第59話「祝勝会」
───オレ、神谷慧は、ただ今、とてつもなく男として嬉しいが、とてつもなくヤバい状態にあった。
なぜなら、お花を摘みに行きたいのだが、ここから1歩も動けないからだ。
そして、その理由は
「くんか、くんか。慧君の匂いがします。ん〜、愛は今、とっても幸せです。」
「ちょっと!?愛ちゃん!?さっきからなにやってんの!?って、レインまで!?」
「いいじゃないですか、桃香さん。愛さんもやっていることですし、こういう楽しい席で殿方に抱きつくぐらい許してください。」
「じゃ、私もやる。」
「え、魅月も?じゃあ、私もやろうかな。」
と、こんな感じで女性陣が離してくれないからだ。
というか、なんでまたこんな風になったんだ?
オレはこれまでにあったことを思い出してみる。
──1時間前───
オレたちは擬似魔法戦争のメンバーで優勝の祝勝会をやると聞いて、ここ、学生島にある焼肉店にきた。
焼肉店は貸し切りになっており、学生の他に客はいなかった。
そして、騒いでいる店内の中で一年生はオレたちだけなので、とりあえず、隅の方に6人で座った。
まぁ、食べ終わるまでは楽しく普通に話しながら楽しんでいた。
が、ヤツらがきてからそんな状態は変わってしまった。
そのヤツらとは・・・
「よぉ、慧。そんなにカワイイ女の子たちをたくさん侍らせて楽しんでるみたいだな。ったく、このこのっ!」
「慧、悪い。今、師匠はとてつもなく酔っている。そして、とても上機嫌だったり、急に泣いたりととてつもなくめんどくさい。とりあえず、やり過ごせ。」
ビールの入ったジョッキを片手にちょっかいを出してくる教師、神谷陣と、珍しく微妙にすまなそうな顔をして変なことを頼みこんでくる高尾さんだった。
「なんだなんだァ。オレが酔ってるだって?ひでーな、響弥ァ。オレは酒は強い方だぜぇ?」
「いや、師匠、それ、何杯目だかわかってるんですか。」
「ん〜?とりあえず、たくさんだろ?」
いや、答えとしても返し方としても間違ってるから!
確実に酔ってんだろ、アンタ!?
「まぁ、いいじゃねぇかァ。まぁ、お前らも飲め、ホラッ、ホラッ。」
「師匠、学生に飲ませるのはちょっと・・・」
「なんだァ!?オレの酒が飲めねぇってのかァ!?」
「いや、そういうわけでは・・・」
つか、叔父さん、酒ぐせ悪ッ!?
いつものハイテンションに加えて、アレとか、高尾さんも大変なんだなぁ。
と、とても同情する。
たくさん騒いでいったあと、叔父さんは去っていった。
最後まで高尾を振り回していたし、今でも高尾さんに絡んでるっぽいけど、高尾さんがなんとか連れ去ってくれた。
──が、彼らはとてつもなくめんどくさい置き土産をくれていった。
それは、途中からだろうか。
たしか、途中から叔父さんのビールは高尾さんに奪われていたから、飲んでいないんだろうが、なぜか、愛が酒に酔っていたのだ。
そして、愛がオレに抱きついてきたり、オレの匂いを嗅いだりといろいろして、今に至る。
ヤバいな。トイレに行きたいし、トイレはすぐ近くにある。それなのに、トイレに行けないとか、かなり地獄だ。
そろそろヤバい気もするし、恥ずかしいけどみんなに言おう、そうしよう!
「なぁ、みんな、ちょっとお花を摘みに行きたいんだが・・・」
「そうですか。ゆっくりどうぞ。」
と、レインの言葉でみんながオレからどき始める。
そして、やっと解放されたオレはやっとトイレに行けた。
のだが・・・
「なんでついてきてんだ、魅月?」
「私もトイレに行きたかったから。」
「いや、こっちは男子トイレだよ!?女子トイレはあっちだから!」
「ん。知ってるよ?」
「じゃあ、なんでこっちにきてるんですかねぇ?」
「別に、将来、夫となる人物と同じところでしても変わらないでしょ。どうせ、お互いの身体も全て見ることになるんだし。」
「いや、夫になるかどうかはわかんねぇだろ!?つか、最後のどういう意味だよ!?」
「女の子の発言にいちいち意味があると思ってるの?」
と、首を傾げながら言う。
まさか、コイツも酔ってんのか?
・・・いや、まさかな。コイツ、いつもこんな感じだし。
ただ、さっきからニヤニヤしながら、顔が少し赤いだけだし。
って、ん?
「お前、酔ってんじゃねぇかァァ!」
その日、オレの叫びが店内に響いた。
そのことがあってから、オレはいろいろと叔父さんたちにいじられたり、女性陣に追求されたが、それはまた次の機会に話そう。




