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EP−3 錬金術師&薬師、登録する

メル「前回のお話を振り返るよ」


ロア「王都に行く為、村を発ったボク達。その道中、森で傷ついていた狼を見つけ、治療したんだ」


メル「そしたらその狼さん、なんと神獣フェンリルだったんだよね」


ロア「それだけでも驚きなのに、ボク達の仲間になってくれるなんて」


リーフ『大げさだな、僕はメルとロアの2人を気に入ったから仲間になったんだ』


メル「面と向かって言われると照れるかも⁄(⁄⁄•⁄-⁄•⁄⁄)⁄」


ロア「ほらメル、照れてないで。この後はどうするの?」


メル「そうだった。まずギルドで冒険者登録、その後は宿の確保だよ!」


ロア&リーフ「『了解! ワン!』」


メル「じゃ、本編行くよ!」

 王都に到着したメル達は王都中心、噴水広場に向かっていた。


「ここが王都のメインストリート、中央通りだね。道幅が広い、馬車がすれ違えるくらいある」


 中央通りは馬車がすれ違えるくらいの道幅があり、走る馬車の中には人が乗っています。行商の馬車には商品が積んであるので見慣れていますが、人が乗っているのは初めて見ました。


「私、村に来る行商の馬車は知っているけどさ、人が乗っている馬車は見たことが無いよ。ねえロア、もしかしてこの人達って、奴れ……」


「違うぞメル! これは乗合馬車で中にいるのは乗客だ。 馬車の横と前に行き先が書いてある木札があるのが見えなかった?」


「あ、本当だ」


 ロアに注意され、良く見ると確かに乗合馬車で、行き先を示す木札には[循環・左回り]と書かれていました。そして道の反対側にはもう一輛、馬車が停車していて木札には[噴水広場経由・王城前広場行]と書かれてます。


「王都は広いから、こういった移動手段があるんだね」


「料金も王都内100トラル均一で便利。メル、せっかくだし冒険者ギルドまで馬車で行ってみる?」


「さんせーい! 予定より少し遅れてるからここは急ごう!」


 私達は道の反対側に停車している、噴水広場経由の王城前広場行きの馬車に乗る事にしました。


「御者のお兄さん! 噴水広場までどれくらい掛かるのかな?」


「噴水広場は2つ先の停留所だよ。嬢ちゃん達、馬車に乗るのかい? まもなく出発だよ、乗るなら急いでくれよ」


「2人です、噴水広場までお願いします」


「了解、料金は2人で200トラルだよ。ところで、嬢ちゃん達は何処に行くんだい?」


「冒険者ギルドです。この子を従魔登録してもらおうと思って。はい、2人分お願いします」


「ついでにボク達の冒険者登録もしておこうかと」


「確かに200トラル、受け取ったよ。嬢ちゃん達、1つ忠告だ。ギルドに行くなら夜は避けた方が良いよ。飲んだくれ共がやれ打ち上げだ、やれ宴会だって馬鹿騒ぎしてるから」


 それは私も気にしていた事です。酔っ払いは遠慮が無いですからね、グイグイ来るんですよ。


「今の時間帯ならどうですか?」


「うーん……依頼達成の報告とかで混んでる可能性があるけど、大丈夫だと思う」


「空《す》いていると良いなぁ……」


「それだけは行ってみないと分からない」


 今現在の時刻は昼ニノ刻、話している内に馬車の出発時刻になりました。


「お待たせしました! 噴水広場経由、王城前広場行き乗合馬車、出発します!」


 御者のお兄さんの合図で、馬車は走り出しました。車内は空いていて、私達とあと2人のお客さんが乗っていました。


「乗車頂き、ありがとうございます。この馬車は噴水広場を経由して、王城前広場まで参ります。お降りの方は鐘でお知らせください。次は中央通り北停留所です」


 馬車の乗降口のそばには鐘が備え付けられていて、降車する停留所が近付いてきたら鐘を鳴らして御者さんに降りる事を知らせるんです。


「まもなく中央通り北です。宿屋、黒猫亭にお越しの方はここでお降りください」


 馬車は1つ目の停留所を通過し、冒険者ギルドの最寄り停留所、噴水広場に向かっています。


「次は噴水広場です。冒険者ギルドにお越しの方は

次でお降りください」


「降りまーす!」(カンカン!)


「次、噴水広場に停車します」


 馬車の窓から顔を出し、前方を見ると大きな噴水がある広い公園が見えてきました。


「ロア、見て! 凄い大きな噴水だよぉ!」


「本当だ! 夏場の暑い時、涼しくて良いな」


「嬢ちゃん達、ここが噴水広場だよ。正面にある三階建ての建物が冒険者ギルド、トラキア王国本部だよ。お忘れ物無きよう、ご注意ください」


 御者のお兄さんが指差す先には、一際大きな建物が。


「「御者のお兄さん、どうもありがとう!」」


「どういたしまして。またのご利用をお待ちしてます」


 目の前には冒険者ギルドの大きな建物があり、入口の両開き扉を開けて入ると、中では依頼達成の報告をしている冒険者、どの依頼を受けるか悩んでいる冒険者パーティが居たりとかして、結構混雑していました。


「ここが冒険者ギルド……人がいっぱいだね」


「依頼達成の報告とタイミングが重なったかな。とりあえず、比較的空いている3番窓口に並ぼう」


『わう……僕、ここの空気あまり好きじゃない』


(マスター、間違えても絶対にレア素材や希少な品は売却しないように)


 リーフは人混みと、併設している酒場から漂う微かな酒精の香りが苦手なようです。まあ、私も苦手なんですけどね。


(フラン、とりあえず今回は登録と、フォレストウルフの魔石の買取をお願いするつもりだから安心して)


(なら良いのですが)


「次の方、どうぞ」


「冒険者登録をしたいのですが……って、こ、子供!?」


 呼ばれて窓口に来たのですが、受付の職員さんはどう見ても子供にしか見えないんだけど。


「トラキア王国冒険者ギルド本部にようこそ! 私は窓口を担当するエルザです! よろしく! 後それと、子供じゃないです!」


「「ごめんなさい」」


「わかればよろしい。って、冒険者登録? あなた達が?」


「お願いします」


「ケガとか多い職業だから、お姉さんとしてはあまりオススメはしないかな?」

 

「メル、ルイーズさんから手紙を預かってなかった?」


 そういえば、お母さんにギルドに着いたら職員さんに手紙を渡すよう言われていたのを思い出しました。 


「あ、そうだった。エルザさん、この手紙を読んでほしいんだけど。お母さんが冒険者ギルドに着いたら職員の人にこの手紙を見せなさいって」


 私はお母さんが書いた手紙をエルザさんに渡しました。


「あなたのお母さんから? 分かったわ。読ませてもらうわね。なになに………えっ!? ルイーズってまさか…ごめん、少し待っててくれる?」


 手紙を読み進めるエルザさんですが、驚くと同時に椅子から立ち上がり、ギルドの奥の部屋へ行きました。


「ねえメル。ルイーズさんの名前が出た瞬間なんだけど、受付の凄く驚いてた」


「お母さんが元Aランクの冒険者だったからかな?」


「エルザ君、手紙を持って来たのはこの娘達かい?」


 ロアと話していると、奥の部屋からエルザさんともう1人、とがった耳の背の高い綺麗な人が出てきました。


「そうです。私も差出人の名前を見た瞬間、驚愕しましたよ。まさか元Aランク冒険者の娘さんとは」


「すまない。時間を取らせたね。私はミディール、ここトラキア王国冒険者ギルド本部のマスターを務めている」


「私はメル、錬金術師です」


「ボクはロア。薬師をしている」


 お互い自己紹介を済ませると、エルザさんが椅子を二脚、持って来てくれました。


「どうぞ」


「「ありがとう」」


「さて、まずはメルと言ったか。そなたの母親、ルイーズは元気にしているか?」


「はい。毎日家事と鉱山の中にある採掘場の見回り等をしています。お父さんは今も遺跡の調査、研究の為に世界中を旅しています」


「そうか。それにしてもだ、あの跳ねっ返りにこんな可愛らしい娘がいたとは驚愕だ。相変わらず研究一筋だな、グレンは」


 お母さん、跳ねっ返りと言われてるけど一体どうしたらそう呼ばれるようになったのかな?


「ボクの両親も元冒険者なんだ。父さんがフリード、母さんがマリアだよ」


「ちょっと待て。フリードとマリアだって!?」 


「父さんと母さんの事、知ってるの?」


「冒険者なら知らない奴はいない。ルイーズ、グレン、フリード、マリア。Aランクパーティ[栄光の剣]の事はな。まあ、その話は後にして……」


 お父さんとお母さん、そんな凄かったんだ。そしてフリードさん、マリアさんと冒険者パーティ組んでたんだ。


「で、話を戻すがメル、ロア。2人共、冒険者登録をしたいんだな?」


「はい。大図書館に行きたくて」


「あそこか。だが、冒険者カードを持っていたとしても簡単には入館出来ないぞ。最低でもCランク冒険者にならないとダメだ」


 知りませんでした。冒険者カードがあれば入れると思ってましたけど、そう簡単にはいかないようです。


「ロア、どうしよう?」


「まあ、どっちにしても冒険者登録はした方が良いな」


「そうだね。どうやらCランク冒険者にならないとダメみたいだし。ミディールさん、冒険者登録、お願いします」


「承知した。だが、まず登録する前に2人の力量が知りたい。裏にある訓練所で模擬戦をするからついてきてくれ」


 私達の実力を知るため模擬戦をする事になり、私達はギルド裏にある訓練所に向かいました。


「着いたぞ、ここが訓練所だ」


 訓練所はギルドの裏にあり、周りは石壁で囲われて天井は無く、上を見るときれいな青空が広がっています。


「あの、模擬戦をすると言ってましたけど、相手がいないのですが……」


「何を言っている? 相手なら君達の目の前にいるだろう?」


「「えっ? まさか!?」」


「そう、この私が相手をしよう。今回の模擬戦の目的は2人の力量の把握だ。案ずるな、私は一切攻撃はしない」


 ミディールさんは一切、攻撃は仕掛けてこないらしいです。強者の余裕と言った所でしょうか。


「ロア、こっちは出し惜しみは無し。最初から全力で行くよ」


「待ってメル、いきなり全力は危険だって。最初は軽く仕掛けて様子を見よう」


(ロアの意見に肯定ですマスター。この者、只者ではありませんね)


「作戦会議は終わったかな? ではそろそろ始めようか! エルザ、試合開始の合図を頼む」


「分かりました。じゃあ、メルちゃん、ロアちゃん、2人共用意は良いかな?」


「「大丈夫です」」


「ギルマス、準備の方はどうですか?」


「問題無い、始めてくれ」


「分かりました。では模擬戦、試合開始!」


 Battle! vsミディール


「先程言った通り、私は一切攻撃はしない。さあ、お前達の力を見せてみろ!」


「まずは速攻! ラピッドショット!」


 魔銃フラガラッハの魔弾の種類の中で一番速いのが今撃ったラピッドショットです。


「ふむ…なかなかやるな。だが今の攻撃、速いだけで威力は弱い」


「避けられた! やっぱり見破られてたかぁ…」


 ラピッドショットは本来、素早い魔物の動きを鈍らせる為の魔弾で速い反面、威力が弱いんです。あの魔弾は簡単に避けれないはずなんだけど。


「メル、代わって。次はボクがやるよ」


「次は薬師の嬢ちゃんか、遠慮は要らん。君の全力を見せて欲しい」


「ボクの場合は投げナイフと、身体能力を活かした体術くらいしか出来ないよ」


「構わんさ。元々、身体能力を見る為の模擬戦なんだ。全力で来てもらわないとこっちが困るのでな」


 ロアは狼の獣人だから身体能力は問題無いけど、魔銃の最速射撃、ラピッドショットを避けてるからなぁ。


「仕方ない。あまり人には使いたくないけど……鑑定!」


 鑑定は品物だけではなく人にも使う事が出来ます。掛けた相手が自分より格上過ぎると、鑑定が失敗する事もあります。さて、鑑定結果はどうなったかな?


【名前】ミディール

【種族、職業】エルフ、冒険者ギルドマスター

【能力】物理攻防力:C、魔法攻防力:A


「やはりエルフだったんだ……そうだよね。魔法攻撃と魔法防御の能力が強すぎる。やっぱり相手が格上だったから鑑定が一部弾かれてるね」


「メル、君は鑑定が使えるのか! 錬金術師が鑑定持ちとは……おめでとうメル、君は合格だ」


「え!? 私がですか!」


「ああ。私が避けたとはいえ、あんな速い攻撃手段を持っているんだ、自分の力に自信を持て」


「ありがとうございます!」


 やった!合格を頂いちゃいました。でもロアの模擬戦が終わるまでどうしようかな?


「ロア、待たせて悪かった。さあ、模擬戦再開だ。それとメル、君は合格したんだからエルザの所で待っていると良い」


「分かりました! ロア、頑張って!」


「ん。メルに続いて合格する」


 ロアは太腿に装着しているナイフホルダーから投げナイフを数本取り出すと、ミディールさんに向け投げると同時に凄い速さで駆け、回し蹴りを仕掛けました。


「投げナイフは牽制《けんせい》で本命は蹴りの一撃か。って、ぬおっ!?」


 放たれた回し蹴りをミディールさんは避けたのですが、蹴りの風圧でミディールさんは態勢を崩しました。


「貰ったよ、ボクの勝ちだ」


 態勢を崩したミディールさんの首にナイフの刃を突き付けると……


「参った、降参だ。結果はロア、君も合格だ。おめでとう、これで晴れて冒険者の仲間入りだな」


「「やったね(な)! ロア!(メル!)」」


「よし、では模擬戦はこれにて終了とする。エルザ、ギルドに戻ったらすぐに登録手続きを進めておいてくれ」


「分かりました。ランクはどうしましょう? 通常通りFランクスタートで?」


「いや、1ランクスキップしてEランクスタートで頼む」


「Eランクスタートですね。ではメルちゃん、ロアちゃん。手続きを進めるから受付窓口まで来てね」


「はい! ミディールさん、ありがとうございました」


「ありがとうございました」


「ああ、こちらこそ。私は一旦自室に戻って着替えてから行くよ。では後ほど窓口でな」


 そう言うとミディールさんは手をひらひらとしながら、ギルド職員専用の入口から中に入っていきました。


「ロアお疲れさま。とりあえず濡れた布で顔拭きなよ。砂ぼこりが凄いよ」


「ありがと、メル。ん、さっぱりした」


「よし、じゃあ窓口に行こっか」


「そうだな。エルザさんを待たせるのも悪いし」


 私達は訓練所を出て冒険者ギルドに戻ってきました。中に入ると私達に向かってエルザさんが手招きしています。


「お疲れ様! メルちゃん、ロアちゃん。冒険者カードが出来てるから窓口まで来て」


 受付窓口に行くとエルザさんが一枚のカードを私達に渡してくれました。


「これが冒険者カードだよ。カードには名前とランクの他に、魔物の討伐数とか記録されているけど、それはギルドの職員しか分からないからメルちゃん達は気にしなくて大丈夫だよ」


「ありがとうございます」


「メル、1つ目の目的、冒険者カードを発行してもらう事は出来た。でも2つ目の目的、今日の宿泊先を探さないといけない」


「あ、そうだったよ! えっと、現在の時刻はっと……」


 現在の時刻を確認すると、昼四ノ刻でした。この時点で日が少し沈み始めてるので急がないといけません。


「もう昼四ノ刻だよ! そして所持金だけど……ロア、ここに来るまでの乗合馬車の乗車料金に支払ったから0トラルなんだ」


「どうするのメル? 今から冒険者の依頼なんて無いし、このままだと今夜は外で一夜を過ごす事になるぞ」


「なんだ? 宿に泊まるお金を持って無いのか?」


 そう言って出て来たのは着替えを済ませたミディールさんでした。


「はい、一応トール村から王都まで来る途中、フォレストウルフを何頭か討伐しまして、魔石と狼の牙ならあるので良ければギルドで買い取って欲しいのですが」


「分かった。今から査定するから魔石と牙を出してくれ」


「お願いします」


 私はフォレストウルフの魔石と狼の牙をミディールさんに渡しました。


「査定が終わるまで、そっちの酒場で夕食でも食べながら待っててくれ。食事料金は私が持とう。新たな冒険者が誕生したお祝いだ」


「「ミディールさん、ありがとうございます!」」


 査定終了まで酒場で夕食を食べて待つ事になり、料金はミディールさんが支払ってくれる事になりました。後は魔石と牙の買い取り金額が幾らになるのかです。魔石は私が鑑定しているので金額は分かってますが、狼の牙だけはいくら鑑定に掛けても、用途不明、買い取り価格も不明なんです。


「どうか牙に価値がありますように」


 現在の所持金、再びの0トラル。果たして運命の査定結果は?


 次話に続く! 

メル「なんか色々と疲れた気がする……」


ロア「そりゃ模擬戦をした後だからね」


メル「それより査定結果がどうなるかだね。魔石の価値は分かってるんだけど牙は正直、どうかなと思ってる」


ロア「目標は1000トラルだよね?」


メル「そう。王都の安い宿屋だと1人500トラルくらいで泊まれるから」


ロア「大丈夫なのか? その宿屋、なんか色々と心配だぞ。警備の面とか、寝具の質とか」


メル「ポーションを売却する予定だから、買い取り金額にポーションを売却した金額を合わせると、それなりの宿に泊まれるよ」


ロア「全ては査定結果次第か……」


メル「という事で今回は私が次話予告するよ。無事冒険者になれた私達の前に立ち塞がる宿泊費という壁。私達はその壁を乗り越える事は出来るのか? という事で次回、錬金少女と獣人少女のドタバタ冒険記、EP−4、錬金術師、商談する」


2人「私達の冒険、次回も見てください!」


フラン(ちなみに王都入場料と乗合馬車の料金、計400トラルは王都に行く途中で出会った魔物の研究をしている人がフォレストウルフ4頭の買い取り価格として支払ってくれました)


メル「フラン、補足ありがとう」


フラン(どういたしまして。ところでマスター。リーフの従魔登録、次回こそちゃんとしてください)


メル「次は必ず登録します」


リーフ『楽しみに待つワン!』

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