第62話「狂人」
帯電鋼鉄は、霧島桜の前方に出ている竜巻に向かっていき、衝突した。
そして、どんどん竜巻を後ろへと押し出していく。
一瞬だけ押し返されたような気がしたが、とうとう竜巻に消し去ったようだ。
が、炎波が消えて、見晴らしの良くなった地面には誰もいなかった。
そのため、帯電鋼鉄は思っいっきり空を切る。
そして、消滅する。
・・・後ろに後退していた霧島桜の数十メートル手前で。
なぜ?
いや、さっき一瞬だけ押し返されたときに離脱したのだろう。
・・・あそこで追撃していれば今頃は勝てていたものを。
そのチャンスをオレは完全に逃していたようだ。
ったく、情けねぇ。
中学の頃のスパルタ教育を受けていたオレなら絶対にしなかった失態だ。(爺さんのペナルティが怖くてな!)
というか、それにしても、あの状況から諦めることなく、危機を乗り切るとは、正直言って驚いた。
さすがにここまでとは、賞賛を送りたくなるな。
・・・が、それは戦闘の後にしなくては。
今はコイツとの戦いを楽しんで、楽しんで、楽しみきって最後の最後にちゃんと勝たなくちゃいけない。
でも、それにしても、
「あァ、おもしれェ。」
オレは笑った。
自分でもわかるほど、歪んだ、そして、凶悪な笑みで。
さすがにこれは少しみんなから引かれるなと思いつつも、顔の筋肉が言う事を聞かず、嗤う。
そして、数十メートル先にいる霧島桜を見据える。
そして、飛び出す。全速力で。
さっきの『鎌鼬』なんてもう関係ない。
今から、オレは、ただ愉しむだけに戦うのだ。
勝とうが、負けようが、関係ない。
・・・はずだ。
って、ハッ!
今、強敵との出会いで少しおかしく、いや、かなりおかしくなったが、なんとか理性を取り戻した。
が、オレの突撃は止まらない。
いや、止まりたくない、とオレ自身が言っている。
仕方ねぇな、と思いつつも、表情は凶悪な笑顔で飾られている。
剣を握る右手には力がこもり、魔眼を使用している右眼は紅く煌めく。
そして、オレは愉悦に満ちたその顔で、剣を振り上げる。
そして、次の瞬間、思いっきり振り抜く。
もちろん、それは霧島桜の持つ刀に阻まれ、霧島桜を傷つけることはできない。
そして、オレを『鎌鼬』が襲ってくる。
が、それらを肉体強化の魔法をフルで使い、最高の速度、最高のパワーで迎え撃つ。
オレに迫る『鎌鼬』を斬る。
何回、何十回も、何百回も、斬る。
オレは斬り続けた。
そう。斬り続けたのだ。
まるで鬼神のごとき、気迫のこもった斬撃を放ち続けた。
オレが斬ったものの中には、霧島桜の刀も混じっていただろうが、そんなことは今はどうでもいい。
とにかく、この時間が続いていればいい。
この狂喜の時間が。オレにとって楽しいと感じるこの時間が。
だが、それは唐突に終わりを迎えることになる。




