第56話「再臨」
「ぐはッ!」
愛が血を吐いて倒れた。
が、フィールドから消えないのでまだ戦闘不能状態には達していないようだ。
が、かと言って、十分に戦える状態でもないことは明らかである。
そんな状態の愛に榊戒人が近づいてくる。
そして、
「まったく、まったくぅ。よくもこのワタクシを手こずらせてくれましたねぇ。・・・ですが、今、完全に戦闘不能状態にしてあげましょう。」
そう言って、榊戒人は右腕を愛に向ける。
その動作に愛はこの状況での生存を諦めて、眼をつぶった。
そして、不可視の力属性の魔法が放たれる。
そして、それは、一直線に愛に向かっていく。
・・・が、それが届くことはなかった。
もうダメだと感じた愛はつぶっていた眼を開く。
そこには、愛の兄、高尾響弥が立っていた。
が、服はボロボロ、そして、血まみれという斬新なファッションでだ。
「お兄ちゃん、どうしてここにいるの?」
眼の前に立つ兄に愛が聞く。
「そんなことよく考えれば、わかるはずだ。敵陣を制圧しにきたに決まってる。」
愛の問いに対し、響弥はそんな短い返事を返した。
そして、両手に握られていた二丁の拳銃を、前方に立つ榊戒人に向ける。
「まったく、まったくぅ。あなたがここに来たということは、相良君は負けてしまったようですねぇ。はぁ、まったく、まったくぅ。」
その高尾の動作に、榊戒人はおどけた感じでそう言った。
そして、言われた高尾はと言うと、
「ったく、なんだこのめんどくさそうなヤツは。」
と、ため息を交えながら、こんなふうに呆れた口調で言った。
その動作に榊戒人の眉が少しピクッ、と動く。
「まったく、まったくぅ。このワタクシがめんどくさいですって?ひどい話ですねぇ!」
そして、榊戒人は語尾を強くしながら言う。
「ああ。まったくだ。なんでオレはこんなにもめんどくさいヤツを相手にしなきゃならないんだ。オレはこの勝負に早く勝って帰りたいってのに。」
それに対し、高尾は榊戒人の言葉をなんとも思っていないように(いや、実際、何も思っていないのだが、)言った。
その言葉に榊戒人の眉がピクピクピクッ、と気持ち悪い風に異常に動く。
「まったく、まったくぅ!仕方ありませんね!じゃ、早くやりましょうか!」
そして、榊戒人はキレイな言葉遣いながらも、怒気を滲ませながらこう言った。
そして、2人の戦いが始まった。
先に仕掛けたのは、珍しく高尾の方からだった。
高尾は、右手に手にした拳銃で榊戒人を撃つ。
が、見えていた榊戒人は幻属性の魔法で作られた幻で、高尾の弾が体を貫いた瞬間、消えてしまった。
そして、幻属性の魔法でみえなくなっている榊戒人は高尾に向けて、右腕を向けた。
そして、先ほどよりも強力な、怒りが滲んだような力属性の魔法が放たれる。
だが、それが、高尾に届くことはなかった。
高尾は榊戒人が放った力属性の魔法が自らに届く前に、その魔法の真正面から音属性の下級魔法、衝撃を放って威力を相殺させたのだ。
「な!?バカな!?なぜ? ワタクシの魔法がこんな簡単に破られるわけがない。なぜ、なぜなんだ?」
その光景に榊戒人は漠然とした表情でそう言った。
そして、目の前のことが信じられないというものと、高尾に対する恐怖がこもったもの、2つの視線を高尾響弥に向けた。




