第78話「足掻き」
オレに向かってにこやかな笑みを浮かべているレインを見て、オレは思った。
たしかに、液体窒素ならオレが放った火炎砲の消火は簡単だろう。
でも、窒素の沸点は水よりも低いはず。
それもとても低い。
なのに、なぜ、あの龍の頭は沸騰しなかったのか?
答えは2つ。
一つめ。
あの龍の頭は液体窒素ではなく、他の気体を液体化させたものである。
二つめ。
液体窒素が沸点に到達する前に火炎砲が火炎砲自身の発火点より下回ったため。
(ちなみに発火点とは、簡単に言うと、物が自然発火する温度である。)
んー、一つめの方が現実的なんだけど、SS級の魔法って言われると、二つめもありえるんだよなぁ。
それに、あの液体の周りにすごい冷気出てるしなぁ。
一つめの方はあんな量の液体が作れるとも思えんしなぁ。
ん、でも、酸素ならあれくらいの量いけるか?
でも、酸素の沸点ってどのくらいだっけ?
オレは科学者でもないし、覚えてないな。
んー、わからん。
一人で考えごとをしていると、龍の頭が降り注いできた。
降り注いできたという言葉を使っているからして、もちろん数は多い。
見たところ、20は超えてるかなぁ。
さっきのどっちかの考えが合ってるとしたら、龍の頭に当たったら、ヤバいだろうな。
なので、必死ですべて避けることにする。
もちろん、魔法を使わずにすべて避けきれるとは思ってないので、鋼属性の魔法を使ってだ。
そうこうして、すべてを避けきった。
と、思ったとき、伸びてくる龍の首から違う龍の頭が伸びてくる。
「えっ、ちょっ、無理ゲーだろ。」
思わずオレの口からそんな言葉が漏れる。
だが、諦めるな、魅月との模擬戦でもう諦めない、どうにかして最後まで足掻くと誓っただろ!?
そんな考えがオレの頭を支配していく。
そして、その考えがオレの頭を完璧に支配したとき、オレは諦めずに龍の首から出た龍の頭を避け始める。
だが、結局、オレは最後には勝負は諦めてしまった。
なぜかって?
今、ジャンプして空中にいるオレを龍の頭たちが360度囲んでいるからさ。
それも、ものすごい数で。
あ、コレ、絶対に終わったわ。
この勝負は負けたわ、オレ。
でも、最後まで足掻くととりあえずは誓ったし、負けるまで足掻くとしますか。
そう考えたとき、龍の頭たちが一斉にオレのもとへと加速しながら向かってくる。
それを見てオレは半ばやけくそで魔法を放つ。
こうして、オレの、この模擬戦に決着が着くまでの短すぎる足掻きが始まった。




