EP−2 錬金術師、遭遇する
ロア「前回のお話の振り返り」
メル「ロアを元の姿に戻す方法を探す為、王都にある大図書館に行く事にした私達。だけど……」
ロア「出発直前で所持金が無い事が発覚」
メル「果たして私達の宿泊先は何処になるのか、稼いだ金額次第で全てが決まる!?」
ロア「頑張って稼いで良い宿に泊まるぞー!」
メル「おー!」
村を出発した2人は王都に通じる街道に出る為、森のそばを通る一本道を歩いていた。
「私にとっては見慣れた風景だけどね」
「メルはいつもこの辺で採取してるの?」
「ポーションの錬成に必要な癒やし草は、比較的浅い所に自生しているんだよ。ただ、癒やし草にそっくりな毒草には注意が必要だよ」
癒やし草はその名の通り傷を治しますが、見た目がそっくりなドーク草には注意が必要です。口にした場合、死にはしませんが、腹痛と吐き気に苦しめられます。
「知ってる。あの2つは本当に紛らわしい」
「一応、キュアポーションで治るけどね」
キュアポーションは解毒以外に、熱を下げる効果もあるので、村ではそれぞれの家に常備薬として置いてあります。
「でもポーション類って、日が経つごとに効き目が落ちて、5日過ぎたら駄目になる」
「だから定期的に新しいポーションに詰め替えるんだよ。上級ポーションなら効き目が落ちないんだけど肝心のレシピ、焼失したから……」
「でもさ、大図書館ならレシピ集とかありそうじゃない?」
「どうなんだろう? あれば良いけど、流石にこれだけは実際に行ってみないと分からないかな」
確かに大図書館なら上級のレシピとかあるかもしれませんが、簡単に見せてもらえるのかな? そう言っている間に街道に着きました。
「街道が見えてきたね。あ、立て看板だ、なになに…西は王都ブラド、東は帰らずの森…ん? 何だろう?」
「了解、西の方角だね。東の帰らずの森って、確か立入禁止にって、メルどうしたの?」
『わぅ…誰かたすけて……』
「ロア、今なんか声が聞こえなかった?」
「聞こえる、向こうの方からだ」
ロアが示した方向には森が広がっているだけで、声の主は見当たりません。
「見える範囲に居ないとなると、奥かな。ロア、予定変更して森の奥を探すよ」
「了解。メル、もしかしたら声の主はケガをしているかも。微かにだけど血の匂いがする」
「このままだとマズいかも……(フラン、お願い。声の主の元まで導いて)」
(了解です、マスター。魔力による捜索を開始します……前方10m先に反応有り)
「(10m先だね、ありがと、フラン)ロア、周りに注意して探そう」
「匂いは正面から来てる、そのまま真っ直ぐ進めば見つかるはず」
周りに注意しながら私達は森の奥に向かいました。ちなみにフランの事は王都に着いたらロアに説明するつもりです。
「少し進んだけど、明らかに濃くなってきてる。近いよ」
「ロア、ポーションを用意しておいた方が良いかな」
「待ってメル。ポーションが飲めるのかどうか確認してからの方が良い。酷いケガの場合、飲めない可能性もある」
「あ、そっか、そうだよね。もし飲めない場合はどうしたら?」
「その場合はポーションを直接、患部に掛ける」
『わぅ…誰かいるの?』
またあの声が聞こえてきました。今度はしっかり分かるくらいの声です。
「ロア、すぐ近くだ!」
「ボクもはっきり聞こえた。メル、そこの茂みの向こう側!」
私達が茂みを分け入ると、そこには前脚から血を流し、ぐったりしている生き物がいました。見た感じは狼のように見えますが……
「見つけた! ロア、状態は前脚からの出血! それ以外のケガは見当たらないよ」
「それならポーションで治るはず! メル、急いでポーションを!」
(その傷なら治療の成功率は100%、後遺症も残りません)
「狼さん、今からこのポーションであなたのケガを治すからね」
『わぅ……ありがとう』
「じゃあ治療を始めるよ。最初は前脚のケガから治していこうか。まずポーションを掛けるよ。少し痛みがあるけど一瞬で終わるから我慢してね」
私は狼さんの前脚にポーションを掛けました。すると、みるみる傷は治っていきました。
『わぅ! 痛い!って、あれ? 本当に一瞬だった!』
「次は残ったポーションを飲んでね。体力が回復するよ」
ポーションは治療効果は高いのですが、問題は味です。一言で言うと、苦いのです。
「メル、軽い出血のケガでも軽視せずに最善を尽くす、これは良い心がけ。軽い傷を放置して感染症になり、完治に時間が掛かった事があるって聞いた事がある」
『わぅ…お願い、飲ませて』
「苦いから、口に入れたら一気に飲んでね。その方が楽だから」
私は残りのポーションを狼さんに飲ませました。瞬間、狼さんの尻尾がブワッと膨らみ、思いきりにらまれました。
『ガルル……なにこれ! 苦いって聞いて覚悟はしていたけど想像以上の苦さだよ!』
「ごめんね。でもケガと体力、回復したでしょ。薬の効き目を優先したら、味が犠牲になったの」
「ちょっと匂い、嗅がせて。くんくん……ヴッ、なにこれ! 癒やし草の匂いはするけど、濃縮している分、青臭さが酷い。メル、これはポーションと言えるのか?」
おかしいなぁ、治療は成功したはずなのに何故かロアにドン引きされました。これは……ポーションの改良、考えておかないと。
「ポーションはまだ改良の余地ありっと……さて、狼さん、痛みの具合はどうかな?」
『わぅ、痛みはもう大丈夫。けど、もう二度と飲みたくないな。それはそうと君達、誰? どこから来たの?』
治療に集中していたせいか、自己紹介をするのをすっかり忘れていました。
「自己紹介が遅れたね。私はメル、錬金術師だよ。この森の北にあるトール村生まれで年齢は12歳。よろしくね」
「ボクはロア。メルと同じトール村生まれの12歳。薬師をしている」
『リーフだよ。君達は僕の事を狼だと思っているようだけど、僕は狼じゃなくて神獣、神獣フェンリルなんだ』
「「え!?」」
フェンリルは伝説の神獣と呼ばれており、滅多に姿を見せないと聞いた事はあります。その伝説の神獣であるフェンリルが今、目の前に居るのです。
「なんで神獣、いや、神獣様がこんな場所で何しているんですか!?」
『する事も無くて暇だから、森の中を散歩をしよう思って。それで、散歩も飽きて、途中から森の中を走り回っていたら、木の枝に前脚を引っ掛けてケガして助けを求めたら偶然、君達が来てくれた』
「「本当、何やってるの神獣様!?」」
(神獣とは言え、まだ幼い子供。まだまだ遊びたい盛り。しかし発見したのがマスターで本当に良かった)
『様つけはいらないよ。リーフで良いし、敬語もいらない』
とてもフレンドリーな神獣様です。とりあえず名前で呼んでも良いとの事なので、リーフと呼ぶ事にしました。
「ところでリーフ、この後、私達は王都ブラドに向かっているんたけど、あなたさえ良ければ私達と一緒に行く?」
『うーん……良いのかな……2人の旅に僕が加わると迷惑になるのでは……』
「迷惑じゃないし、メンバーが多いと旅が賑やかになる」
『ありがと。じゃ、しばらくお世話になる。よろしくね』
メンバーが増えると、冒険者パーティみたいでなんか嬉しくなっちゃいます。
「では改めて、王都に向かってしゅっぱーつ!」
「『おー!ワン!』」
フェンリルのリーフを仲間に加えた私達は森を出て、元いた分岐まで戻ってきました。
「王都は西方向、こっちね」
「後は道なりに行けば王都入場門が見えてくる」
『ガルル……! 気をつけてメル! そこに何かいるよ!』
街道を少し進んだ、その時でした。リーフが森の方に向かって威嚇しだしたのです。
「ロア! リーフ! 警戒態勢! いつでも攻撃出来るようにして!」
「了解!」
『ワン!』
ガサガサ……ガウッ! 森から1頭の狼が飛び出してきました。
Battle! vsフォレストウルフ×1
「フォレストウルフだよ! すばしっこいからこっちの攻撃が当たりづらいよ!」
「ボク達はどうすれば良い? 指示をお願い!」
「私が魔銃で気を引くから、ロアは投げナイフで攻撃!」
「了解! 刃に仕掛けをしてあるから、当たればどうにかなる」
敵は1頭だけですが油断禁物です。ロアのナイフが当たれば勝機は見えそうですが、彼女はいったい何を刃に仕掛けたのかな? さて、次はリーフへの指示ですが……
「リーフはロアと攻撃して!」
『わう! 分かった!』
役割を決めたら、行動開始です。初めての戦闘、頑張るぞー!
「まずは敵の詳細情報から……鑑定!」
鑑定は品物(ポーション、薬草等)以外に生物にも使う事が出来るんです。ちなみに戦闘前に簡易ですが鑑定を掛けていました。簡易版の場合、種族と特徴しか判別できません。
「鑑定結果は……なるほどね。特に注意する点は無しっと。ロア! リーフ! 毒とかは持っていないよ! 後ロア、そのナイフ、刃に何らかの薬が塗ってあるよね?」
「バレちゃった? そうだよ。実は刃に弱い痺れ薬を塗ったんだ」
「なるほど、薬の効果でフォレストウルフを動けなくするんだね」
『わう……僕その匂いあまり好きじゃない』
「ガルル……ガゥ…」
どうやらリーフは薬の独特な匂いが苦手なようです。あれ? フォレストウルフの様子が少しおかしいです。
「ロア! リーフ! チャンスだよ! みんなで攻撃! 一気に決めるよッ!」
「ボク特製の痺れ薬の効き目、その身をもって知ると良いよ」
ヒュンッ………ドスッ! ロアの投げたナイフがフォレストウルフの胴に当たり、
『わう! 邪魔をするなッ!』
ザシュ! リーフは前脚の爪でフォレストウルフの顔を引っ掻き、
「これで終わりだよ」
「ギャウッ!」
ドパンッ! 魔銃から放たれた銃弾はフォレストウルフの腹に命中、そのまま動かなくなりました。
Battle Win! 狼の牙、魔石を獲得!
(ねえ、戦闘始まった時の音声さ、あれフランでしょ)
(あれ、ダメでしたか? 少しでも戦闘が盛り上がれば良いなと思ったのですが)
(ダメじゃないけど、あの私、王都に着いたらフランの事、ロアとリーフに話そうと思う)
(私は賛成です。問題事は早めに解決するに限ります。私が説明しましょう)
(本人からの説明が一番信用が出来るからね。お願い出来る?)
(了解しましたマスター、その件は後ほど。それより、今は戦利品の確認をした方が良いかと)
そうでした。狼の牙と魔石の鑑定をしないといけません。さて……結果はどう出るかな?
「メル、また考え事?」
「戦利品の件でね。魔石は分かるけど、この狼の牙……ロア、今から鑑定するけどあまり期待はしないでね。牙だから価値、ほとんど無いかも」
「それ以前にボクは薬師だから、薬以外はさっぱり分かんない。錬金関係はメルに任せた」
錬金術師、只今鑑定中。果たして結果は……?
「とりあえず鑑定結果だけど……」
「どうなったの?」
「結論から言うと、牙に価値は無かったよ。魔石は小さいから100トラルと言ったとこかな。牙は錬金素材に使えそう」
予想通り、牙は価値がありませんでした。ですが魔石の方は100トラルの価値がありました。
「王都に着くまでにあと900トラルは稼いでおきたいかな。それはそうとロア、ナイフを投げる前からフォレストウルフの様子が変だったけど……」
「それ、恐らく刃に塗った痺れ薬のせい。薬の匂いで、フォレストウルフは気分が悪くなった」
「鼻が利くのが仇となった訳ね。あれ? ロアも狼の獣人だよね? 平気だったの?」
フォレストウルフは狼だから鼻が利くのは当然ですが、ロアとリーフの場合はどうなのかな?
「ボクの場合、狼だけど人でもあるんだ。確かに普通の人より鼻は利くけど、半分しか利かない」
「リーフはどう?」
『僕は神獣だから、毒とか麻痺にはならないよ』
リーフは状態異常にならない……強いなぁ。早く大図書館に行って上級レシピを探さないと。って、この気配は……
「敵の気配がするよ! 2人とも先制攻撃する用意を!」
「分かった!」
『任せて!』
Battle! vsフォレストウルフ×3
フォレストウルフが3頭ですが、相手の動きは前の戦闘で分かっています。まず負ける事は無いでしょう。
Battle Win! 狼の牙×3、魔石×3を獲得!
(今回は戦闘の結果だけ表記させていただきます)
(フラン〜? 戦闘描写、全カットしたの?)
(そうしないと尺が足りませんから)
フランの言葉の意味は分かりませんが、急いだ方が良いって事は理解しました。少し早く街道を歩いていると、前方に大きな街とお城が見えてきました。
「見てロア! 前方に大きな門が見えてきたよ!」
「メル、あれが王都の入場門。身分証があれば無料で通れるけど無い場合、入場料金を支払わないといけない」
門の前には20人くらい並んで入場手続きをしていて、横には魔力で動く掲示板があり現在時刻とお知らせ等が表示されています。
「メル、掲示板に入場料が表示されているよ。えっとね、なになに……1人につき100トラルだって。ちなみに従魔は無料」
「じゃあ、私とロアの2人で200トラルだね。でもリーフはどうしよう?」
「リーフについては、冒険者ギルドで従魔登録するって言った方が良い。薬草採取で森に行ったらケガをして動けなくなっていた所にボク達が通りかかって、手当てをしたら懐かれたと説明すればOK」
「それは名案ね! それで行こう!」
ロアと話している内、私達の番が来るまで後10人程になりました。
「案外スムーズに進むね」
「商隊の馬車が居ないからだよ。商隊が居ると自分達の順番になるまで時間が掛かるんだ」
「次の方、こちらにどうぞ! おや? 可愛らしいお嬢ちゃん達だ。王都ブラドにようこそ! お嬢ちゃん達は身分証はお持ちかな? 持っていないのなら1人につき100トラル、支払ってもらうけど良いかな?」
王都の入場門を守る衛兵のお兄さんは全身鎧を装備してましたが、兜はしていないので顔がはっきり見えました。
「2人分の入場料200トラルです。身分証は無くて冒険者ギルドで発行してもらおうと思っています。後この狼…リーフと言いますが、この子の入場料はどうなりますか? 従魔登録もしたいので」
「ギルドの身分証……なるほど、冒険者カードを発行してもらうのか。後、その狼はお嬢ちゃんの従魔かい? 従魔は入場料は無料だよ」
「ありがとうございます。ちなみに冒険者ギルドには、どう行ったら良いですか?」
「冒険者ギルドは目の前の中央通りを真っ直ぐ進んだ先、噴水のある広場だよ」
「ありがとう、衛兵のお兄さん!」
「衛兵のお兄さんに感謝」
「元気なお嬢ちゃん達だな! 良い1日をって、もう昼一ノ刻だけどな!」
「ありがとう! ロア、ギルドは真っ直ぐだって」
「予定より遅れた、少し急ごう」
予定では昼十二ノ刻に着く予定でしたが、到着が少し遅れてしまったようです。
「冒険者ギルド、どんな所なんだろう?」
「村に来る行商人から聞いた話だけど、依頼の受注以外に魔物の部位とか、魔石の買取をしている他にギルドの中には酒場もあるらしい」
酒場があるって事は……100%酔っている人がいるよね。大丈夫かな……何事もありませんように。
メル「無事、王都にとうちゃーく!」
ロア「お疲れ、メル」
メル「さて今回、後書きコーナーにゲストのお客様をお呼びしてます」
ロア「ん? お客さんって誰なの?」
メル「もう来てます、こちらにどうぞ!」
リーフ『わおーん! メルに呼ばれて来たフェンリルのリーフだ! 今回はよろしく頼むぞ!』
メル「と言う訳で、今回のゲストはフェンリルのリーフです!」
ロア「ぶふーっ! ちょっと待てメル! 神獣様を呼んだのか!」
メル「だってこれから私達と一緒に旅するんだし、自己紹介も兼ねてと思って」
リーフ『そうだよロア。これからはパーティの仲間なんだから、堅苦しいのは無しで行こう』
ロア「まあ、リーフがそれで良いなら……」
メル「さてリーフ、いきなりで悪いんたけど、次話の予告をしてくれるかな?」
リーフ『任せてワン! さて、無事王都に着いた僕達は冒険者カードを発行してもらう為、ギルドに行く事に。果たしてメルは無事、冒険者になれるのか? と言う訳で次回、錬金少女と獣人少女のドタバタ冒険記EP−3、錬金術師&薬師、冒険者登録する』
2人「私達の冒険、次回も見てください!」
リーフ『僕の活躍にも乞うご期待ワン!』




