103 水底の王
GM「ついに王様に謁見ですね」
ミオ「んー、どんな人だろうね」
「くふ。はじめましてかのう。わっちはレヴィアという者」
幻想的な海底の街、その中心部にそびえたつ巨大な宮殿。わたしたちはそこに連れてこられた。そして、出会ったのは小さな女の子だった。
背とか、見た目の年齢とかはわたしとあまり変わらないかもしれない。
「ええと、どうも。わたしはミオです。こっちはジェード、オニキス、ハウライトです」
「くふ。こんな海の底までよく来てくれたのう。疲れたであろ」
「いえ、馬車みたいなのに乗ってきただけですし……」
んー、いまいち距離感がつかみにくい。女の子の外見は高価そうに飾りたてた美人な子、って印象しかないんだけど、王って呼ばれてるし周りからは傅かれてる。一応無礼にはならないように気を付けてるんだけど……。
「そう硬くならずともよいよい。わっちは別にとって食ったりはせぬ。数百年来の友人としてでも扱ってはくれんかや?」
数百年来の友って……。こう見えてすっごい年上な気がする。数千歳って言われても驚かない。ま、本人が言ってるんだし、いっか。名前も愛称っぽく呼ぼうかな。
「んー、まぁレヴィがそう言うなら」
「くふ。順応が早いのう。聞きわけがいい者は嫌いではありんせん」
「それで、どうしたの。なんか呼ばれたって言われて来たんだけど」
「うんむ? ウィルから話は聞いておらんかや?」
「会いたいってだけね」
「……ウィル?」
「はっ、ここに」
「来て欲しい理由、来た場合の謝礼、来なかった場合に不利益は生じないこと、来る方法、安全性、拘束時間、どれもあなたに話したわよ。全部確認した?」
「いいえ。我らが王より会いたいと仰せられれば如何なる状況でもお会いするのが――」
「はぁ。あなたの頭の固さはわかっていたつもりだけど……あとで折檻ね」
「はっ、光栄にござりまする」
「もうよい下がれ」
うわぁ。部下に命令出すときは雰囲気変わるなぁ。というか、ウィルさんがどうしようもないポンコツに思えてきた……。レベル700オーバーなのに……。
「ごめんなさい、色々手違いがあったみたいで……。ここじゃなんだし、私の部屋に行きましょ」
「あ、うん。ジェード君たちも連れてっていい?」
「いいわよ」
喋り方すら変わった彼女についていき、一つの大きな部屋に入る。豪奢な飾りつけはされているけど、さっきまでの応接間(謁見室?)みたいなところとは違って居住空間なのがわかる。
「適当にかけて」
「ん、ありがと。ところでレヴィ、喋り方はそれでいいの?」
「ああ、あの口調はくるわことばって言ってね、昔ある男に教えてもらった言葉遣いなの。こっちが素。――しかし常々せがまれてのう。なんでもこちらの方が“キャラが立つ”だとか」
「確かにそっちの方が色っぽいね」
「くふ。そうかや。いやなに、わっちもこれはこれで気に入ってるのでありんす」
その男の人ってプレイヤーかな。でも数千年単位で生きてそうなレヴィが“昔”って言うからには……。
うーん?
「それにしても済まなかったのう。あの様子では威圧紛いのこともしてたのではないかや?」
「んー、わたしは特に感じなかったけど。ジェード君、どうだった?」
「……あそこまで闘気を出されて周囲を手勢に囲ませて鋭い眼光と居丈高な指示……威圧されていると感じないマスターは本当に大物だと思います」
む、なんか馬鹿にされてる気分なんだけど。
「あとであのバカにはきつくお仕置きしておくから。――ふむ、では改めて色々と話させてもらうかのう」
レヴィがわたしたちに語った内容はこんな感じ。
・とても美しい音楽を奏でる人が海辺にいるということで会いたいと思ったこと
・来てくれた場合は海竜王としての謝礼を、音楽も奏でてくれた場合は可能な範囲で一つ願いを叶えること
・人族が海の底に来るというのも怖いだろうし、何より唐突なので断っても一切の不利益は生じさせないこと
・海底まで来る方法についてはレヴィ側で用意し、安全性についても護衛などをつけて保証すること
・来てくれる場合は歓待の宴も開きたいので4日ほどは留まってくれると嬉しいこと
などなど。これだけ聞いてたらジェード君たちも素直に来てくれたよね、多分。まーもし危険になったら《神破撃》……いや、《絶対命令》でもなんでも使ってみんなはちゃんと助けたけどさ。
「いま帰りたいというのであれば、すぐにでも地上へと送るでありんすが」
「いや、いいよ。それより宴とか開いてもらっても、こっちはほんと、素人のしょぼい音楽聞かせるくらいしかできないんだけど」
「くふ。よいよい。この海の底で音楽が話題になることなど数百年なかったことでありんす。如何様なものか、わっちも興味は尽きぬ」
「ほんと、素人だししょぼいよ。がっかりしないでね?」
ジェード君たちに聞かせるくらいならいいけど、わざわざ聞きたいって人に聞かせるのは抵抗がある。……あ、でも、グリードグリムの時とか結構他人にも聞かせてたっけ。今更ながら恥ずかしくなってきた。
「それにしても、そちら。ジェードにオニキス、ハウライトといったかや? だんまりしとらんで何かしゃべったらどうでありんす」
「そう言われても……」
「う、うむ。我は話に聞いていた海竜王とはずいぶん違うからして、戸惑っているのである」
「ぼ、僕はちょっと怖くて……」
「くふ。わっちの悪名も随分と広まっているようでありんす」
「悪名?」
「力が強すぎるというのも考え物よのう。ミオのように気軽に接してくれるものなどなかなかおらぬ」
「ああ」
冒険者の中にもそういう人たち居たっけ。事実が少しずつねじ曲がって伝わったり、先入観で恐れられたり。レヴィなんてレベル1000超えで、その比じゃないか。大変そう。
レヴィは嘲るように笑って言った。
「くふ。改めて自己紹介といくかの。わっちの名はレヴィア。この《東の海》を治める海竜王にして、《水底の悪意》《沈む夜明け》の異名をとる、七天七欲の一、《水天嫉妬》のレヴィアタンでありんす」
というわけで、新キャラ「レヴィアたん」です。これが言いたかっただけです、ええ。そんな理由で「リヴァイアさん」ではないです。
ちなみに英語表記だとリヴァイアサン、ヘブライ・ラテン語表記だとレヴィアタンですね。旧約聖書に出てくる怪物の名前なのでヘブライ準拠で間違ってはいないんですが、WC世界の設定上どうなんだ? という気がしなくもないです。でもそこら辺はふわっと流しておいてください。気にしたら負けです。
あと、くるわことばっていいですよね。個人的には似非っぽい方が好き。




