~ちぇんそぉまんずよ永遠に~
『二宮さん、今日はゲストに今日まで行方不明だった“ちぇんそーまんず”のデンジローさんが来られました! 二宮さん、あとはお願いします!』
『丸投げするな! あと、言いかた気をつけろ!』
『いや、ありがとうね。神埼ちゃんはよく分かっているハスペック超絶ウルトラスーパー美女だ。二宮が認めなくても俺が認める』
『えっへん!!』
『やりづらいぞ……今日のこの動画……』
久しぶりにメディアに映るデンジローはやや元気のない感じがありつつも彼の持ち味であるバカな感じのキャラに変わりはない。
ただ、神崎が尋ねてきたこの問いに答えないワケがなかった。
『早崎さんとの思い出話をいっぱいされましたが、これからもデンジローさんはちぇんそーまんずで活動されるのでしょうか?』
『えっ……あの……え』
デンジローの頬を伝うそれは溢れるように続く。
『あー! デンジローさん泣いちゃったじゃないですか! 二宮さんなにやってるんですか!?』
『お前が質問したからだろ! デンジローさん……無理はしないで……』
そっと優しくデンジローの背に添えた二宮の手は払いのけられた。
『うっせぇ! 男が気持ち悪い真似をするな!』
『ほら! 二宮さんが余計なことをするから!』
『なんか今日は地獄だなぁ……はぁ……』
『その……こう言ったら変だけど。俺はバカだからアイツがもうこの世にいないことを受け入れられなくて。だけど今も俺の隣にいる気がしてさ。なんていうか、ちぇんそーまんずはずっと続きそうな気がして。誰が「解散」って言ってもさ、俺もアイツもそうするなんて今まで一言も口にしたことがない。だから、それで何ができるってワケじゃないけど……この地獄のなかをどうにか生きたい。二宮、お前はネタ的に今日が地獄なのかもしれないが、俺にとってはマジで毎日が地獄だ。こんなに超絶可愛いキューティープリティービューティフォーな神埼ちゃんと言う相方がいるのだから大事にしろよ』
『デンジローさん……』
『デンジローさん、ありがとうございます! 二宮さん、肝に銘じましょう!』
この番組の出演で何か活動方針が打ちだされた訳ではない。
それでも、デンジローがアキの死と向き合っていることは彼の口からきちんと語られた。そのうえで「ちぇんそーまんず」は続くと言うのだ。
同事務所所属の人気タレント・ポンズはコメントする。
『彼なりの筋を通そうっていうなら、それは凄く素敵な事だと思う。男としては凄く気持ち悪い奴だと思うけど、同じレーベル仲間としては凄く尊敬できるね。私はハロセカを終わらせたけど、終わらせないってしたくなる気持ちも分かる』
芸人仲間として交流がある「恋人じゃない」の木下から。
『うぅ……ぐすっ……うぅ……こんな相方を思う美しい……ぐふっ……うっ!』
泣きすぎてコメントにすらなっていない。
しかし概ね「ちぇんそーまんずは解散していない」と認める風潮にあったかと言える。このもふもふ王国の番組出演から彼はいつもどおり彼の活動をはじめる。
その彼に思わぬ脚光が当ったのはやはりこの話題だろう。
第3回スタンドアップ・スピーチヒーロー。
ここにエントリーしたのだ。ヴィベックスが出場するように勧めたのか、いや、本人の意思で臨んだのかは分からない。ただ、相方の逝去より皮肉にも同情的に注目されている彼だからこそ決勝までいけると踏んだようだ。
彼の絶叫系スピーチはスタンドアップ・スピーチヒーローの前身であったピン芸人チャンピオンシップの決勝でよくみるタイプのもののように思われる。
でも、意外なのはお笑いでそれをやっている感じでないのだ。
『家族を大事にしろぉ!!! 交通事故で死なないように!!! ちゃんと交通マナーを教えてやれぇ!!! 酒を飲んで運転する奴は馬鹿以下だぁ!!!』
ところどころギャグは入れつつも、愛ある説教なる絶叫を繰りだす。
またその出場を盛り上げる出来事がさらに。
『決勝にいったら、今も昼寝をしているアイツに叫ぶ』
デンジローが予選突破時にSNSでこう呟くとそれが瞬く間にトレンドに。
これが戦略なのか何のかは分からない。
でも、世間は彼が決勝に来るのを待っていた気がする。
そして彼はこの大会に臨むにあたって何時時も真顔なのだ。
遂に決勝の舞台に駒を進める。
そして彼は決勝の舞台で腹をくだした。
「デンジローさん!! 出番ですよ!!! 出番!!!」
「ゲ……リ……が……止まらない……」
彼は涙を流してその地獄に屈した。
コメディアンらしいと言えばコメディアンらしい。
でも、それはとても格好のつかない不戦敗に他ならない。
こうして第3回スタンドアップ・スピーチヒーローの話に続く訳ですね。
次号で本作は完結します。そして次号の話は一気に時が飛んでゆきます(#^.^#)




