第54話「少女たちの戦い」
──時は遡り、神谷慧が滝川紫龍と明紅の本陣から離れていった直後のこと。
「慧も無事に敵陣から離れたし、私たちも始めよう。」
「そうですね。そうしましょう。」
魅月の声に、レインが反応する。
そして、全員が戦闘態勢になる。
「じゃ、慧が帰ってくる前にみんなでやっつけちゃおう!」
そう言って、桃香が剣を構えて突っ込んでいく。
が、もちろん、相手も応戦する。
そして、突っ込んでくる桃香に魔法の集中砲火を浴びせる。
もちろん、桃香も肉体強化魔法を使っているので、多少は躱しているが、躱せないものもある。
が、レインが魔法で桃香が避けられないものを次々に撃ち落としていく。
が、敵も数が多い。
レイン1人で何人もの魔法を全て撃ち落とすのは不可能だ。
少しづつ桃香はかすり傷を作っていく。
が、致命傷を負っているわけでもなく、ギリギリで最小限のダメージに抑えている。
そして、やっと敵に斬り掛かる。
だが、敵も決勝まで上がってくる高校の本陣の守備を担当している者たちだ。
桃香の一太刀は剣を持った男にやすやすと防がれる。
その後、桃香の横から桃香に対して、剣が振り下ろされる。
が、剣が振り下ろされることはなかった。
魅月の狙撃が敵を貫き、剣を振り下ろす敵を戦闘不能に陥れたのだ。
が、桃香は吹き飛ばされた。
それは、力属性の魔法と思われる横からの見えない力によってだ。
「まったく、まったくぅ。敵はたった5人なんですよ? しっかりしてくださいよぉ。」
それは、桃香を吹き飛ばしたと思われる人物だった。
ボサボサの長く黒い髪と眼鏡、そして、不健康そうな顔色が特徴的な男だ。
「じゃ、あんたもしっかりね。」
そう言ったのは、男の死角から雷を帯びた鎖を伸ばす姫依だ。
そして、その鎖は男の方に高速で伸びていく。
そして、男の体を貫いた。
でも、その後、なぜか姫依は吹き飛ばされた。
そして、姫依が見上げると、姫依自身が放った鎖が貫いたはずの男が立っていた。
「まったく、まったくぅ。ワタクシだって、しっかりしてますよぅ。じゃなきゃ、滝川くんにここの指揮を任されてませんよ?・・・って、おっと!・・・喋ってる最中に撃つとはひどいじゃないですか。そこの銀髪のお嬢さん。」
と言って、魅月の方を向く。
そして、男が右腕を魅月に向けると、魅月は吹き飛ばされた。
「なんなんですか?アナタは?」
駆けつけてきたレインが聞く。
「あぁ、申し遅れました。ワタクシ、榊戒人と申します。以後、お見知り置きを。」
大仰な仕草で男が名乗る。
そして、
「では、失礼。」
そう言って、レインに右腕を向ける。
そして、魅月と同じようにレインも吹き飛ばされた。
「まったく、皆さん、ひどいザマですね。慧君が帰って来る前に敵陣制圧とか、このままじゃ、無理な話ですよ。」
器用に自分の身長ほどもある槍を振り回し、敵を貫いていく愛が言う。
そして、榊戒人の方へと走っていく。
が、途中で体の向きを変え、敵の見えないところに槍を振り下ろす。
が、そこで火花が散る。
そして、次の瞬間、榊戒人の姿が現れる。
「まったく、まったくぅ。どういうことでしょうか? ワタクシ、自分の魔法には自信があったのですがねぇ。」
愛の槍を受け止めながら、榊戒人は笑いながら聞く。
それに対して、
「愛の右眼は魔眼なんです。それも、慧君と同じ、『魔見眼』なんです。だから、愛には幻属性の魔法は大した効果を持ちません。」
笑いながら、右眼を紅く輝かせる愛はそう言って榊戒人を吹き飛ばした。




