EP−1 錬金術師、薬師と旅立つ
メル「前回のお話の振り返りだよ!」
ロア「えっと、確かメルが錬成で事故を起こして、エリクシールのレシピらしき物を見つけて」
メル「ロア君が薬の調合中の事故で狼の獣人少女になったんだよね。その夜、解決策を探すため、王都の大図書館に行こうって事になったんだよね」
ロア「本当にメルには感謝の気持ちでいっぱい」
メル「友達を助けるのに理由はいらないよ。というわけで今回は王都に向け、旅立ちます! 準備は念入りに、行くよロア!」
ロア「⁄(⁄⁄•⁄-⁄•⁄⁄)⁄行こう! メル!(面と向かって言われると、凄い恥ずかしいよ)」
メル「いざ王都に向け、出発!」
ロア「おー!」
夜が明けて日が差し始め、トール村の1日が始まる。時刻は朝五ノ刻、起きている村人もいるが、ほとんどの村人達がまだ眠りについている頃、錬金工房では主であるメルが目を覚ました。
「んんっ…よく寝た。さて、顔を洗って雑貨店に納品する分のポーションを錬成して、ついでに旅の分も作っておこう。それにしても……」
私のベッドで気持ち良さそうに眠る狼の獣耳少女のロア。ふさふさ耳をピクピク動かし、時々動くもふもふ尻尾を見ていると、なんだか悪戯したくなっちゃいました。
「ちょっとぐらい、良いよね……(耳をモフるだけだから…)」
ロアの耳に触れようとした瞬間……
「何してるの?」
寝ているはずのロアが起きていました。ビックリした! 急に目を開けないでよ!
「みぎゃっ!? お、おはよう、ロア。ブランケットがズレてたから直そうとしただけよ」
「おはよう、そうだったのか。ボクはてっきり、メルが寝起きイタズラを仕掛けてくるのかと思ったけど、思い過ごしだったみたいだ。それにしてもメルは早起きなんだね」
セーフです! なんとかバレずに済みましたが、やはり狼の獣人だからか、感覚が鋭いのかもしれません。
「ごめんね。起こしちゃった? 私はだいたいこの時間に起きて依頼の品を錬成したり、後はレシピの研究とかしてる」
「ボクはこの時間、まだ寝てるかな。まだ眠いけどもう起きる事にするよ。メル、洗面所借りても良い?」
「良いよー。洗面所は脱衣所に入ってすぐ左側にあるから。あと、タオルは棚に置いてあるから自由に使って」
「わかった」
さて、ロアが顔を洗っている間にポーション作り最終工程、サクッと終わらせてしまいましょう。その後は朝食も準備しないと。
「さて、ポーションはほぼ完成してるし、後は不純物を濾して容器に詰めて……これで良し」
「どうしたの? あ、ポーションを錬成していたのか。しかし凄いな、ここまで濁りが無い高品質なポーション、ボクは見たこと無い」
「それは何回も濾して不純物を取り除くから。1〜2回濾しただけでは濁りは綺麗にならないし、それに手間を掛けた方が良い品質になるし、効果も高くなるから、私は絶対に妥協はしない。一部の人はそうじゃないらしいけど」
旅の行商人から聞いた話ですが、大都市には品質の悪いポーションを高値で売っている錬金術師がいるそうです。
「暮らしを良くする為の錬金術なのにね。その技術を悪用する一部の錬金術師のせいで、真面目に頑張っている錬金術師が肩身の狭い思いをしているかと思うと、本当に腹が立つよ」
「ボクもお父さんから聞いた事あるよ。一部の薬師がそういう事をしているって」
一部の人達のせいで錬金術師、薬師の信用が無くなる……悲しいですが、これが現実なんです。今は都市部だけで済んでますが、いずれこの情報はトール村や周辺の町にも間違い無く伝わるでしょう。
「厄介なのは、知らずに犯罪に関わっている事なんだよね。基本的に私、錬成の依頼は信用が出来る人からしか請けないから可能性は低いけど」
「ボクの場合は、お客さんにどんな薬が必要か話を聞いてから調剤するから、ある程度は防げるけど」
さすがに気まずいと思った私は、話題を朝食のメニューの話に変える事にしました。
「ごめんねロア、変な空気になっちゃって。さ、気分を変えて朝食にしよっか。メニューはパンとスープだよ、簡単な朝食で悪いけど」
「気にしなくて良い。泊めてもらった上に朝食まで……メル、本当にすまない」
感謝されるのは嬉しいのですが、パンは錬金術で作ったやつだし、スープはお湯を注ぐだけで出来るお手軽スープの素を溶かしただけの手抜き朝食なんです。この後旅立ちの準備をしないといけませんので。
だから心の中で謝っておきます。ごめんねロア。今度、美味しいものごちそうするから。
「ごちそうさま。さて、出発する前にまずは装備の確認だけど、ロアは大丈夫? 自分の装備品持ってる?」
「朝食ごちそうさまでした。装備? 採取の時、使っているナイフが家にあるから今から取りに帰ってついでに雑貨店で買い物してから来る」
ロアがナイフを取りに帰っている間に、私は装備の確認をして待つことにしますか。ちなみにこんなに感じです。
頭部:無し
上部:錬金術師のブレザー
[説明]チェック柄の蝶リボンタイがキュート。魔法耐性高め。メル専用装備。
下部:錬金術師のスカート
[説明]ブレザーに良く似合うチェック柄のスカート。ブレザーと同じく魔法耐性高め。メル専用装備。
脚部:錬金術師のブーツ
[説明]メル専用装備。魔法耐性有り。耐水性も高く速乾性バッチリ。
武器:魔銃フラガラッハ
[説明]錬成で偶然出来た、意思を持つ魔銃。【応答者】の名を示す魔銃で、魔力を銃弾にして射撃する。銃弾の威力はメルが魔銃に流す魔力量で変化する。メル専用武器で愛称はフラン。
持ち物∶ミニショルダーポーチ
[説明]普通のミニショルダーポーチ。ポーションと財布、その他色々な物が入っている。
「上着とスカート、ブーツは錬成で作ったから店売りの既製品より性能良いんだよね。そして武器だけど、これは偶然錬成出来た物だから二度と作れないなぁ。喋る魔銃だけど」
普段着から錬金術師の服に着替えたメルはホルスター付きベルトから魔銃を出し、整備のため作業机に向かった。
「今回は王都への旅だから、いつも以上に整備しないとね。魔物とかいるし」
『肯定。ですが心配は不要です。この私がいる限りマスターには指一本触れさせません』
「ありがとうフラン。頼もしいけどあまり人前で喋っちゃ駄目よ。銃が意思を持っている事自体、ありえないから」
『承知しました。ならば私から一つ提案を。マスターと私しかいない状況では従来通り話しますが、それ以外の状況では念話で話をする。それなら問題は無いと思われます』
「念話ね…えと、やり方は確か……」
(フラン、私の声、ちゃんと届いてる?)
(届いています。さすがマスター、完璧です)
「メル、お待たせ。今戻ったよって、もう準備終わってる。しかも武器まで。その銃って確か錬金術で作ったんだよね?」
念話の練習中にロアが戻って来ましたが、両手に大量のナイフを抱えていますが、何に使うのかな?
「偶然が重なって出来た物だからね。それよりその大量のナイフだけどさ、何に使うの?」
「戦闘の時、魔物に投げて使う。さっき雑貨店で買ってきた。10本1セットで定価300トラル、2セットで合計600トラルだけど、420トラルで良いって。採取用のナイフだけではちょっと不安だし」
「珍しいね。あの雑貨店、秋の収穫祭の時しかセールしないのに」
「投げナイフの在庫一掃セールだって。あとポーションが品薄だった」
「注文あったからね、出発する時に納品するから。一応、ロアの装備の確認だけさせて」
「ん、良いよ」
ロアの装備を確認したのですが、どう見てもこれから王都まで旅するとは思えないものでした。
頭部∶無し
上部∶布の服
[説明]普通の布で出来た服。
下部∶ショートキュロット
[説明]ごく普通のショートキュロット。
脚部∶レザーショートブーツ
[説明]革で出来た普通のショートブーツ。
武器∶投げナイフ(本数∶20)
[説明]鉄製の投げナイフ。市販品なので、威力は低い。
持ち物∶レザーウエストポーチ
[説明]普通の革で出来たウエストポーチ。傷薬と財布、その他色々な物が入っている。
「ロア、もしかして冒険用の装備ってその投げナイフだけ?」
「うん。王都に着いたら本格的に揃えるつもり。ところでメル、この後の予定はどうするの?」
「まず母屋に行ってお母さんに王都まで旅する事を言った後そのまま出発かな。今は朝六ノ刻だからこの時間ならもう起きてると思うし。悪いけどロア、施錠するから先に外に出てくれるかな」
「了解」
私は工房の入口に施錠すると、ロアと母屋に向かいました。
「あ、部屋に灯りが点いてる。ルイーズさん、もう起きてるんだ」
「そだよ。朝五ノ刻に起きるからね。今は多分、食堂にいると思う。さあロア、中に入って」
「お邪魔します」
母屋に入り、食堂のドアを開けると美味しそうな香りが漂っていました。そして予想通りお母さんは朝食の用意をしていました。
「お母さん、おはよう!」
「あら、おはようメル。ロアちゃんもおはよう。ところであなた達2人は朝食は済んだの?」
「おはようございますルイーズさん。昨日はお世話になりました。朝食はメルが作ってくれました」
「そうだったの。ところでメル、今日は採取? 錬金術師の服を着て魔銃も装備しているし。いつもの森かしら?」
「ううん。今日は採取じゃなくて大図書館まで行こうと思って。あそこならロアを元の姿に戻す方法があるかもと思って」
(ロアちゃんを元の姿に戻す方法、私は知っているけど、ここで教えたらあの子達の成長のためにならないわね。よし、決めた。あの子達を旅に出そう。王都までなら朝八ノ刻に出れば、昼十二ノ刻を少し過ぎた頃には着くはず。幸い大図書館に行く気だし)
少し考えたお母さんから出てきた言葉は意外と前向きでした。
「王都の大図書館に? 確かにあそこなら何か分かるかもしれないわね。道中、魔物に気をつけて行きなさい」
「え? 私はてっきり、王都に行くのを反対されるかと思って……」
「反対するわけないじゃない。メル、あなたの強さは元Aランク冒険者の私が保証するわ。自信持って行ってきなさい」
その言葉で背中を押された私は、改めて王都に旅立つを事を決心しました。
「お母さん! 行ってきます! 王都、大図書館へ! ロア、王都までの旅だけどよろしくね!(フランもサポートお願いね)」
(お任せください、マスターとその友に降りかかる困難は私が払いましょう)
「傷や病の治療は任せて。軽いケガならボクの手持ちの薬で治せるよ」
「ありがと、ロア。さあ、王都大図書館に向かって、しゅっぱーつ! お母さん、後このポーションを雑貨店の店主さんに渡しておいてほしいの」
「了解、渡しておくわね」
母屋を出た私達は、村の出入口である門に向かいました。なお、お母さんも私達の見送り、という事で門まで一緒に来てくれました。
「お! 誰かと思えばルイーズさんと、メルちゃんじゃないか! あと隣の狼の嬢ちゃんは旅人さんかい?」
私達に話しかけてきたのはボーマンさん。元Cランク冒険者で引退後、村の門番をしています。
「その狼の娘、ロアよ。ちょっとしたトラブルでこの姿になってるけど」
「フリードん所のか! まあ、何があったかは聞かないけどよ。んで、今から森に採取に行くのか?」
「ううん。今日は王都にある大図書館まで。じゃあ、お母さん、ボーマンさん、行ってきます!」
「おう! 道中気をつけろよ!」
「王都に着いたら、まずは冒険者ギルドを訪ねてこの手紙を職員に見せなさい。冒険者カードを発行してもらえるはずだから。王都大図書館は冒険者カードが無いと入館できないから」
「冒険者ギルドの職員にだね。分かったよ」
メルとロアが出発した後、村の入口ではメルの母であるルイーズと門番のボーマンが話をしていた。
「行ってしまったな。親としては心配じゃないのか?」
「あの子なら大丈夫よ、強さは私が保証するわ」
「まあ、元Aランクのあんたがそう言うのなら大丈夫なんだろうな」
「王都で一泊して明日帰って来るからね。2人も出発したし、私は家に帰るとしますか」
「俺は朝番の奴と交代して寝るわ」
「お疲れさま」
ルイーズ、ボーマンの2人はそれぞれ自宅、詰所に帰って行った。一方、旅立った2人は……
「改めて確認しよっか。まずは都に着いたら冒険者ギルドでカードを発行してもらって」
「大図書館に行き、元の姿に戻る方法を探す。その後はボクの装備を整える」
「王都で一泊して、次の日に村に戻る予定だよって……あ」
「どうしたの?」
「旅の費用、貰ってない……」
「メルは錬金術師だよね? ポーション錬成して売れば良いのでは?」
「それだぁ!」
「……(メルは時々ポンコツになるから、ボクがしっかりしないと)」
なんとここで旅の費用を貰っていない事が発覚。現在の所持金、0トラル。
前途多難な旅が今、始まる。
メル「ロア、やはり初めての旅は緊張するね」
ロア「大丈夫、旅に必要な物は一通り持ってる」
メル「ちなみに何を持って来たの?」
ロア「テントと寝具、それから食器類に薬等。ちなみにメルは?」
メル「私はポーションと、錬成術式を刻んである簡易錬金釜。ご覧のとおり、見た目は小さいツボだよ」
ロア「簡易っていうから、本格的な錬成は出来ないんだ?」
メル「そうなんだよ。これで錬成出来るのはポーション等の簡単な物だけ」
ロア「そうなんだ。まあポーション類はたくさんあっても困る事は無いからな。ところでメル、今回の旅だけど、向こうで泊まったりするの? それとも日帰り?」
メル「ん? 王都で一泊してから帰る予定だよ」
フラン(それはそうとマスター、金策はどうします? 宿を取るにしても資金が必要ですが)
メル(そこは大丈夫。お金の件は冒険者ギルドでなんとかするから)
フラン(了解しましたマスター。出来るだけ早く解決する事を推奨します)
ロア「どうしたの? なんかうわの空だったけど」
メル「あ、うん。大丈夫だよ、お金の件でちょっと考え事をね。宿の宿泊費はなんとかなりそうだから、心配はいらないよ」
ロア「そう? あ、そうだメル。次のお話の予告だけど、ボクがやっても良いかな?」
メル「おっけーだよ! じゃあロア、次回予告いってみよう!」
ロア「王都に旅立ったボク達だけど、宿に泊まるお金が無い。メルは大丈夫と言うけれどボクはすごく心配です。と言う訳で次回、
錬金少女と獣人少女のドタバタ冒険記、EP−2、錬金術師、遭遇する」
2人「私達の冒険、次も見てください!」




