011 お仕置きの時間
GM「この小説ってあなた以外の視点少ないし、わたしも細かい描写できないしであなたがどんな容姿してるのかとかあまりわからないですよね」
ミオ「おお、メタいメタい」
GM「ここは前書きだからいいんです」
「うわー、弱いねぇジェード君」
主人ミオの何気ない一言に俺はグサッと傷付いた。
そ、その通りなんですが、はっきり言われると……。
「ああ、ごめんごめん。まぁレベル1だから仕方ないよね」
まぁそうなんですが、スライムって種族はレベルが上がっても全ステータスが1固定なんですよ……。それを知った時主人が落胆して俺を見限らないかどうか、それが心配です。
「そういえばジェード君、何食べるの?」
俺はいままで草とか食べてましたが……。ええ、他の魔物を襲えないので仕方なく……。
でも本当は、最上級食とされている経験値が食べたいです。例えば、あそこにいるラピッドラビットとかの……。
俺が体を変形させて指さすと、間違った方向に主人は納得したようだった。いや、肉も食べられますが、俺が言いたいのは経験値の方……。つ、伝わらん……。
そのあとも、俺がラピッドラビットはもういいですとジェスチャーするも、主人はなんだか違うニュアンスで受け取ったようだ。言葉が通じないのはもどかしい。
その後、主人と一緒に狩りをすることになった。いや、狩りって、逆に俺が狩られると思うんですけど。しかし主人は俺のそんな思いを知ってか知らずかこんな提案をしてきた。それは、俺が矢になり狩人である主人に撃ってもらうというもの。たしかにダイスロール中の事象に追加ロールはできないというこの世界の法則を逆手にとって、矢として命中判定された俺がスライムとしてラピッドラビットに襲い掛かる。これならば、まず間違いなくラピッドラビットの回避判定を躱すことができる。
いや、まさにシステムの穴を突いた見事すぎる作戦なんですが、普通仲間を矢にして飛ばしますかね……?
ああ、俺の主人にはどうやらドSの才能がありそうです。
そして実際にこの方法で主人と俺は数時間のうちに100匹ものラピッドラビットを狩ることに成功した。これだけの戦果をあげられたのはこの作戦の他に、主人の並はずれて高い幸運ステータスが影響しているんだろう。
しかし、残念なこともあった。あれほどうまいと聞いていた経験値は、実際には全く味がしなかった。どころか腹が膨れもしない。これなら草を食っている方がマシだ。
そう、思っていた。
事件があったのは主人がもう帰ろうと言ってきたときだ。主人の独り言を聞いている限りではなんと、経験値は俺に貯蔵されているだけで、実際には使われていなかった。どうりで、味もしなければ腹も膨れないわけだ。
そして、主人が俺のレベルアップをする。生まれて初めてのレベルアップに俺はとてもわくわくした気持ちだったと思う。
――次の瞬間、今までのスライム生で味わったことのない極上の味と体中にあふれる多幸感に、自意識がとてつもなく肥大していく感覚に塗りつぶされるまでは。
この世のすべての快楽を一点に集めたかのような感覚。自身がなんでもできるという全能感。そんなものに俺は一瞬で意識を飲み込まれていた。体の体積が急激に増加したのも自身が強くなったと錯覚させるには十分だった。
また、レベルが10を超えたことで種族特性《物理耐性》を得てしまったのも大きいだろう。これは物理ダメージ計算時に基礎ダメージ+1分のダメージを減点するという能力。この能力があればダメージボーナスのない物理攻撃にはダイスなしでほぼ無敵になる。
そんなこんなで俺の意識はどこまでも増長した。実際にはステータスは種族特性ですべて1のままだったし、HPもMPも大して上がっているわけでもなかったのに。今思えば、俺は本当に馬鹿だった。
そして、思いあがった俺は、あろうことか主人に牙を向けた。この少女を喰らって、俺はさらに強くなると、本当に馬鹿げた妄想を抱いて。
もう少しで彼女のHPを削り切れるといったところで、アレは訪れた。今でも聞くと体の震えが止まらなくなる、トラウマになってしまった《戦慄の調べ》。
あの曲を聞いて、思わず彼女を離した俺に。彼女は笑いかけた。ああ、笑いかけたんだ、ちくしょう。
その笑顔は、とても、とても、楽しそうで。俺には、天使の……、いや、悪魔の笑顔に見えた。
そのあとに何をされたかは、俺は、絶対に口にしない。思いだすこともない。ああ、世の中には死ぬよりも辛いことがあり、主人に仕えること以上に幸福なことなどないのだと、心に、魂に刻み付けられたこと以外は。
《システムメッセージ:ミオさんの属性にドSが追加されました》




