100 東の海
GM「100話記念の水着回ですよ」
ミオ「サービスシーン満載だね」
GM「もうちょっと体型にメリハリをつけてから出直しましょうね」
ミオ「なにおう」
目の眩む輝く砂浜、抜けるような空の蒼。寄せては返す白波に、喧騒は彼方へ溶ける。時の流れはゆるやかに、ここは地上の天国。その名は《東の海》。
「…………」
場所は《始まりの街》の東側に広がる海。王都からはかなりの距離があるものの、オニキスに乗ればひとっとび。ジェードは犠牲となったのだ。
準備も万端である。
海へと来る前にミオ達は始まりの街へと寄り、ギルド《女神の下僕》の面々に挨拶をしてきている。グリードグリムの事件の際にミオが救った彼らとは、事件の以後も親交がある。ミオのフレンドリストに登録されているのは《グリフィンナイツ》の面々と《女神の下僕》の面々だけであるが。
ミオはこの《女神の下僕》のギルドの一人、レンハに事前に水着などの発注を行っていた。レンハの職業は薬師×裁縫師。今はそれなりのレベルになったらしい彼にかかれば水着の作成程度は朝飯前だとのことだった。
そうして作ってもらったオーダーメイドの水着はチェリーをモチーフにしたフリルビキニ。赤地に白のフリルは扇情的ながらも、どこか幼気な雰囲気を醸し出している。本来はチューブトップのデザインであったのだろうが、胸が控えめな着用者に配慮してか、ずり下がらないようリボン状の肩紐もあしらわれている。胸のラインを隠すようにフリルの量も多めである。露出を減らすべくパレオもあり、ミオはさらに水着の上から着るようにとパーカーも手渡されており、レンハがいかに彼女の露出を嫌ったかがうかがえた。ミオが水着の注文の際「色っぽいビキニで」等と言わなければ布面積の広いワンピース型にしたのは間違いないであろう念の入れようである。
なお、彼は裁縫師として見ただけで相手の体格やスリーサイズが分かるという、極少数の人間にとっては垂涎物のスキルを持っている。グリードグリムの事件の際にミオを見たそのデータを基に水着は作製されたのだが、悲しいかな、サイズはぴったりだったそうだ。半年程度では育たないのだった。どこがとは言わないが。
そうして意気揚々と彼女たちは《東の海》にやってきたのだった。
しかし、ミオは考えるべきだった。
どうして《始まりの街》は海に接するように作らず、わざわざそれなりの距離を離しているのか。港町にした方が街の発展は容易であるし、水平線から昇る朝日が見えるということで《始まりの街》という名前ももっと説得力が出るようになる。
潮風を嫌った、などの理由を考えることはできた。しかし、それよりももっと説得力のある情報が、今、ミオの視界には表示されていた。
《あなたは最高峰のフィールドダンジョン“東の海”へとやってきました。難度500を誇るこのダンジョンは幾多の生命を飲み込み成長を続けています。あなたは果たしてこのダンジョンに終止符を打つ者となるのか、はたまた万人と同じように呑まれるのか》
難度、とはダンジョンの推奨挑戦レベルを示した値である。大体その数値のレベルの敵が出てくると考えればよい。ちなみにミオが今まで挑戦した最高難度は《始まりにして終わりの地》の難度300である。このダンジョンは魔物のレベルが150~350ほどであった。ボスたる始原王はレベル400である。では、この《東の海》の敵の強さは?
「始まりの街でさ、なんで海が近いのに海水魚が料理に使われないのかなって思ってたの。近くに大きな湖があるんだけど、そこでとれた魚がほとんどだった。一回ガッツさんに聞いたことあったんだけど、意味深な苦笑してたっけ。そりゃあこの海の魚取れたらラピッドラビットどころじゃないもんね」
「……僕、東の方には初めて来たんですけど、東って弱い魔物が多いんじゃありませんでしたっけ?」
「うむ。魔素は日光に弱いであるからして、《始まりの街》の周辺の魔物は弱いものが多い。例外は我のような日光を糧とする者だけであろうな」
「じゃあなんでこんなすごい……?」
「うむ……海の底には日の光が届かぬ、ということかな。いやはや、我もこの地に久しく居たものであるが、空を往く我とこの海とは関わりがなかったであるからな。こうして人に身をやつして訪れるとまた、恐ろしい地であるよ」
「わたしはさ、実際に海に来たことなかったからビーチの様子とかテレビとか漫画とかそんな知識しかなかったんだけど。なんかこう、憧れていたのと違う……」
「我が主の記憶にあるビーチとやらは娯楽の一種であるよう。対してこの東の海は自殺の名所であるからな。南や西の海は観光地として機能していると聞いたことはあるが……」
「さすがに今から大陸の南端西端に行くのは辛いもんね。いいよもう妥協しよう」
ミオは砂浜に大きな布を敷いて座り込む。この世界にはレジャーシートなどないためにレンハが気を利かせて持たせてくれたものである。よく気の付く偉い男であった。なお材質は無駄に絹である。
「もともと海に入る予定はなかったしね。岩礁じゃなくて砂浜だっただけでもありがたいや」
「うむ。我もジェードも泳げないであるからして。水中とはまことに面妖なものである」
「僕も水浴び位ならするんですが、さすがに泳ぐことはできないです。水中に入るってことはそれだけ水棲の魔物に食われる可能性が高いから、うかつに練習もできませんし」
そう言いつつオニキスとハウライトも布の上に腰を下ろす。彼らの姿も一応は水着ではあるが双方ともにトランクスタイプでデザインなども明らかに手抜きである。レンハがいかにミオの水着にだけ情熱を傾けていたかがうかがえた。いくらミオの使徒(と彼らが認識している・51話参照)とはいえ、男はおまけなのである。
いまだに気絶しているジェードだけは普段着の暗殺者ルックである。
最近はミオの謎センスのせいでニンジャに見えないこともない。
「まぁおかげで人もいないしのんびりするって目的はかないそうだよね」
ミオはそう自分を慰めてから、ハーモニカを取り出した。スキルは発動せずにただ気ままに思いついたメロディーを奏でていく。海辺で黄昏て音楽を奏でるという情景はなかなか絵になるものがあるが、時刻が昼間の上楽しげな曲なのでなんともしまらなかった。これが夕日の中悲しげな曲であればオニキスとハウライトも涙を流したかもしれない。
そんなこんなでミオの人生初の海旅行は波乱の幕開けであった。
海だけにね、ってやかましいわ。
はい、100話です。やっとここまで来たかあという感慨がありますね。その100話記念でなにかやろうかなって思ったんですが、特に何も思いつきませんでした。
強いて言えば水着回がご褒美ですよね!
誰か私の頭の中のイメージ映像可視化してくれないかな……。
まぁこれからも変わらず投稿していくのでお付き合いいただければ幸いです。




