~じゃ。いってきます。チャンマゲ~
第3回大会が終わってしばらくは一億円を手にした優勝者のことで世間は騒ぐばかり。お腹をくだして決勝のパフォーマンスを棄権したデンジローのことなど誰も気にしない。それは幸いだったかもしれないが――
「そうですね。また4年後にフジサンテレビさんと一緒にやると思います」
クリスタルエデン本社にデンジローと斧崎が向かう。そこで彼らと相対するは第3回スタンドアップ・スピーチヒーローのプロデュースを担当した鳴沢樹だ。
主催者の賢治は賞金を1億にするところからフジサンテレビとの連携などなど携わったというもの、ドロップアウトの製作に本腰を入れたいからと言うので、実質的な責任を彼女へ移行していた。もっとも、この番組内で『パーフェクト・ヒューマニズム』というダンスパフォーマンスをしてみせてはいたものの……
「ん~シード権っていうのはありませんよね。次回も200万払って頂いてから予選出場ということでお願いします」
「ちょっと失礼じゃないのよ。決勝までいったのよ。このコは」
「だったら決勝でちゃんとパフォーマンスして貰わないと。御言葉ですけども、さっきから私たちに対してのお詫びの言葉も全くないじゃないですか? なんでそんな人に失礼だって言われないといけないのですか?」
「喧嘩を売っているのかしら? アナタ?」
「いや、できないものはできないと説明をしているだけです」
「いいよ。また1から出直すよ。でも、それで俺がまた決勝にいったのならば、これから俺が言うことをやってもらおうか」
「何ですか?」
「牧野遥さんという実業家の女性がいるんだ。彼女のオッ〇イを俺に揉ませろ。それができないならお前が彼女のオッ〇イを揉め」
「何でそうなるのよ?」
「本当だよ。何でそうなるの」
なんだかんだ次回も予選から挑むことになったデンジロー。
彼らが部屋からいなくなって鳴沢は溜息をつく。
そして近くのカップに手を延ばす。
そこに彼らと入れ替わるようにしてクリスタルエデン三銃士の中下すずが入る。
「シード権の交渉ですか?」
「うん。よくわかったね?」
「前の職場で親分もそういうのと絡んでいたって言うから」
「どういう絡みだよ……まぁでも次回のPがすずちゃんになるのだっけ?」
「はい。えへへ……できるかな……」
「あのデンジローって男とヴィベックスって連中は注意してみたほうがいいよ。どうも本当の本当にヤバイ意味でヘンテコリンっぽい」
落ち着いた口調が特徴的な鳴沢だが内心はそうでない。
4年に一度のこの祭典。4年後に鳴沢の杞憂は現実のものとなる。
「マジかよ……6人中5人がヴィベックスって……しかもアイツもいるよ……」
「でも、彼らを嫌っている親分でも『面白くなるぞ』って言っていましたよ?」
「親分は部外者でしょうが……アイツ、あのときの約束を覚えてそうで嫌だな」
「あ、そういえばナルさん、このたび決勝進出を決めたポンズさんからナルさんへ手紙みたいなメモ書き頂きました」
鳴沢は中下よりメモを受け取る。
『デンジローから何かあったら私が護る』
綺麗な彼女の字が目に入って思わず鳴沢は叫ぶ。
「ポンちゃん!!! 優勝してぇ!!!」
そして迎えた4年後の第4回スタンドアップ・スピーチヒーロー。
決勝に出場した6名のうち、なんと5名がヴィベックス所属。
そして最終決戦に進出したのは部門が違えども同じ釜の仲間。
ちぇんそーまんず・デンジローV.S.ポンズ(本田恩逗)
その決戦の火蓋が切って落とされる前、マネージャー鮫田は控室でデンジローに「トイレにだけはいかないように!」と釘を打つ。
「馬鹿野郎。今回はそういうことはねぇよ」
「そう言われても……なんかデンジローさんがトイレに入ったら出てこない気がして怖いんですよ……」
「俺は約束したらからなぁ」
「何を?」
「何だっけ? 何だったかな? 忘れたわ」
「忘れたのかよ!」
「へへっ。ツッコミがうまくなったな。もし1億円貰えたら鮫田も一緒にうまいものを食いに行こ~ぜ」
「はい……あの……なんか不思議ですね」
「何が?」
「俺ってマネージャーとしては全く出来が悪い奴だと思うんですけど、大昔からずっとそばにつけて貰えて……こうして大舞台を一緒にできて何だか嬉しいっていうか……何て言うか……へへへ」
「家族だからな」
「家族」
「おう。お前は弟みたいなものよ。俺とアイツが兄みたいな」
「なんか照れくさい……」
「まぁ優勝した暁にはスゲェ旅館でも何でも貸し切りにしてパーッと騒ごうよ。そこで語り合おう。ん、で、悪いけど、鮫田。ここから少し一人にしてくれる?」
「え。はい。じゃあ優勝したあとに」
鮫田が控室から出てゆくのを見てデンジローは鞄から写真立てを机の上に置く。
「おい……みているか? お前。俺さ、牧野さんのオッ〇イが夢だったのにさ、それがもうどうでもよくなって。それでも俺はどこかを目指しちゃっている」
涙がこみあげるがグッとそれを堪える。
「大会が終わったらさ、1番にココに来るよ」
彼はもう傍にいない相方へそっと微笑む。
「じゃ。いってきます。チャンマゲ」
ポンズのパフォーマンスが終わって大拍手が巻き起こる。その音がこの部屋にだって嫌にでも響く。彼はネクタイを整えてドアを開ける。眩しいライトが照りつけるそのステージへと足を進めた――
最後までのご一読ありがとうございましたm(_ _)m
スピーチヒーローを盛り上げようってことでエキシビションで書かせて頂きましたが、思ったよりも凄く力がはいったというか。多くは語りません。語らないほうが良い気しますね。「芸能界になろう」というプロジェクトはまだまだこれから。一緒に笑いあり涙あり楽しんでやってゆきたいと思います……!




