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第七話 何も言わなくなりました

 学園に帰ってきてから、そこからはもう大修羅場だった。

 引率の先生方はこんなことになるなんて思ってないし(当たり前)かといって死人が出た為、なぁなぁには出来ずに、その結果、生還者全員から聞き取り調査をすることになった。

「ヤバ」

 とは思ったがエリーゼ嬢は流石?に貴族らしく、

「寒いと思ったら、目の前に山小屋があり、そこで寒さをしのぎました。食料もそこにあったので、申し訳ないですが食べさせていただきましたわ。無論一人ですわ」

 と言ってたらしい。

 僕は、エリーゼ嬢の事は全て省いて、あとは馬鹿正直に話した。創造魔法の使い手だったのと、出発時の大荷物で納得してくれた。

 

 それとアンナさんは、はぐれた後に一回学園まで引き返したそうな。次の日は嵐の中、出て行こうとしたところ、周りのみんなに止められやきもきしてたそうな。エリーゼと会った時に大泣きしたんだそうな。

 という話はかなり時間がたった後、聞いた。

 なんだかんだいってエリーゼは慕われているらしい。

 ちなみに他の人たちは目的地にたどり着いたもの、洞窟でやり過ごしたもの、即席のテントをつくったもの、魔法で何とかしたもの、引き返したものがいたらしい。

 魔法がなかったらもっと死人が出てただろうな。

 あと大問題になったのが、「誰が進むと決断したのか」だった。そんなのレオン王子に決まっているのだが、レオン王子はあくまで生徒の一人で決定権はない。だから引率の先生のだれかという話になるのだが、これまた酷いありさまで、殴り合いのケンカにまでなったとかならなかったとか。

 あと、王子の取り巻きの顔ぶれが変わっていた。

 


 先生がいつの間にか何人かいなくなってたり、人の出入りがあって自習の時間が増えたりしたが、ひと月も経つと平穏な学園生活が戻ってきた。

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇

 

 六月のとある日、ミリア嬢とレオンが何やら荷物を運んでいるのを見かけた。

 王族がなんでそんな事をするのかと思ったが、王族といえ学生なんだから雑務をやるのは当たり前のことだ。 というお話を先生方はしていたが、誰も信じていなかった。なぜならそういう雑務をやるときには必ず近くにミリア嬢がいたからだ。

 こういうところを見ると、エリーゼが声をかけていた。

曰く「王族たるもの云々」

曰く「未婚の令嬢と二人きりになるのは云々」

エトセトラ

 今回もエリーゼが二人に声をかけようとしたのを見たので、先に声をかける。

「公爵令嬢様、先生がお呼びです」

 彼女は僕の顔を見て、何かに気がついたように頷いたあと、ありがとうと声をかけて、その場を静かに立ち去った。

 呼び出したはずの先生の名前を聞かなかったので、僕の意図を察したのだろう。

「頑張れ」

 僕は立ち去る彼女に小さくエールを送った。

 ◇ ◇ ◇ ◇

 

 それから数週間たったある日、エリーゼが話しかけてきた。


「あら、平民の方。勉強熱心なのね」

 最近、エリーゼのまとう雰囲気というかオーラがやわらかくなっていたためか、それなりに注目を集めていた。

「ハイ、公爵令嬢様。皆様の見識の高さに追いつこうと、日々研鑽してます」

「あら、それは素晴らしいことですわね。では、王国史学のハインツによる地方統治制度の変遷についての研究はご存じ?」

「いえ、わかりません」

「では、図書館に行きなさい。司書の方に話は通してあります。勉強なさい」

「平民に気を使っていただきありがとうございます」

「では」

 エリーゼが優雅に去っていく。

「あの平民、なにもいえないぞ」とか

「さすがエリーゼ様だ。あの平民、ぐうの音も出てないぞ」

 という言葉が聞こえた。

 

 僕はその言葉に従い図書室に行き、司書の人から本を受け取った。

 パラパラとめくるとメモが挟まっていた。それを解読した。

 

◇ ◇ ◇ ◇

 

『平民の僕に貴族に仕えてる方から色々教えてもらう』

 という名目で、エリーゼから2人の『講師』を紹介してもらった。

 彼等からは貴族社会のアレコレや作法などを教えてもらうことになった。

 というのは半分建前だ。もう半分は僕が学園の情報を流すためである。

 

「成る程。いまそんな事が起こってるのか」

 『授業』のあとの食事会で、レオン殿下のことを教えてあげたら、予想以上に食い付いてきた。

 学園内の情報はブラックボックスになっているらしい。

 そりゃそうだ。子弟だって事細かに親に知らせない。ましてや

 

レオン殿下がうつつを抜かしてます。

 

 なんて言えるわけがないからだ。

「しかし、あの王子がねぇ」

 この話をするとみんな一様に厳しい顔になる。

「意外ですか?」

「まぁ、活発な方だが、そのあたりは分別ついてると思ったんだけどなぁ」

「まぁひとはかわりますからね」

 講師の方はそうかというと、酒をあおった。

 

 幾日かしないうちに講師志願者がなぜか増えた。彼等からは色々と教えてもらった。そして一様に学園の事を聞いてきたので、話した。話すことは同じなので苦痛ではなかった。

 そして最後に必ずこう聞いてきた。

 

「ローレンス閣下のお嬢様はどーしてる」と。

 僕は、

「一年ほど前は注意してましたが、最近はニコニコして黙ってますよ」

 と、答えた。


 講師達の顔が露骨に歪んだ。

 


お読みいただきありがとうございます。


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