第6話「修羅場?」
「魅月さん。これには深い事情がありまして。」
「なら、それを話してよ。」
お姫様と模擬戦やったら、惚れられました。
なんて、言えるわけねぇだろ!
どうしたらいいんだ?
なんか、オレが悪いわけでもねぇのに修羅場っちまった。
黙っているオレの代わりに口を開いたのはレインだった。
「私が彼を好きになってしまったので、彼のお爺様に許可を頂いたのです。」
なにやってんだよ!悪化するだろ!?
「そう。なら、慧から誘ったとかじゃないんだ。なら、いいや。」
あれ?意外と魅月の怒りが収まった。
もっと修羅場が激しいものになると思っていたオレは、驚きを隠せなかった。
こうしてなぜか、修羅場が収まり、部屋の中で自己紹介をすることとなった。
「私、沢村魅月。よろしく。」
「レイン・ヴェルナーと申します。これからよろしくお願いします。」
いやー、仲良くなれてよかった
と、思ったが勘違いのようだ。
なぜそう思うかというと、二人ともニコニコはしているのだが、目が笑ってない。
なんか、いつ相手を殺すかを考えているような殺し屋のような目だ。
女ってこえー。
と、オレはマジで思った。
何分か経ったとき、魅月が明日のことを言い出した。
「ねぇ、慧。明日のデートのことなんだけど。駅前にあるショッピングモールに行こうよ。」
「おう。了解。」
「すみません、デートってなんのことか教えてくださいませんか?慧さん。」
デートという言葉を聞き、話に入ってくるレイン。
「レイン。デートってのはな、男女が仲つむまじく一緒にいろいろなところへ行ったりすることだ。」
「そのくらい、知ってます。」
「じゃあ、なんで?」
「私はなぜ魅月さんとデートするのか聞いているんです!」
「それは、お前の案内に行くために必要で…」
「なぜ必要だったんですか?」
「そ、そりゃあ、魅月が、私を1日ずっと放っておくならデートして、って言うから。」
「そうですか。」
「わかってくれたか?」
「じゃあ、来週の土曜、私とデートして下さい。」
「え?なんで?」
「今言った魅月さんの言い分で受けたなら、明日1日放っておかれる私とデートしてくれますよね?
そもそも、女の子にデートに誘われて、なんで?って返すのは男性としてどうかと…」
「たしかにそうだな。すまん。
で、来週の土曜か。予定は入ってないはずだからOKだ。」
「じゃあ、来週の日曜も私が貰う。」
急に会話に入り込んできた魅月は、そう言って一方的にオレの日曜日の予定を埋めてきた。
こんな感じで、なんとなく馴染んできたレインと魅月は夕飯にはすっかり仲良くなり、レインが魅月の作った料理を褒めまくっていた。
「お先にお風呂いただきます。」
そう言って、浴室へ行くレイン。
その姿が見えなくなると、すぐさまオレにピタッとくっつく魅月。
「どうしたんだ?魅月。こんなにくっついて。」
「特に理由はない。こうしてたいだけだから。」
「そ、そっか。」
なんか、アレだな。
今日はよく女の子にくっつかれるな。
うれしいよ。うれしいけども、なんか照れるな。
それから何分かしたら、魅月は座っているオレに上から抱きついてきた。
「み、み、魅月さん?どうしましたか?」
「さっきと同じ。こうしてたいだけ。」
やばい。魅月の息遣いが耳元で聞こえる。
なんか、さっきよりもドキドキする。
これ、魅月に聞こえてんじゃねぇの?
そこからまた数分後、魅月の顔が目の前にきた。
「ねぇ、慧。キス、してよ。」
そう言って、オレの目の前で目を瞑る魅月。
そんな魅月の唇とオレの唇が触れ合う直前、
「なにしてるんですか?」
レインの声がして、動きが止まった。
舌打ちをして、オレから離れる魅月。
そして、レインのところへ行き、小さな声でなにか言っている。
なになに。
今度、私の邪魔したら生きてることを後悔させるから。
って、怖っ!?
それを笑顔で言える魅月、怖っ!?
魅月さんの恐ろしさを今、ハッキリとわかったオレ。
そして、魅月は敵に回したくはないなとも思った。
その魅月が浴室に向かい、完全にいなくなると、今度はレインがピタッとくっついてきた。
「慧様、キスしましょう?」
「…は?ちょっと待て。お前までどうしたんだ?」
「どうしたんだ、って、好きな人とキスしたくなるのは当然ですよね?」
「そうだけど。今日会ったばっかのやつだぞ?」
「愛とは、過ごした時間では決まりませんよ。」
「いや、でも…」
「それとも、嫌、なんですか?」
それは卑怯だろ?
だって、嫌、なんてこの状況じゃ言えねぇんだから。
ったく、このセリフに弱すぎんだろ、オレは。
「嫌ではないよ。」
「じゃあ、していただけますよね?」
返事はせずに、頷く。
そして、レインは目を閉じながら、レインの手で固定されているオレの顔に顔を近づけてきて…
オレの唇に触れた。
でも、なんか唇にしては硬いような…
おそるおそる目を開くと、魅月の手がオレとレインの顔の間に割り込んでいた。
「ねぇ、レイン。なにしてるの?」
「見てわかりませんか?キスですよ。」
「なんでそんなことしてるの?」
「好きな人にキスしたくなるのは当然ですよね?」
「そうだね。」
「なら、邪魔しないでください。」
「レインが私の邪魔をしないと誓うなら。」
二人とも、すごい不穏なオーラを纏ってらっしゃる。
オレは怖かったので、風呂場へ逃げることにした。
慧がお風呂に入ってから数分の間、私たちは同じような言い争いを続けていた。
が、私が疑問に思っていたことを口にして、言い争いは幕を閉じた。
「ねぇ、レインはどうして慧のことが好きになったの?」
そう。私はとても不思議でならなかった。
どうして、レインは慧のことが好きになったのか。
確かに慧は、一般的に言うイケメンだろう。
でも、一国のお姫様が一目惚れするほどではないと思う。
「戦ってるときの慧様がカッコよかったんですよ。」
「確かに戦っている慧はカッコいいよ。でも、レインはその慧と戦ってたんだよね?」
「えぇ。そうですよ。」
「じゃあ、なおさらわからない。戦ってる相手に恋愛感情を抱くことなんてないと思う。」
「えぇ。そうですね。でも、なんだか、ドキッときたんです。慧様が笑ったときから。」
「笑った?あの慧が?戦闘中に?」
「えぇ。あれは、私が詠唱魔法を発動したときです。彼は凶悪な笑みを浮かべていました。まるで悪魔のような笑みでした。
そして、そこから慧様の動きが変わりました。
動きの一つ一つが鋭く、強く、速くなり、私の魔法をいとも容易く破壊しました。」
「・・・それのどこに惚れる要素があったの?」
「うーん。自身を持って言えませんが、彼の普段とのギャップですかね。いつもは温厚なのに、急に悪魔のように恐ろしい表情になる。
そこに恐怖するとともに、私は彼が気になって仕方なくなりました。」
「そっか。なんか、わかるよ、ソレ。」
それから少しの間、女の子同士の恋バナを続けていると、
「なに話してんだ?」
風呂から出た慧が、聞いてきた。
私は笑顔で、こう答えた。
「ヒミツ。」




