手って人が来るまでずっと放置されてるのかな。
『ようこそ、小さきものよ』
お、喋った。喋る魔物を見るのは初めてだなぁ。
「どうも、こんにちは」
一応頭を下げて挨拶をしておく。一応ここはこの鳥さんの部屋で、わたしたちは勝手に入ったようなものだから。この遺跡自体が鳥さんの家なら宝箱のアイテムだって盗んだことになっちゃうし。聞いておこうかな。
「ええと、その、わたしたちはこの遺跡にあった宝箱からアイテムとか取り出して持ってきちゃったんですけど、もしかしてあなたのものでしたか?」
もしそうなら返します、とわたしが言うと、鳥さんは愉快そうに笑った。鳥って笑うんだね。
『ククク、面白いことを言うな、小さきものよ。よい、それを手に入れたのは汝らの力だ。持ち帰るがよかろう。それに…………ふむ、最後の一つはここにあるぞ』
鳥さんが片方の翼を持ち上げると、そこに見慣れた宝箱が置いてあった。あれに武器が入っているのかな?
「ありがとうございます。ジェード君、おいで」
わたしじゃ鍵を開けられない。だからジェード君を呼んだんだけど、そういえばジェード君はこの部屋に入ってからずっと動いてないなぁ。鳥さん大きくて怖いのかな。高さだけで2メートルくらいあるもんね。
わたしはジェード君を抱え上げてぽふぽふと何度か叩いた。ようやくジェード君が我に返る。
若干のろのろとした動きだったけど、ジェード君は鍵を開けてくれた。
《システムロール:鍵開け。“変形”スキルで代用ロール。変形スキルレベル+1/2LUC 対 宝箱抵抗値20。判定。61+57-20=98→73 成功。宝箱の鍵は解除されました》
ジェード君の変形スキルレベルが61なので成功率は驚きの98%。ジェード君がいたら鍵なんてなんのその!
そういえば盗賊の固有スキル《鍵開け》とか、この世界の防犯が心配になるよね。
宝箱から出てきたアイテムはやっぱり武器だった。【久遠の閃き・レベル1】。STR+50。付与効果は《飛行大特効:飛行・浮遊系の魔物または浮遊状態の標的に対し命中ステータス3倍、ダメージステータス3倍補正》。
ん、これは……。
『小さきものよ、頼みがある。その弓で我を討ってはくれないだろうか。本来は我を倒した褒美としての武器だが、我にもう生きる意志はないのでな。それを使えば汝でも我を討つことができるであろう』
「え、やだ」
おっと思わず素が出てしまった。でも、何言ってんの、この鳥。
《あなたはこのダンジョンのボスである巨鳥の言い分に腹を立てました。出会ったばかりの相手に殺してくれと頼むなど、あなたの中では非常識きわまりない行為だったからです。いえ、それ以上にあなたにはこの言葉を許せませんでした。昔の自分を見ているようだとあなたは思いました。あなたはかつて自分にかけられた言葉を思い出しましたが、その時とは違う言葉を口にします》
うるさい。人の過去をべらべらと喋るな。
「ごほん、失礼。――嫌ですよ、なんで死にたがってる相手をわざわざ殺さなきゃならないんですか。そんなに死にたければご自由にどうぞ。わたしを巻き込まないでくださいな」
わたしの直截的すぎる言葉に、鳥さんは苦笑したようだった。
『ク、ククク、いやはやこれは手厳しい。本当に面白い、我にそのようなことを言ったのは汝が初めてだ』
実に楽しそうに鳥さんが言う。死にたがりの出せる声じゃないよなぁ。
『しかし我は今封印されている。全能力値が10分の1以下に制限されていて、取ることのできる行動も限られているのだ。自殺もできぬ。できるのはこの部屋への侵入者を迎撃することくらいであろう』
「あれ、わたしたちは侵入者じゃないんですか?」
『汝は礼を尽くした。よって侵入者ではなく訪問者だ』
そんなもんか。頭下げといてよかった。
ボス戦回避!
ボス戦があるとは言ったが闘うとは言ってない。




