第66話「オレの比じゃない」
不意に銃声を聞きつけてオレは走り出す。
すると、先ほどまでオレのいたところに弾が飛んできた。
あっぶねェ。
今、走り出してなかったら確実にヘッドショットもらってたな、オレ。
そしたら、1発でオレの負けだったわ。
いやぁ〜、マジで危なかったわ。
だが、今の狙撃でどこから撃ってきたかがわかった。
2km以上離れたところにある、あの一際デカい木。
おそらく、あそこから撃ってきたのだろう。
あれなら狙撃手が狙うのにも、もってこいだしな。
そうとわかると、オレはあのデカい木に駆け出した。
もちろん、肉体強化の魔法を使いながらだ。
すると、魅月は向かってくるオレを狙撃してくる。
もちろん、すべてが頭や心臓といった箇所に飛んできている。
そして、それはことごとくオレの剣に防がれ続けている。
が、魅月の狙撃は止まない。
それどころか、撃つこと自体が加速しているくらいだ。
こうなってくると、魅月を仕留めるのは少し厳しくなってくる。
だって、魅月は正直に言うと、天才だから。
オレも才能があるとかなんとか言われているが、オレは天才でもなんでもない。
ただ少し強いだけなのだ。
だって、本物の天才は、魅月は、オレなんかの比じゃない。
いつもの魅月の性格や動作を見て、まったくそんなふうに見えないかもしれないが、魅月は本当に本物の天才だ。
それは今も魅月の放つ弾丸同士の間隔が狭くなっていることからもわかるだろう。
普通の狙撃手は狙撃の成功する確率を高めるために、1発ごとにきちんと狙いを定める。
が、魅月は違うのだ。
たしかに魅月の狙いは完全に相手の頭か心臓を狙っている。
完璧な狙いをさだめているのだ。
でも、魅月が狙いを定めるスピードは異常に速すぎる。
それはもう、早撃ちガンマンのごとく。
だから、その魅月の早撃ちはすでに狙撃手という枠組みの中で、もはやゲームでいうバランスブレイカーぐらいの立ち位置にいる。
だから、魅月は天才と呼ばれ、魔法の名家とも言われている沢村家で最も大事にされていて、名のある魔法関連の家の人間では聞いたことのない者などいないほどの有名人なのだ。
そして、そんな魅月にオレは近づいている。
そして、魅月の放つ弾は先ほどよりも、速く、そして鋭くオレの頭を貫こうとしている。
だが、そんなものは当たり前だ。
狙撃手に近づくとは、狙撃の確率を上げる行為そのものなのだから。
「って、おっと!?」
あっぶねェ。
今、魅月の放った弾がオレの頭を掠った。
オレが途中からフルスピードで走ってなかったら今頃、余裕でヘッドショットだったな。
だが、マズい。
今、魅月の放った弾がオレの頭を掠ったってことは、オレの反応速度がすでに魅月の放つ弾の速度に負けているということだ。
しかも、まだ魅月との距離は500メートルと少し。
確実にまだまだ魅月の狙撃の精度は良くなっていく。
そうなったら、オレがヘッドショットされるのも余裕でありえる。
このままじゃ、マズいな。
そう感じながら、オレは魅月に向かって走り続ける。




