第63話「皮肉」
斬って、斬って、斬り続けた。
だが、それは唐突に終わりを迎える。
なぜなら、『鎌鼬』による攻撃自体が止んだからだ。
それはなぜか?
そんなものは簡単にわかる。
霧島桜の魔力が切れ始めたのだ。
だから、それはオレにとっては唐突な出来事であり、霧島桜にとってはわかっていた出来事だった。
それだからだろう。
霧島桜はオレと同じように肉体強化の魔法をフルで使い、自身の剣技を鋭く、速く、強くした。
そして、オレと互角の剣技を見せ、互角に切り結ぶ。
だから・・・
オレの顔は歪みきっていた顔は更に歪んだ。
それは愉悦に満ちた狂人の顔。
戦闘狂とも言うべき狂った人間たちの顔だった。
だから・・・オレの顔はウロボロスにいた戦闘狂たちと同じ表情であった。
オレはウロボロスを蔑み、嫌悪したはずだったのに、オレ自身が同じような状況下にいる。
・・・皮肉なものだ。
自分が自らの父の腕を吹き飛ばし、命まで奪い去ろうとしたヤツらと同じような人間だったなんて。
なんて、考えは完全に理性が残っていたら考えていたかもしれない。
が、今のオレは徐々にこの戦いを単純に楽しみ、荒ぶっていった。
今ではまさに荒神にも勝る勢いだろう。
だから、オレと霧島桜との差は次第に大きくなっていった。
それは肉体の性能、剣技の技術、魔法の能力、すべてがヤツよりも高く、速く、鋭く、強くなっていったからだ。
これぞ、いわゆるスポーツなんかでよく聞くゾーンというものだろうか。
その状態になっていくオレは、心地良さを感じていた。
が、不満が、鬱憤が、悲しみが募っていった。
さっきも言ったように、オレと霧島桜の差は開いていったのだ。
そのことでオレと霧島桜の勝負は圧倒的なワンサイドゲームになっていた。
これもまさに皮肉というものだ。
自身が強くなっていくなっていき、目の前にいる強敵と互角に切り結ぶことに狂喜しながらも、強くなり過ぎて逆に圧倒的な差となり、強くなる度に反比例して悲しくなっていく。
なんでだよ!?
なぁ、なんでだよ!?
なんでこうなっちまったんだ?
オレはただ、純粋に戦いを楽しんでいただけなのに、逆に楽しめば楽しむほどつまらなくなっていく。
意味がわからないこのことに鬱憤を募らせながらもオレは剣を振り抜き、長い長い楽しかった、どこからかつまらなくなっていった時間を自身の手で終わらせた。
自身の手でこの戦いを終わらせたオレはすでにおかしくなっていた。
そう。生まれ変わったのだ、完全に。
まさに筋金入りの本物の戦闘狂に。
憎むべきウロボロスの連中と同じ人種に。
が、生まれ変わっていたのはオレだけではなかったようだった。
模擬戦が終わった後の闘技場にいた霧島桜も、戦闘中のオレと同じ表情をしている。
──そして、オレと霧島桜はこれから何回も何回も放課後に模擬戦をして、純粋に戦闘を楽しんでいった。
そして、オレと霧島桜は毎日、愉悦に満ちた表情で帰っていった。
だから、そのときのオレは全く気付かなかった。
いや、気づけなかったのだ。
──オレを見る周りの眼が徐々に、だが確実に、ヤバいものを見るような眼に変わっていくことに。
周りのヤツらが、オレを恐怖して離れていっていることに。




