第49話「天才」
オレは滝川紫龍に斬り掛かる。
それを滝川紫龍は、手に持った禍々しい刀で受け止めようとする。
が、オレは剣が受け止められる前に自ら斬撃を止める。
そして、素早く剣を自らの体の横に持ってくる。
そして、滝川紫龍の体を避けるようにして、滝川紫龍の横を駆け抜け、滝川紫龍をすれ違いざま斬りつける。
だが、もちろん、それくらいは対応できる範囲内なのか、土属性の魔法で防壁を作り、自分の身を守ろうとする。
が、そんなことはすでに魔眼を発動しているオレには分かっている。
なので、防壁が展開された瞬間、体の向きを防壁の方に直し、防壁の向こう側にいる滝川紫龍に向けて鋼鉄砲を放つ。
それは、防壁を砕き、滝川紫龍に向かって直進する。
そして、滝川紫龍に到達した。
・・・と、思ったところで鋼鉄砲は斬られる。
が、それももちろん、折り込み済みだ。
刀を振り抜いたはずの滝川紫龍に突っ込む。
・・・はずだったが、オレはそれを止めた。
なぜなら、あまりにも異質な光景を目にしたからだ。
それは、最初と同じように刀を構えてこちらを見据える滝川紫龍の姿だった。
それは一見すれば大しておかしくもない光景だったはずだろう。
が、オレには異質な光景に見える。
いや、異質な光景にしか見えない。
だって、当たり前だろう?
オレは鋼鉄の塊をアイツに向けて放ったんだぞ?
オレは、普通の人間なら、刀を振り切ってようやく斬ることができるレベルの硬さにしたはず。
が、ヤツは振り切るどころか刀を振ってすらいない。
そんなことはありえないはずだ。
たしかにオレは滝川紫龍から少し目を離した瞬間もなくはない。
ヤツが防壁を展開してから魔法を使ったのかもしれない。
が、その可能性は低いとオレは思っている。
なぜなら、オレの放った鋼鉄砲は明らかに斬られていた。
そして、ヤツの魔力を見る限り、土属性の魔法でそんな傷がつけられるような魔法を使ったとも思えない。
そもそも、土属性の魔法はそんなに鋭い攻撃ができるわけじゃない。
だから、あんな傷をあの少しの間でヤツがつけるには刀しかない。
じゃあ、やっぱり、なんでアイツはオレの鋼鉄砲が斬れたんだ?
「やはり驚いているね。」
その声を発したのは、ただならぬ滝川紫龍だった。
そして、滝川紫龍はオレの求めている答えまで言ってくれる。
「この刀はね、妖刀なんだよ。」
「ふぅん。」
なんとなく、予想はついていたので、適当に答える。
「これは、妖刀ムラマサシリーズの5番、『血塗らし』っていうんだ。」
「なっ!?」
その言葉にオレは驚く。
が、それは当たり前の反応だった。
なぜなら、妖刀ムラマサシリーズは恐ろしい力を秘めているが、『呪いの刀』と言われるほどの大きな代償がある。
そんなものを高校生が使えるなんて、ありえない。
それに、もう一つオレが驚いた理由がある。
それは、その妖刀ムラマサシリーズは世界各地に散らばっており、今、誰もシリーズ全ての刀がどこにあるかわからないという点だ。
さすがに、戦闘中のオレでも口が塞がらない。
「やはり君でもそんな顔をするのか。」
「あぁ、オレは天才でも、怪物でもねぇからな。」
「そうかな?君はとてつもなく才能があると思うんだけどね。」
「嫌味か!この天才が!」
そう吐き捨てて、オレはまた剣を構えた。




